相続人が行方不明の場合の遺産分割は?対処法や見つからなかったときの対応

一人でも所在不明の相続人がいると、遺産分割協議は大きく停滞してしまいます。もし行方不明者が見つからないまま相続を放置すると、財産管理や相続税申告で深刻なトラブルに発展することもあるので要注意です。本記事では、相続人が行方不明の場合にまずすべき対応について解説します。また遺産分割協議の進め方や見つからなかった場合の対処法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
遺産分割にかかせない「遺産分割協議」とは?

遺産分割協議とは、被相続人が残した財産を「誰が・何を・どのように引き継ぐか」を、相続人全員で話し合って決める手続きです。必ず相続人全員が参加し、合意に至ることが前提となります。
話し合いをして分割内容がまとまったら、その内容を文書にまとめた「遺産分割協議書」を作成します。遺産ごとの承継者や分け方を明示することで、相続人全員が合意した事実を証明でき、後々のトラブル防止に非常に役立ちます。
その場では円満に決まったと思えても、書面が残っていなければ誤解や争いが生じる可能性もあります。相続がスムーズに進むよう、遺産分割協議を行った際は必ず遺産分割協議書を作成しておきましょう。
複雑な相続や相続人が多い場合、書類作成や手続きに不安がある方は「やさしい相続相談センター」にお気軽にご相談ください。
行方不明の相続人がいる場合にまずすべき対応

相続人の中に行方不明者がいる場合でも、遺産分割協議は「相続人全員」で行う必要があります。そのため、行方不明だからといって手続きを進められるわけではありません。まずは次の2つのステップを確実に行いましょう。
行方不明になっている相続人の住所を調べる
連絡が取れない相続人がいる場合でも、その人が生存している限り相続権は失われません。したがってまずは現在の住所を特定し、遺産分割協議の案内を届ける必要があります。
住所の特定には、相続人の戸籍謄本と戸籍の附票を利用するのが一般的です。附票には現住所の履歴が記載されているため、直接連絡が取れなくても居住地を確認できます。「返事がないから無視して進める」という判断はトラブルのもとになるため、行方不明であっても必ず所在確認を行いましょう。
連絡が取れるか確認する
住所が判明したら、その住所宛に相続発生の事実と遺産分割協議の実施が必要である旨を丁寧に書面で伝えます。
手紙には以下のような配慮があると親切です。
- 相続関係が一目で分かる簡単な家系図を添える
- 相続人同士の関係性を簡潔に説明する
- 電話番号を記載し、必要に応じて連絡をもらえるようにする
一方で、相続財産の詳細を手紙に詳しく書くことは避けたほうが良いでしょう。誤解やトラブルの原因になりやすいため、詳細の説明は直接の連絡で行うのが無難です。
また他の相続人だけで先に分割内容を決め、その「承諾」を行方不明者に求めるような手紙を送る方法もおすすめできません。相手の心情を害し、かえって協議を複雑にしてしまう恐れがあるためです。行方不明者への連絡はあくまで丁寧に、相手に配慮した形で進めましょう。
行方不明の相続人が見つからなかった場合の対処法

