はじめに
2019年8月22日号で「税務署の情報収集力(新分野の経済活動への対応)」として、「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への適格な対応」(2019年6月12日、国税庁)を説明しましたが、その後税務調査等にてどのように変化があったかを確認していきたいと思います。
1.シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは
近年、個人等が保有する活用可能な資産等をインターネット上のプラットフォームを介して提供する活動が増加しています。
具体的には、民泊、カーシェアリング、クラウドソーシング、配達代行業、アプリ作成・配信、有料メルマガ、ネット通販、アフィリエイトその他新たな経済活動を総称した経済活動のことをいいます。
2.インターネット取引を行っている個人に対する調査状況(令和3事務年度)
国税庁より公表されている「所得税及び消費税調査等の状況」にて、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する税務調査の状況が公開されています。
<シェアリングエコノミー等新分野に対する調査>
・実地調査…839件
・1件当たりの申告漏れ所得金額…1,382万円
・申告漏れ所得金額の総額…116億円
・1件当たりの追徴税額…266万円
・追徴税額の総額…22億円
<暗号資産(仮想通貨)等取引に対する調査>
・実地調査…444件
・1件当たりの申告漏れ所得金額…3,659万円
・申告漏れ所得金額の総額…162億円
・1件当たりの追徴税額…1,194万円
・追徴税額の総額…53億円
上記の通り、思った以上に個人の税務調査が実施され、高額な追徴税額となっていることが伺えます。
3.税務調査の推移
H29事務年度からR3事務年度までの期間の税務調査の件数等をまとめると次の通りとなります。
2019年12月から新型コロナウイルスの影響から税務調査の件数自体は減少しているようですが、追徴税額は増加傾向にあります。
4.確定申告の件数
下記図表は平成24年から令和3年分の確定申告書の提出をまとめたものです。
出典:国税庁 令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)より
確定申告書の提出人員は2,285万人で、平成24年以降ほぼ横ばい推移しています。
おわりに
個人で行う取引については、ついつい申告が漏れてしまうケースがあるかもしれません。
インターネットを利用したサービスで所得が生じる際には十分注意しましょう。
(担当:齋藤)