【税理士監修】土地にかかる相続税はいくらになる?計算方法や節税方法などポイントを解説

更新日:2024.12.9

相続財産のなかでも土地は特に評価額が高くなりやすいため、相続税に与える影響も大きくなりがちです。そのため、相続税の節税対策を効果的におこなうためには、土地にかかる相続税についてポイントを押さえることが大切です。

本記事では、土地の相続にあたって知っておきたい、相続税の正しい計算方法や節税対策などを紹介します。

土地にかかる相続税を見る前に相続税の計算方法を確認

土地にかかる相続税について具体的に見る前に、まずは相続税の計算方法を改めて確認しましょう。相続税を計算する大まかな手順は以下のとおりです。

1.まずは課税対象額を求めます。相続税の課税対象額は以下の式で研鑽します。

プラスの財産-(借入金などマイナスの財産+葬儀費用)

※葬儀費用:通夜・告別式・火葬料・埋葬料・納骨費用など葬儀関連の費用全般

2.基礎控除を差し引き、課税遺産総額を計算します。

相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。課税対象額が基礎控除額より小さい場合、相続税は発生せず申告も不要です。

3.相続人全員の相続税額合計を計算します。実際の遺産分割割合ではなく、法定相続割合で分配したと仮定して計算する点に注意が必要です。

法定相続人が配偶者と子供2人、課税対象となる財産が1億円の場合を例にします。

基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円であるため、今回は基礎控除額を差し引いた後の課税遺産総額が5,200万円になります。配偶者と子供の法定相続割合はそれぞれ2分の1です。

以上の条件から、配偶者の取得金額が2,600万円、子供1人あたりの取得金額が1,300万円(2人の合計が2,600万円)になります。

国税庁の公式サイトで相続税の速算表が公開されているため、速算表に当てはめて計算します。

相続税速算表

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

引用元|国税庁 No.4155 相続税の税率

相続税額はそれぞれ以下のとおりです。

配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円

子供1:1,300万円×15%-50万円=145万円

子供2:1,300万円×15%-50万円=145万円

相続税額の合計は、340万円+145万円+145万円=630万円となります。

4.相続人ごとの正確な相続税額を計算します。相続税の総額を実際に相続で取得した財産額に応じて按分したうえで、個々の事情に合わせて加算や控除などが必要です。

先ほどと同様の条件で、実際の遺産分割割合が以下の場合を例にします。

配偶者:6,000万円 全体の60% 子供1:3,000万円 全体の30% 子供2:1,000万円 全体の10%

実際の取得割合に応じた各々の相続税額は以下のとおりです。

配偶者:630万円×60%=378万円

子供1:630万円×30%=189万円

子供2:630万円×10%=63万円

※配偶者は配偶者の税額の軽減制度を適用できるため、相続によって取得した財産の額が1億6,000万円までであれば相続税がかかりません。したがって今回の場合、軽減制度を利用すれば配偶者の相続税額はゼロになります。

土地の相続税の計算方法

相続税の計算方法で紹介したように、相続税の計算でははじめに課税対象額の計算が必要です。したがって、土地にかかる相続税を計算するためには、土地の金額を明確にしなければなりません。

土地の相続税評価額とは

土地の相続税評価額とは、画一的な方法で計算する土地の評価額です。土地や建物などの不動産を相続する場合、相続税評価額を用いて課税対象額を計算します。

土地の相続税評価額は、市場での売買に用いられる取引相場とは異なる金額です。相続税の公平な課税を実現するため、相続税を計算する際は相続税評価額を用いる必要があります。市場価格を用いると相続税額にズレが生じてしまうため注意が必要です。

土地の相続税評価額の計算方法

土地の相続税評価額の計算方法は以下の2種類です。

  • 路線価方式:市街地など、国税庁によって路線価が定められている地域で用いる手法です。路線価とは道路に面する宅地における1㎡あたりの価格であり、国税庁ホームページの路線価図で確認できます。路線価・土地面積・土地の形状に応じた補修率を乗じて計算します。
    なお、土地の形がいびつで利便性が低い・2方向以上が道路に面しているなど、個々の状況によっては調整計算が必要です
  • 倍率方式:路線価が設定されていない場合に用いる手法です。土地の固定資産税評価額に、特定の倍率を乗じて計算します。倍率は地域ごとに設定されており、国税庁の公式サイトで確認可能です

