はじめに
日々の取引を処理する際の拠り所となる会計基準には、主に上場企業に適用される日本基準といわれる企業会計基準の他、米国会計基準や国際財務報告基準などがあり、新聞などでよく目にします。
今回は、我が国の大多数を占める中小企業に適用される会計基準(中小企業要領)について解説します。
1.中小企業の実態
① 資本市場で新株発行等による資金調達を行うことはほとんどなく、金融機関からの借入が中心となっている。
② 所有と経営が一致しており、通常、株式には譲渡制限が付されている。
利害関係者が限られており、計算書類等の開示先は、取引先金融機関や主要取引先等に限られている。
③ 税務申告が計算書類作成の目的の大部分を占めており、税法を意識した会計処理が行われている。
④ 経理にリソースを割くことが難しく、高度な会計処理に対応できる能力や経理体制の確保が難しい。
2.中小企業会計(中小企業要領)の特徴
① 想定対象企業
以下を除く株式会社が想定される
・金融商品取引法の規制の適用対象企業
・会社法上の会計監査人設置会社
② 国際会計基準との関係
安定的に継続利用可能なものとする観点から、国際会計基準の影響は受けない。
③ 税法との関係
中小企業の実務における会計慣行を十分に考慮し、会計と税制の調和を図られている。
3.主な取引にかかる基本的な会計処理
① 収益、費用
・収益は、原則として、商品の販売又はサービスの提供を行い、かつ、これに対する現金等を取得した時に計上する。
・費用は、原則として、費用の発生原因となる取引が発生した時又はサービスの提供を受けた時に計上する。
・収益とこれに関連する費用は、両者を対応させて期間損益を計算する。
・収益及び費用は、原則として、総額で計上する。
② 資産、負債
・資産は、原則として、取得価額で計上する。
・負債のうち、債務は、原則として、債務額で計上する。
③ 貸倒損失、貸倒引当金
・倒産手続き等により債権が法的に消滅したときは、その金額を貸倒損失として計上する。
・債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能な債権については、その回収不能額を貸倒損失として計上する。
・債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能のおそれのある債権については、その回収不能見込額を貸倒引当金として計上する。
④ 有価証券
・原則として、取得原価で計上する。
・売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。
・有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。
・時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
おわりに
以上のように、中小企業会計(中小企業要領)では、作成者の負担が最小限になるように、会計と税制との調和が図られており、多くの中小企業の実態にあった利用しやすいものになっています。
(担当:福井)