はじめに
2017年度において、所得税確定申告書の提出人数は2,198万人です。
その内訳は、申告納税者が3割、還付申告が6割、申告納税額がない者が1割という状況です。
今回は、所得税の直近5年間の税務調査実績について、紹介いたします。
1.個人全体の調査件数と追徴税額
以下の表は、所得税及び消費税の調査件数と非違件数の実績を表しております。年間の調査件数は
2017年度で62万件を超えますが、年々減少傾向にあります。
調査の傾向として、「特別・一般」及び「着眼」は増加傾向にあり、
「簡易な接触」は減少傾向にあります。
非違件数の割合は、「特別・一般」で8割、「着眼」で7割、「簡易な接触」で6割になります。
【調査件数と非違件数の状況】
(件数:千件)
(出典:国税庁HP)
(※1)「特別・一般」とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うものであり、
特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人等を対象に、
相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものである。
(※2)着眼調査とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に
実地に臨場して短期間で行う調査である。
(※3)簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、
電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものである。
また、以下の表は、申告漏れ所得金額と追徴税額の実績を表しております。
申告漏れ所得金額は9,000億円程で、「特別・一般」が5割を占めます。
追徴税額は1,100億円程で、年々増加傾向にあります。
【申告漏れ所得金額と追徴税額の状況】
(金額:億円)
(出典:国税庁HP)
2. 海外取引を行う富裕層に対する調査
以下の表は、海外取引を行う富裕層に対する調査実績を表しております。
CRS制度や租税条約等に基づく情報交換制度の活用により、
2017年度の調査件数は約300件増加の862件で、申告漏れ所得金額は前年比約2倍に269億円、
追徴税額は71億円と増加しております。
【海外取引を行う富裕層に対する調査状況】
(件数:件、金額:億円)
(出典:国税庁HP)
3.申告漏れ所得金額が多い業種に対する調査
以下の表は、1件当たり申告漏れ所得金額が多い事業所得を有する個人に対する調査実績を表しております。
キャバクラ(キャバレー)や風俗業は毎年上位に位置しており、1,500万円超の申告漏れ課税所得が発覚します。
また、申告漏れの割合は8~9割と高い水準となっております。
また、新しい傾向として、2017年度に不動産代理仲介業とシステムエンジニア業が
上位に位置しております。
【申告漏れ所得金額が多い業種に対する調査状況】
(出典:国税庁HP)
終わりに
今回は所得税の税務調査実績を紹介しましたが、次回は相続税の紹介をいたします。(担当:高瀬)