はじめに
2021年度税制改正大綱の中において、「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度」
及び中小企業における「所得拡大促進税制」が見直されることとなりました。
今回はその改正の内容について記載します。
1.給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度の見直し
(1) 現行と改正案の要件の比較
現 行 |
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① |
適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前事業年度の継続雇用者比較給与等支給額×103% |
② |
雇用者給与等支給額※1>比較雇用者給与等支給額※2 |
③ |
適用年度の国内設備投資額≧適用年度の減価償却費総額×95% |
改正案 |
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① |
適用年度の新規雇用者給与等支給額※3≧前事業年度の新規雇用者比較給与等支給額×102% |
② |
変更なし |
③ |
削除 |
※1 損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
※2 前期の雇用者給与等支給額
※3 国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者
及び海外から異動した者を除く)に対して、その雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額
(2) 現行と改正案の税額控除額の比較
現 行 |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15%(注1) (注1)適用年度の教育訓練費の額≧比較教育訓練費※1×120%の場合は20% |
改正案 |
控除対象新規雇用者給与等支給額※2×15%(注1) (注1)適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×120%の場合は20% |
※1 適用年度より前2年以内に開始した各事業年度に損金算入される教育訓練費の平均額
※2 国内の事業所において新たに雇用した者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を
除く)に対して、その雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額
(3) 適用年度
2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象となります。
ただし、設立事業年度は対象外とされています。
2.中小企業における所得拡大促進税制の見直し
(1)適用要件の見直し
改正案では、増加要件の判定を「継続雇用者給与等支給額」ではなく、「雇用者給与等支給額」を基準に
判定することとされています。前期比1.5%以上の増加が必要な点は現行から変更はありません。
(2)控除率上乗せ要件の見直し
現行では継続雇用者給与等支給額が前期比で2.5%以上増加し、かつ一定の要件を満たす場合には
税額控除率が通常の15%から25%に10%上乗せされます。
改正案では雇用者給与等支給額が前期比で2.5%以上増加し、かつ一定の要件を満たす場合に
税額控除率が25%に上乗せされます。
(3) 適用年度
2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する事業年度が対象となります。
3.「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」の見直し
改正案では給与等の支給額から控除する「他の者から支払を受ける金額」について、その範囲を明確化する
とともに、要件の判定をする際には雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととされます。
おわりに
適用できる企業の範囲は広がることが見込まれますので、適用漏れがないように注意しましょう。
(担当:長澤)