路線価の定めの有無によって使用する計算方法が異なります。

土地の相続税計算で利用できる特例・控除制度

  • 相続税にはさまざまな特例や控除制度があり、最大限活用すれば税額を小さくできる効果が期待できます。土地の相続税計算で利用できる特例は小規模宅地等の特例です。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用の土地を相続した場合に適用できる制度です。相続した土地が一定の要件を満たす場合、相続税の計算に用いる土地の評価額を50%もしくは80%減額できます。

小規模宅地等の特例の適用対象となる土地の具体例を紹介します。

  • 被相続人の自宅が建っている土地:被相続人または被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で特定居住用宅地等に該当します
  • アパートなどの貸付事業用宅地:貸付事業用宅地等に該当します
  • 飲食店などの事業を行なっていた土地:特定事業用宅地等に該当します
  • 同族会社の事業を行っていた土地:特定同族会社事業用宅地等に該当します

なお、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告が必要です。小規模宅地等の特例の適用によって相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告をしなければ特例の適用が認められません。

小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど、いくつかの添付書類が必要です。

土地の相続税を抑えるための特例を適用する

土地の相続税を抑えるためには、土地を更地のままにするのではなく、賃貸住宅の建設など土地活用を行うのが効果的です。なぜ土地活用が節税対策につながるのか理由を解説します。

小規模宅地等の特例が適用可能になる

土地活用が節税対策につながる理由のひとつが、土地活用によって小規模宅地等の特例が適用可能になるためです。

前述した小規模宅地等の特例では、土地の評価額を大幅に減額できます。小規模宅地等の特例の適用対象となるのは、事業の用または居住の用に供されていた宅地等です。すなわち、更地状態の土地には小規模宅地等の特例を利用できず、相続税評価額を小さくできません。

相続税の節税対策を検討しているのであれば、土地を更地のまま放置するのではなく、何らかの土地活用をするのがおすすめです。

相続財産の縮小につながるケースもある

土地活用を進めることで、結果として相続税額の縮小につながる可能性もあります。

記事の前半で相続税の計算方法を解説しましたが、改めて相続税の課税対象額の計算式を紹介します。

プラスの財産-(借入金などマイナスの財産+葬儀費用)

計算式の通り、借入金などマイナスの財産は課税対象額から差し引くことが可能です。

賃貸住宅の建設などを進める際、建物の建築費として借り入れを行うケースは多くあります。相続が発生した時点で建築費分の借入金が残っていた場合、マイナスの財産として控除できます。相続税の計算に用いる課税対象額が小さくなるため、相続税の縮小につながるのです。

土地活用による相続税対策の注意点

相続対象となる土地が更地である場合、土地活用によって相続税の節税につながる可能性があります。しかし、相続税対策を目的に土地活用を行う場合、以下の3点に注意が必要です。

  • 土地活用は早めに行う必要がある:相続開始から3年以内に土地活用を開始していた場合、小規模宅地等の特例が適用できない可能性があります。節税効果を得るためには、土地活用に向けた具体的な準備・作業を早めに始めることが大切です
  • 相続時精算課税制度を利用しない:相続時精算課税制度によって土地の贈与が行われていた場合は、小規模宅地等の特例を受けられません。
  • 青空駐車場は小規模宅地等の特例の対象外:小規模宅地等の特例によって土地の評価額を下げられるのは、土地に建物が建っている場合のみです。土地を青空駐車場(車止めの石やロープなどを設置しただけのように、更地のまま運用している駐車場)として使っていた場合は特例の適用を受けられず、更地の場合と同じ評価額になります。なお、アスファルト舗装を行えば構築物を敷いていると認められるため、小規模宅地等の特例の適用を受けられます

土地活用による相続税の節税効果を得られるよう、小規模宅地等の特例の適用条件について入念な確認が必要です。

まとめ

土地の相続税を計算するには、評価額を正しく計算し、適用される特例や控除などもしっかり押さえる必要があります。節税対策としては土地活用が効果的ですが、小規模宅地等の特例の適用条件について正しい理解や注意点の確認が欠かせません。

相続税の計算や節税対策は複雑な部分が多く、専門知識がないと難しいケースが少なくありません。土地の相続税について疑問や悩みをお持ちであれば、無理に当事者のみで解決しようとせず、専門家に相談するのが安心です。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。