はじめに
日本の公営競技の中で一番の人気を誇る競馬(中央競馬)。
実は、日本の競馬市場は国内にとどまらず、世界的にも最大級の規模だそうです。
今回は、馬券の払戻金に係る課税関係について、解説していきます。
1.所得区分と計算方法
馬券の払戻金の所得区分は、原則として一時所得に分類されますが、場合によっては「雑所得」として扱われることもあります。
■一時所得とは?
一時所得とは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の偶発的な所得」を指します。(出典:国税庁)
通常、趣味として馬券を購入する一般的な競馬ファンが得た払戻金は、この一時所得に該当します。
〈所得の計算方法〉
総収入金額-収入を得るために支出した金額(注) -特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
(注)当たり馬券の購入費用
■雑所得とは?
雑所得とは、「他のいずれの所得区分にも該当しない所得」です。(出典:国税庁)
では、どのようなケースで「雑所得」に該当するのかといいますと、以下のような高度にシステマチックな馬券購入をしている場合です。
・自作または市販のソフトウェアで馬券を自動購入
・独自のロジックや条件設定を用い、年間を通してほぼ全レースに参加
・継続的に利益を上げ、回収率100%超を意図的に目指していることが客観的に明らか
このように、「継続的な収益獲得」が明確な場合には、「雑所得」として扱われる可能性があります。
〈所得の計算方法〉
総収入金額-必要経費(注)=雑所得の金額
(注)当たり馬券の購入費用だけでなく外れ馬券の購入費用も必要経費に算入可能
上記のとおり、一時所得と雑所得で決定的な違いは「外れ馬券の購入費用が経費に含められるかどうか」です。
これは、納税額に大きな影響を与える重要なポイントです。
2.最高裁で認められた「雑所得」としての事例(平成27年3月10日)
雑所得としての認定は非常にハードルが高いですが、過去には最高裁判所が雑所得と認めた事例もあります。
●判示事項
競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例
●裁判要旨
馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして,当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係の下では,払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる。
(最三小判平27・3・10刑集69巻2号434頁)
この判例は、「ビジネス的な馬券購入スタイル」が所得区分に大きく影響することを示しています。
おわりに
以上、今回は馬券の払戻金に係る課税関係について、解説しました。
「馬券の払戻金=一時所得」と思われがちですが、条件次第では雑所得になる可能性があることには驚きですね。
ただし、ほとんどのケースでは一時所得に該当しますので、馬券購入時には、「外れ馬券は基本的には経費にできない」という点にご留意ください。
(参考国税庁HP:競馬の馬券の払戻金に係る課税について|国税庁)
(担当:市川)