どうしても行方不明になった相続人が見つからなかった場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。不在者財産管理人は、行方不明者の代理人として遺産分割協議に参加する役割を担います。
申立てができるのは、行方不明者の配偶者・他の相続人・債権者などの利害関係者です。申立人は、家庭裁判所へ次のような書類を提出します。
- 不在者財産管理人選任の申立書
- 行方不明者および申立人の戸籍謄本
- 管理人候補者の戸籍謄本・住民票
- 行方不明であることを示す資料
- 財産目録
- 遺産分割協議書(案)
必要書類はケースによって変わるため、事前に家庭裁判所や専門家へ確認しておくのが安心です。なお不在者財産管理人は、一般的に被相続人の親族のうち利害関係のない人物が選ばれます。
ただし、適任者がいない場合は、家庭裁判所が弁護士や司法書士といった専門家を選任することもあります。そのため「親族に適任者がいないから手続きが進められない」という心配は不要です。
家庭裁判所の選任と許可が下りると、不在者財産管理人が行方不明者の代理人として遺産分割協議に参加し、財産管理を行います。もし行方不明者が後日戻ってきた場合には、管理していた財産を管理人から本人へきちんと引き継ぐことになります。
不在者財産管理人選任の5ステップ
不在者財産管理人を選出するまでの流れを以下の表にまとめました。
ステップ | 内容 | ポイント |
①管轄裁判所の確認 | 申立て先となる家庭裁判所を確定 |
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②必要書類の収集 | 戸籍・附票・財産資料などを揃える |
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③裁判所書式の準備 | 公式書式に沿って申立書を作成 |
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④費用の準備 | 申立てに必要な各種費用を用意 |
※予納金は返還されないケースが多い |
⑤候補者の指定/裁判所の選任判断 | 不在者財産管理人を誰にするか検討 |
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不在者財産管理人の選任は、必要書類の収集から費用の準備、候補者の検討まで、想像以上に専門性が高く負担の大きい手続きです。特に「行方不明の期間の立証」や「財産目録の作成」は個人では難しいことも多く、書類の不備があると選任まで時間がかかってしまいます。
スムーズに進めるためには早い段階から専門家に相談し、状況整理や申立書の作成をサポートしてもらうと良いでしょう。初めての相続や行方不明者が関わる場合は「やさしい相続相談センター」にお気軽にご相談ください。手続きの流れや書類準備、申立書作成まで専門家が丁寧にサポートいたします。
選任後の遺産分割協議の流れ
不在者財産管理人が選任されたからといって、すぐに遺産分割協議へ参加できるわけではありません。まずは家庭裁判所から「協議に参加して良い」という許可を得る必要があります(家事事件手続法146条の2第1項)。
許可取得後の遺産分割協議は、次のような流れで進みます。
- 相続人同士で、あらかじめ分割案を話し合う
- 不在者財産管理人が家庭裁判所へ「遺産分割協議に参加する許可」を申立てる
- 許可が出たら、管理人も正式に協議へ参加し、遺産分割協議書を作成する
合わせてこの協議書の内容で遺産分割することについても家庭裁判所の許可を受ける必要があります。協議書が完成したら、その内容に基づき登記・名義変更などの実務手続きを行います。なお、作成する遺産分割協議書には、不在者財産管理人本人の署名・押印が必須です。
行方不明の状態が7年以上続いている場合は失踪宣告を申し立てる
共同相続人は、行方不明になっている相続人(不在者)について、家庭裁判所に「失踪宣告」の申し立てができます(民法30条)。失踪宣告が認められると、不在者は「法律上死亡したもの」とみなされます。そのため、他の相続人だけで遺産分割を進めることが可能です。
ただし死亡とみなされる時期によっては、行方不明者に子どもなど別の相続人がいる場合、その人が新たに相続人となることがあります。遺産分割に参加すべき範囲が変わるため、慎重な確認が必要です。
なお、失踪宣告を利用できるのは、行方不明の状態が「7年以上」続いている場合に限られます(民法30条)。7年未満の場合は失踪宣告を選べず「不在者財産管理人の選任」を行う方法で遺産分割を進めることになります。
参考:民法|e-GoV
まとめ
相続人が行方不明の場合でも、遺産分割協議は相続人全員の参加が原則です。そのため安易に手続きを進めてしまうと後々重大なトラブルを招きます。
まずは戸籍附票などを用いて住所を確認し、丁寧に連絡を試みましょう。それでも所在が判明しない場合は、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立て、代理人が協議に参加できる体制を整えてください。
また7年以上行方不明が続く場合には、失踪宣告により法的に死亡とみなす選択肢もあります。いずれの手続きも専門性が高く、書類作成や証拠の準備には時間と労力がかかるため、早い段階で法律の専門家に相談しましょう。
「やさしい相続相談センター」では、行方不明者のいる相続や不在者財産管理人の手続きなど、複雑なケースにも丁寧に対応しています。初回相談は無料のため、まずはお気軽にご相談ください。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。


