【税理士監修】相続した不動産の評価額はいくら?調べ方と評価額を軽減する方法を解説
更新日:2024.12.9
不動産の評価額は遺産分割協議や相続税申告の際に必要となります。相続によって取得した不動産がいくらぐらいになるのか気になっている方や、相続税額を算出するために知る必要があるという方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、相続した不動産の評価方法や不動産評価額の調べ方などを紹介します。また、不動産評価額を算出する際のポイントや相続税に適用できるお得な控除についても解説するため、相続により不動産を取得した方に必見の内容です。ぜひ、参考にしてみてください。
目次
相続した不動産の評価方法は?
不動産の価額を評価する方法は大きく分けて4種類です。不動産は相続財産の中でも大きな金額になるケースが多く、遺産分割協議において重要な役割を持ちます。評価方法によって金額にも差がでるため、どのような評価方法があるのか、自身のケースに適しているかを確認しておきましょう。
相続税路線価
相続税や贈与税を算出する際は一般的に相続税路線価を使用します。相続税路線価は毎年7月に国税庁から公表される宅地の価格です。毎年1月1日が基準日となっており、地価公示価格の8割程度の金額になるといわれています。
相続税路線価は、国税庁のホームページから確認可能です。また、インターネットを使用しない場合は国税局や国税事務所、税務署でも確認できます。なお、路線価が設定されていない地域においては、倍率方式を使用して評価額を算出します。
調査機関 | 国税庁 |
基準日 | 毎年1月1日 |
発表時期 | 毎年7月上旬 |
公示価格に対する評価額の割合 | 8割程度 |
使用用途 | 相続税や贈与税の計算 |
実勢価格
実勢価格は、不動産市場で実際に不動産売買をする際の値段のことです。需要と供給に応じて決まるため、その時々で変化します。遺産分割協議が進まなくなり家庭裁判所で話し合いをする場合は、実勢価格を使用することが多いとされています。
調査機関 | 不動産会社 |
基準日 | 特になし |
発表時期 | 特になし |
使用用途 | 不動産売買 |
地価公示価格
地価公示価格は全ての基準となる価格です。毎年1月1日が基準日となっており、3月中旬から下旬に国土交通省が発表しています。
また、公示価格と同じような役割を持つ評価方法に、基準地価というものもあります。基準地価と公示価格の違いは、調査機関と基準日です。基準地価は都道府県が調査機関で、毎年7月1日が基準日となります。発表の時期は地価公示価格より半年ほど遅く、9月中旬から下旬とされています。
【公示価格】
調査機関 | 国土交通省 |
基準日 | 毎年1月1日 |
発表時期 | 毎年3月中旬~下旬 |
公示価格に対する評価額の割合 | – |
使用用途 | 全ての基準となる |
【基準地価】
調査機関 | 都道府県 |
基準日 | 毎年7月1日 |
発表時期 | 毎年9月上旬~中旬 |
公示価格に対する評価額の割合 | 等しい |
使用用途 | 公示価格の補足 |
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、自治体が固定資産税の計算をする際に使用する価格のことです。評価主体は市区町村で、3年に1回見直しが行われます。基準日は1月1日で、発表は4月ごろです。倍率方式で相続税路線価を計算する際や建物評価額を算出する際は、固定資産税評価額を使用します。
調査機関 | 市町村 |
基準日 | 1月1日(3年に1度見直し) |
発表時期 | 4月上旬 |
公示価格に対する評価額の割合 | 7割程度 |
使用用途 | 固定資産税や不動産取得税の計算 |
相続した不動産における評価額の調べ方
相続した不動産がいくらぐらいになるのか、実際の金額を知りたいと考えている方も多いでしょう。ここでは、評価額の計算方法とシミュレーションを、土地と建物に分けて紹介します。
土地評価額の計算方法
土地の評価額を計算する方法は、路線価方式(路線価×土地面積)と倍率方式(固定資産税評価額×倍率)の2種類です。相続税路線価や倍率は、国税庁のホームページから確認できます。具体的な計算方法の一例は以下の通りです。
【ケース】
・路線価:300A(30万円)
・土地の面積:200㎡
【計算式】
・30万円×200㎡ =6,000万円
ホームページで路線価を検索すると、道路上に「300A」などと記載されています。路線価は千円単位となっており、上記のケースでは「1㎡=30万円」です。所有する土地の面積が200㎡あるため、30万円×200㎡で6,000万円と計算できます。
また、倍率方式の場合は以下のように求めます。
【ケース】
・固定資産税評価額:2,000万円
・倍率:1.1倍
【計算式】
・2,000万円×1.1=2,200万円
倍率も国税庁のホームページから確認可能です。自宅の場所をチェックしましょう。
建物評価額の計算方法
家屋は、固定資産税評価額×1.0で計算します。つまり、固定資産税と同額です。例えば、固定資産税評価額が4,500万円だった場合は、建物評価額も4,500万円となります。
また、賃貸物件の場合は、建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)で計算をします。借家権割合は30%と定められおり、賃貸物件の場合評価が減額されるのがポイントです。相続税評価額は建物の新築価額の50%程度になると言われています。
相続した不動産の評価額が軽減されるケース
土地の形や状態は全ての不動産において一定ではありません。例えば、山間部にある土地や奥まった場所にある土地なども存在します。土地の形状や状態に応じて金額が変わるため注意が必要です。補正率をかけることで、評価額を減額できるケースもあります。
補正率を適用して評価額を減額できるケースは複数ありますが、ここでは主なケースを3つ紹介します。
貸家建付地の場合
貸家建付地とは、賃貸物件の敷地のことです。一軒家、マンション、アパートなどを建てて使用されるケースが多くなっています。貸家建付地の計算式は以下の通りです。
・自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
なお、借家権割合は全国で一律30%となります。このような土地は他者に不動産を貸し出ししているため、自由に使用することができません。そのため、評価額が下がります。
借地権の場合
