はじめに
法人が資産を買換えし、譲渡資産に譲渡益が生じた場合には、その譲渡益は益金に算入され法人税の課税の対象になりますが、租税政策的観点から一定の要件を満たすときは圧縮記帳を適用させ、課税を軽減させる措置が認められています。
1.概要
一定の要件を満たす資産を譲渡し、一定期間内に買換資産を取得した場合には、圧縮限度額の範囲内で一定の経理をしたときは、その経理した金額はその事業年度の損金の額に算入することができます。
①圧縮限度額
圧縮基礎取得価額×差益割合×80%
②経理方法
・帳簿価額を損金経理により減額する方法
・確定した決算において積立金として積み立てる方法
・決算確定日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法
③買換資産を取得すべき時期
原則として譲渡資産を譲渡した日を含む事業年度に買換え資産を取得する必要がありますが、特例として買換資産を先行して取得した場合、又は翌事業年度に取得した場合も認められます。
なお、先行して買換資産を取得した場合には、その取得をした日を含む事業年度終了の日の翌日から2月以内に一定の事項を記載した届出書を税務署長に提出する必要があります。
また、改正により令和6年4月1日からは譲渡の日(先行取得の場合は取得の日)を含む3月期間(事業年度を開始の日以後3月ごとに区分した各期間)の末日の翌日から2月以内に届出書を提出する必要があります。
2.長期保有土地、建物等の買換え
制度のひとつに長期保有土地からの土地供給を促す目的として①の譲渡資産から②の買換資産へ買換えた場合に適用が認められている規定を紹介します。
①譲渡資産
国内にある土地等、建物、構築物で取得した日から引き続き所有され、所有期間が10年超のもの。
所有期間は、取得の日の翌日から譲渡の日の属する年の1月1日までの所有期間をいいます。
②買換資産
国内にある土地、建物、構築物。
土地等は事務所、店舗、住宅などの敷地の用に供されるもの又は一定の駐車場の用に供されるもので、その面積が300㎡以上のものに限ります。
③圧縮率の改正
令和5年の改正にあたり、本社資産の買換えについて次のような見直しがありました。
おわりに
先行取得でない場合についても届出書を提出することになりますが失念しないよう注意が必要です。
(担当:佐藤敬)