会計・税務の知識

2024年03月14日 発行「金融経済教育推進機構」が設立、稼働へ

はじめに

 

 

2024年の株式市場は、年初から大きく上昇してスタートしました。

新NISAの資金が(海外株含め)流入したことも一因と言われていますが、長年果たせなかった「貯蓄から投資へ」の期待感も高まっています。

そして、この流れをサポートするのが、2024年4月の設立、8月の本格稼働が予定されている「金融経済教育推進機構」です。

本稿では同機構の概要をご紹介いたします。

 

 

 

1.設立の目的と経緯

 

 

私達が経済的に自立した豊かな生活を送るためには安定的な資産形成に取り組む必要があります。

その際、自らのニーズに合う金融商品・サービスを適切に選択できることが求められます。

金融経済教育は、このための知識や判断力、すなわち“金融リテラシー”を向上させる上で必要不可欠です。

そこで、2022年11月に策定された「資産所得倍増プラン」も踏まえ、翌2023年11月に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が成立し、金融経済教育を官民一体となって戦略的に実施する中立的な組織として「金融経済教育推進機構(以下、機構)」を設立することとされました。

機構の設立にあたっては、“屋上屋を架す”ことにならないよう、現行の金融経済教育を担っている金融広報中央委員会の機能を移管・承継すると共に、全国銀行協会(以下、全銀協)や日本証券業協会(以下、日証協)の重複機能を集約する予定です。

 

 

 

2.機構の業務

 

(1)学校・企業等への講師派遣

認定アドバイザー(後記3.ご参照)を活用しながら、より多くの国民に金融経済教育を提供できるように、講師派遣を広範に実施していきます。

学校においては、新学習指導要領の中で金融経済教育の記載が拡充されていることを踏まえ、学生のみならず教員への情報発信や教材提供も充実させます。

企業においては、従業員の資産形成の取組強化がエンゲージメントの向上に効果的との観点から、企業向けの金融経済教育にも積極的に取り組みます。

 

(2)個人からの個別相談

認定アドバイザー(後記3.ご参照)を活用しながら、個人が抱えるさまざまな悩みについて個別に相談を受け付ける体制を整備します。

 

(3)教材・コンテンツの作成

全銀協・日証協等で作成してきた分野別・対象別の多種・多様な教材を整理・集約すると共に、資産形成だけでなく、家計管理や生活設計、金融トラブル防止策等の幅広い分野を扱う教材を初心者でも分かりやすい形で作成していきます。

 

(4)調査研究

企業や個人へのアンケート調査等を通じて、金融経済教育の取り組みや国民の金融リテラシーの状況を把握します。また、機構がKPI(重要目標達成指標)を設定し、その達成状況を検証していきます。

 

 

 

3.認定アドバイザー

 

 

私達が安定的な資産形成を実現するためには、金融商品・サービスに関する良質なアドバイスを気軽に受けられる環境を整備することが重要です。

このため、機構が顧客の立場に立ったアドバイザーを認定した上で、リスト化・公表することにしました。

認定アドバイザーに対しては、機構が実施する学校・企業等への講師派遣や個人からの個別相談業務等への参加を促していきます。

なお、日本では、専門家からのアドバイスに対して報酬を支払う慣習が根付いていませんが、認定アドバイザーによるアドバイスサービスが広く認知され、その結果として、日本のアドバイスビジネスの市場が拡大していくことも期待されます。

 

 

 

おわりに

 

金融資産運用において、これまでのデフレの時代にあっては、現預金に置いておくのが結果的には正解でした。

しかし、インフレの世界に転換すると資産価値が目減りしてしまうため、リスクをとりつつも投資をして利回りを高める誘因が働きます。

この意味でも、金融リテラシー向上のために機構の果たす役割は大きく、今後の本格展開に期待したいと思います。

(担当:竹内)

 

 

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