はじめに
2022年12月16日、自由民主党及び公明党による令和5年度税制改正大綱が公表されました。
今回は防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、及び、改正が持ち越された論点の今後の動向についてご案内します。
1.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
防衛力の抜本的な強化の安定的な財源を確保する観点から、法人税、所得税及びたばこ税について、次のような措置を講ずるものとされました。
① 法人税
法人税額から500万円を控除した課税標準に対して、税率4~4.5%の新たな付加税が課される見込みです。現行の法人税率は原則23.2%(中小法人の軽減税率等を除く)のため、課税所得に対しておよそ1%程度の増税になると考えられます。
② 所得税
現行の所得税制度においては、東日本大震災からの復興に係る財源確保のため、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が徴収されています。
この復興特別所得税の税率を1%引き下げる代わりに、防衛力強化の財源として税率1%の新たな付加税が課される見込みです。家計への配慮のため、実質的な負担は変わりません。
また、復興特別所得税の徴収期間は2037年分の所得税までとされていましたが、この課税期間を延長することも記載されました。延長期間は、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされ、具体的な時期は明記されておりません。
③ たばこ税
たばこ税に関して、1本当たり3円相当が引上げられる見込みです。実施時期は、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮して、段階的に実施するものと記載されております。
以上の税制措置は、複数年かけて段階的に実施して、2027年度において1兆円強を確保することが記載されております。施行時期については、2024年以降の適切な時期と記載されており、具体的な時期については明記されておりません。
2.マンションの相続税評価の適正化
タワーマンションなどの高額で土地の持分が小さいマンションでは、市場での売買価格と比べて、固定資産税評価額や路線価に基づいて計算される相続税評価額が著しく低くなるケースが見られます。
このような乖離を無くすため、マンションの相続税評価については、市場価格との実態を踏まえた適正化を検討し、評価方法が見直される方針が記載されております。
3.外形標準課税のあり方
資本金等が1億円を超える法人については、2004年度から事業税における外形標準課税制度が導入されています。
これは、従来の所得に対する課税に代えて、法人の事業規模に応じて税を賦課することで、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、税収の安定化、経済活性化の促進等を目的としています。
一方で、減資や組織再編により資本金を減少させることで対象から外れることができるため、外形標準課税の対象法人数は減少傾向が継続しています。
対象法人数の減少や対象範囲の縮小は、制度の趣旨を損なうおそれがあるとして、外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人を対象に、制度的な見直しを検討することが記載されております。
おわりに
その他にも、次年度以降に向けての検討課題として以下のような項目が挙げられています。
・贈与税の非課税措置
・国際課税
・個人所得諸控除の見直し
・年金課税のあり方
・電気・ガス供給業に係る収入金額による外形標準課税
・小規模企業等に係る税制のあり方
・自動車関係諸税の見直し
・納税環境制度
・出産・子育て応援交付金
(担当:江森)