会計・税務の知識

2021年06月17日 発行新型コロナウイルス感染症に関する見舞金の取り扱い

はじめに

 

新型コロナウイルス感染症の影響により雇用主が従業員に対して見舞金を支払った場合一定の条件を満たせば所得税法上、非課税所得に該当します。今回は見舞金の所得税の取り扱いについて説明します。

 

 

1.課税所得と非課税所得

 

課税所得とは利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類に分類され所得税が課税されます。

 

一般的に従業員に経済的利益を支給した場合は給与所得に該当し、課税所得となり、雇用主は源泉徴収をしなければならず、従業員も額面通りには受け取れません。これに対し非課税所得とは、上記10種類のどれにも属さない所得をいいます。

 

 

2. 見舞金が非課税所得となる条件

 

次のすべての要件に該当するものとしています。

 

【条件①】

 その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること

 ⅰ感染した従業員または従業員の親族に支払われるもの

 ・従業員又はこれらの親族が新型コロナウイルス感染症に感染するなどしてその所有する資産を

  廃棄せざるを得なかった場合に支払を受けるもの

 ⅱ緊急事態宣言の下において、事業の継続を求められる事業者の従業員等で次のいずれにも

  該当する者が支払を受けるもの

 ・多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症の感染リスクの高い

  業務に従事している者

 ・緊急事態宣言前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者に支払われるもの

 

【条件②】

 その見舞金の支給額が「社会通念上相当」であること

 ⅰ感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっているかどうか。

 ⅱその事業者の慶弔規程等において明記されているかどうか。

 ⅲ慶弔規程等や過去の取扱いと比較して相当と認められるかどうか。

 ・支給額が著しく高額であったり明確な理由なく従業員間で支給金額の差があったりするなどした場合

 「社会通念上相当」なものと見なされなくなることがあります。

 

【条件③】

 その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

 

 

3.課税される見舞金

 

『条件③その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと』に該当しない場合には給与所得となり所得税が課税されます。

 ・本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの

 ・感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの

 ・感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者にのみ支給するもの

 ・支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの

 

 

4. 社会保険の取り扱いについて

 

見舞金は労働の対価としての報酬ではありませんが、会社から従業員に対して支給する、手当という側面もあります。社会保険については通達(「新型コロナウイルス感染症の影響に関連して支給される見舞金等の取扱いについて」)が出され、所得税に準じた取扱いをすることが示されました。したがって、上記の要件に該当する場合は社会保険の報酬や賞与には算入しないことになります。

 

 

おわりに

 

今回の見舞金は、緊急事態宣言がされた時から解除されるまでの間に業務に従事せざるを得なかったことに基因して支払を受けるものに限ります。

また、非課税要件に該当しても緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給の決定がされたものについては、「見舞金」とはならない場合がありますので、ご留意ください。

                                                                                                                                                               (担当:吉原)

            

 

PAGETOP

お問い合わせ