はじめに
2024年度税制改正法案が、3月28日に国会で可決・成立しました。
この中には構造的な賃上げの実現が掲げられており、賃上げ促進税制が強化されるとともに、所得税・個人住民税の定額減税が実施されることとなります。
本稿では、所得税・個人住民税の定額減税の概要をご案内いたします。
1.定額減税の内容
2024年分の所得税・2024年度分の個人住民税について、納税者及び同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に限ります)1人につき、所得税額から3万円・個人住民税所得割額から1万円の定額減税額が控除されます。
2.定額減税の適用外となる基準
所得税は2024年分、個人住民税は2023年分の合計所得金額が1,805万円を超える場合は、定額減税の適用はありません。
3.定額減税の実務のポイント
減税の実感が早期に得られるように、2024年6月支給の給与・年金の手取りを増加させる、あるいは事業所得者の7月の予定納税を減額し資金増とさせる等、所得の内容に応じて減税の実施方法が異なります。
給与所得者の所得税については、2024年6月1日以後最初に支給する給与等(以下、賞与を含む)の源泉徴収税額から特別控除の額を控除します。控除しきれない部分の金額は、以後2024年中に支払われる給与等の源泉徴収税額から順次控除します。
従って、源泉徴収義務者は早期にシステムの改修等の対応が必要となります。
また、給与所得者の個人住民税については、2024年6月の給与支給時には特別徴収は行わず、特別控除額を控除した後の個人住民税額を残りの11か月で毎月均等に特別徴収します。
4.定額減税の実務のポイント
(1)2023年度分の個人住民税非課税世帯には、1世帯当たり7万円が給付され、2023年夏以降に給付された3万円とあわせて10万円の給付となります。
(2)2023年度分の個人住民税均等割のみの課税世帯には、1世帯当たり10万円が給付されます。
(3)上記(1)(2)にあてはまる世帯への給付加算として、18歳以下の被扶養者1人当たり5万円が給付されます。
(4)2024年度分の個人住民税において、新たに個人住民税非課税となる世帯と個人住民税均等割のみとなる課税世帯には、1世帯当たり10万円が給付されます。
(5)定額減税しきれないと見込まれる場合は、個人住民税を課税する市区町村が定額減税しきれない差額を給付(調整給付)します。
おわりに
定額減税は、デフレ脱却に向け、賃金上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を軽減するため、2024年限りの一時的な減税措置となります。
給与所得者については2024年の賃上げ時期と重なって、より可処分所得(手取り額)のアップを実感し、デフレ脱却のメリットを感じてもらうのが目的となります。
負担する税額が減税金額に届かない所得層や、所得税も住民税も支払っていない所得層へは給付金を支給することで、合計所得金額1,805万円以下のすべての人がメリットを受けられる税制改正となります。
(担当:和田)