会計・税務の知識

2021年10月28日 発行基準期間がない法人の納税義務の免除の特例

はじめに

 

消費税は、中小事業者の納税事務負担などに配慮して、その納税義務が免除されることがあります。

本稿では消費税における納税義務の免除の特例について紹介します。

 

 

1.納税義務の免除

 

その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます。

 

この納税義務が免除される事業者は、課税資産の譲渡等を行っても、その課税期間は消費税が課税されないことになり、課税仕入れ及び課税貨物に係る消費税額の控除もできません(課税売上げに係る消費税額よりも課税仕入れ等に係る消費税額が多い場合でも、還付を受けることはできません。)。

 

 なお、基準期間における課税売上高は、原則として、個人事業者の場合は前々年の課税売上高のことをいい、法人の場合は前々事業年度の課税売上高のことをいいます。基準期間が1年でない法人の場合は、1年相当に換算した金額により判定することとされており、具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。

 

 

 

2.新設法人の納税義務の免除の特例

 

新たに設立された法人については、設立1期目及び2期目の基準期間はありませんので、設立1期目及び2期目は原則として納税義務が免除されます。

なお、設立3期目以後の課税期間における納税義務の有無の判定については、原則どおり、基準期間における課税売上高で行うこととなります。

基準期間がない法人(社会福祉法人を除きます。)のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人(以下「新設法人」といいます。)は、その課税期間の納税義務は免除されません。

 

 

 

3. 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

 

新設法人のうち、その事業年度開始の日において特定要件に該当し、さらにその判定の基礎となった他の者や特殊な関係にある法人の課税売上高が5億円を超える法人(以下「特定新設法人」といいます。)については、その課税期間の納税義務は免除されません。

 

 

 

4新設法人及び特定新規設立法人に該当することとなった場合の届出

 

基準期間のない事業年度開始の日において特定新設法人に該当することとなった場合には、「消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することとされています。

新設法人の場合には、法人設立届出書に消費税の新設法人に該当する旨及び所定の記載事項を記載して提出することで、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」の提出があったものとして取り扱われます。

 

 

 

5.基準期間がない課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

 

新設法人及び特定新設法人が、基準期間がない各課税期間中に調整対象固定資産の課税仕入れや調整対象固定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取りを行う場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から原則として3年間は免税事業者となることはできません。また、簡易課税制度を選択して申告することもできません。

 

 

 

おわりに

 

紹介したように消費税の仕組みを用いて利益を得ることを「益税」といいます。これにより国が徴収しきれていない税金は数千億近いとの試算もあることから、インボイス制度が提唱されるようになりました。

特定新設法人の「特定要件」については、国税庁HPに詳しい記載がありますのでご参照ください。  

国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm 

          (担当:岩崎)

 

            

 

 

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