はじめに
2022年度(令和4年度)税制改正大綱において、納税環境整備が盛り込まれました。
その中で、「過少申告加算税等の加重措置の整備」、「財産債務調書制度等の見直し」、「電子取引の保存に関する宥恕措置の整備」について概説します。
1.過少申告加算税等の加重措置の整備
適正な記帳や帳簿の保存が行われていない納税者について、記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みが設けられます。
(1)内容
納税者が一定の帳簿に記載すべき事項に関し所得税、法人税又は消費税に係る修正申告書もしくは期限後申告書の提出等があった時前に、国税庁等の職員から帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、帳簿に記載すべき事項に関し生じた申告漏れ等に課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、通常課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額に申告漏れ等に係る所得税、法人税又は消費税の10%(②の場合5%)に相当する金額を加算した金額とします。
①職員に帳簿の提示・提出をしなかった場合又は提示・提出がされた帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額等の記載が著しく不十分で場合ある(売上金額等のうち1/2以上が記載されていない場合)
②職員に提示・提出がされた帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額等の記載が不十分である場合(売上金額等のうち1/3以上が記載されていない場合)
(2)適用時期
2024年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用
2.財産債務調書制度等の見直し
(1)提出義務者の見直し
現行の財産債務調書の提出義務者(確定申告書を提出しなければならない方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産を有する方)のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者を提出義務者とします。
(2)提出期限の見直し
その年の翌年6月30日(現行:その年の翌年3月15日)
(3)記載事項の見直し
「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げます。
(4)適用時期
2023年分以後の財産債務調書について適用
3.電子取引の保存に関する宥恕措置の整備
(1)内容
電子取引の電磁的記録の保存制度について、納税地等の所轄税務署長が電子取引の保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、やむを得ない事情があると認め、かつ、保存義務者が質問検査権に基づく電磁的記録の出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講じます。
中小企業において、制度に対する認知が進んでいない現状と大企業においても準備が進んでいない状況から、2023年末までの宥恕措置として、やむを得ない事情がある場合は、引き続き印刷した書面による保存が可能となります。
具体的な対応としては、宥恕措置期間中において、電子取引の請求書や領収書などの電子データを従前と同様に、書面に出力して保存しておき、税務調査があった場合には、「社内のワークフロー整備が間に合わなかった」などその事情を回答します。
(2)適用期間
2022年1月1日から2023年12月31日までの間に行う電子取引の取引情報について適用
おわりに
「知らなかった」では済まされない厳しい取扱いも整備されてきたように思います。法律に則った適切な対応ができるよう準備が大切です。
(担当:齋藤)