借地とは、大家から土地を借りてその上に家を建てているようなケースのことです。土地を所有している方は借地権を保有しているため、不動産は相続の対象となります。ただし、相続税評価額を計算する際は借地権割合をかけることとなり、評価額は大幅に減額されます。計算式は以下の通りです。
・自用地評価額×借地権割合
なお、借地権割合は国税庁が定めています。割合は地域によって異なり、都心や人気の高い土地では割合が高く、郊外や田舎の方では割合が低くなります。
使いにくい形状の土地の場合
土地によっては形がいびつであったり間口が狭かったりして「使いにくい」と感じる場所もあります。このような土地には、相続税評価額を計算する際に補正率を適用することが可能です。土地の形がいびつな場合は、「路線価×不整形地補正率×土地面積」、間口が狭い場合は「路線価×間口狭小補正率×土地面積」といったように補正率をかけて計算します。なお、上記のケースだけでなく、以下のようなケースも減額の対象となります。
・奥行長大地
・線路や踏切に隣接している土地
・墓地に隣接している土地
・都市計画道路予定地として定められている土地
・土地の一部にがけ地が含まれる土地
・高圧線の下に存在している土地 など
補正率はそれぞれのケースで異なります。詳しい情報は国税庁のホームページ から確認しましょう。
相続税に利用できる特例制度
相続税を算出する際に適用できる控除や特例制度はいくつかあり、その中でも小規模宅地等の特例を利用すると、相続税を大幅に軽減できる可能性があります。自宅や事業所などの不動産を相続する予定がある方は、ぜひ利用しましょう。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例は、相続税額を計算する際に利用できる制度です。自宅や事業所など大切な不動産を相続した際に、相続税の負担が大きくなりすぎて手放さざるを得ない状況を回避することを目的としています。この特例制度を利用することで、最大80%も評価額を抑えられる可能性があります。
例えば、1億円の自宅を相続する場合2,000万円まで評価額が下がります。節税効果が高いため多くの方が利用していますが、利用できる土地の種類や適用要件は細かく定められているため注意が必要です。また、この制度を適用する場合、たとえ税額が0円になっても相続税申告の義務が発生します。
対象となる土地の種類
小規模宅地等の特例を適用できる土地の種類は、以下の3種類です。
・特定居住用宅地等:自宅など
・特定事業用宅地等:事業所など
・貸付事業用宅地等:賃貸していた土地など
・特定同族会社事業用宅地等:同族会社の事業所など
また、適用できる範囲と評価額の減額率も予め定められています。
土地の種類 | 適用範囲 | 減額割合 |
特定居住用宅地 | 330㎡まで | 80% |
特定事業用宅地等 | 400㎡まで | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡まで | 50% |
特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡まで | 80% |
自宅や事業所などは80%まで減額されます。一方、貸付事業用宅地等は適用範囲が狭く減額率も50%となります。また、家族を無料で賃貸物件に住まわせていた場合や、入居者のいない不動産の場合は小規模宅地等の特例を適用できない可能性があるため注意しましょう。
適用要件
小規模宅地等の特例を適用するための要件は細かく規定されています。特定居住用宅地等と特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等それぞれの適用要件は以下の通りです。
【特定居住用宅地】
・被相続人の配偶者が取得すること
・被相続人と同居していた親族が取得すること
・被相続人に同居の家族がいないケースでは、相続前3年間において借家住まいをしていた親族等が取得すること
【特定事業用宅地等】
・相続税の申告期限まで該当の土地で事業を営んでいること
・相続税の申告期限までその土地を保有していること
【貸付事業用宅地等】
・相続税の申告期限までその土地を保有していること
・相続税の申告期限まで該当の土地を貸付していること
細かい条件は、国税庁のホームページ
からも確認できます。自身のケースでも使用できるのかどうか気になる方は、チェックしましょう。
不動産の相続税評価額を算出する際のポイント
補正率を用いることで、不動産の評価額を低くすることが可能です。ただし、補正率の計算には複数の法令や数字が出てくるため、複雑で難しいと感じる方も多いでしょう。また、小規模宅地等の特例も相続税申告の際に適用できますが、要件が細かく定められており、自身のケースに適用できるか判断する際に困惑してしまう方も少なくありません。
計算方法にミスがあったり適用条件の確認に誤りがあったりすると、適切な評価額を計算できなくなる恐れがあります。自身での計算や申告に難しさを感じる場合は、専門家に相談するのが得策です。税理士であれば、税金の計算や各種申告手続きの代行、税金対策に関するアドバイスまでのトータルサポートが可能です。特に、できるだけ納める税額を小さくしたいと考えている方や、相続財産が多く税金の負担が重いと感じている方はできるだけ早く税理士に相談しましょう。
まとめ
相続により取得した不動産は、相続税路線価や実勢価格を用いて計算するケースがほとんどです。一方、倍率方式を用いる場合や建物評価額を計算する際は、固定資産税評価額が基準となります。 なお、土地の状態や形状によっては評価額が減額されるケースもあります。借地権割合や補正率などが出てくるため、自身で計算することに難しさを感じる方も多いでしょう。不動産評価額の計算は複雑です。適切な金額で相続税申告をするためにも、専門家に相談しましょう。申告業務の代行や税額計算、節税方法に関するコンサルティングなどを依頼できます。
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相続税の申告手続きは、初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし、適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
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監修者
山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。