親の会社の借金は相続すべき?連帯保証人のリスクと私財を守る3つの対策

親の会社の借金は相続すべき?連帯保証人のリスクと私財を守る3つの対策

親が経営していた会社に多額の借金がある場合、必ずしも子どもが背負う必要はありません。対応を誤ると私財まで失う恐れがあります。

本記事では、相続放棄の判断基準や、自宅を守りつつ負債を整理する方法を解説します。

親の会社の借金は相続される?返済義務が生じる2つの条件

親が会社の社長であっても、法的には会社と経営者個人は別人格です。原則として、会社の借金を社長の子が自動的に引き継ぐことはありません。しかし、実際には相続人である子が親の会社の借金を背負ってしまうケースがあります。

ここでは、親の会社の借金を相続する2つの条件を確認します。

条件1:親が会社の借金の連帯保証人になっている

中小企業が融資を受ける際、「経営者保証」といって社長個人が連帯保証人になる場合が多くあります。会社名義の借金そのものは相続しない一方、親の連帯保証債務は個人の債務のため相続の対象です。

万が一、会社が借金を返せなくなった場合は、相続人である子どもが親に代わって返済の責任を負うリスクがあります。

条件2:相続人が単純承認してしまった

親が会社の借金の連帯保証人でも、子が相続放棄や限定承認の手続きをすれば、自分の財産で返済する義務を負いません。しかし、親が亡くなったことを知ってから3ヵ月以内に手続きを行わない場合、資産も負債もすべて引き継ぐ「単純承認」とみなされます。

また、相続放棄する意思があっても、以下のような行動をとると単純承認とみなされ、返済義務が確定してしまいます。

  • 賃貸マンションを解約して敷金を自分の懐に入れる
  • 形見分けの範囲を超えて遺品を持ち出す
  • 貴金属や車を売却・譲渡する
  • 親の預金口座から固定資産税や公共料金などを支払う

安易に親の財産には手をつけず、まずは司法書士や税理士などの相続の専門家に相談しましょう。

相続放棄や限定承認の詳細については後述します。

【見落とし厳禁】役員借入金の評価も確認を

意外な落とし穴となるのが、会社が親である社長個人から借金をしているケース(役員借入金)です。会社の資金繰りを助けるために親が個人の財産を会社に貸し付けていた場合、貸付金は親個人の資産として相続の対象となります。

たとえ会社側が赤字で返済能力がなくても、税務上は貸付金が額面通りの資産として相続税の対象になります。会社の借金問題で頭がいっぱいな時に、さらに税金の追い打ちをかけられるという二重苦に迫られるというわけです。

このようなイレギュラーな状況に対応するには税務上の高度な判断が必要です。できれば税理士に相談しましょう。負債の整理と並行して財務診断を受けることが二次的な損失を防ぐ鍵です。

会社を廃業するか続けるかを見極める方法

事業を続けるか廃業するかで悩む男性

親の会社の借金を相続するかしないかという問題の前に避けて通れないのが、会社そのものをどうするかという決断です。

親が株式会社の株主や合同会社の出資者であった場合、株式や持分自体が相続財産となります。相続放棄は、連帯保証債務を引き継がないと同時に、会社のオーナーとしての権利も手放すことを意味します。

逆に株式や持分を相続する場合、会社のオーナーとして借金を含めた会社の将来に対して責任を持つ必要があります。まずは会社の財政状況を確認し、引き継ぐ価値があるかを見極めましょう。

営業利益が黒字か赤字か

多額の借金に目が行きがちですが、損益計算書(P/L)上の営業利益が重要な指標の1つになります。営業利益が黒字の場合、事業のニーズがあり、稼ぐ力が健在であることを意味します。

資金繰りが苦しい原因が、過去の設備投資に伴う利息や重い返済負担の場合は、負債を圧縮して会社を立て直せる可能性があります。民事再生や経営者保証ガイドラインなど、活用できる制度がさまざまです。

一方、営業利益が赤字で、営業するほど現金がショートする状況であれば、私財を投じて支えるのは危険です。無理に延命しようとすると、将来の生活資金まで失いかねません。傷が浅いうちの戦略的廃業が、あなたや家族の人生を守る選択になります。

参考:経営者保証 | 中小企業庁

実態純資産がプラスかマイナスか

会社の正味価値である実態純資産も確認するべき指標です。決算書上の数字は必ずしも現在の価値を反映していません。

例えば、親が30年前に購入した土地や建物は、帳簿上の価格より現在の時価が大幅に高い場合があります。すべての資産を「いま売ったらいくらになるか」で評価し直します。

同時に、目に見えない隠れた負債も洗い出します。従業員への退職金の積み立て不足、係争中のトラブルに伴う損害賠償リスクなど、帳簿に載っていない項目を差し引きます。

実態を反映したバランスシート上で純資産が大きくプラスであれば、事業を継続するための余力があるということです。逆に深刻な債務超過であれば、次の代で無理に立て直そうとせず、引き際とする判断も視野に入れましょう。

後継者として事業の継続性を確保できるか

数字を見て事業継続の可能性があっても、経営のバトンタッチができるかという現実的な問題が残ります。収益が親の個人的なスキルや人脈に依存していた場合、親が亡くなると顧客が離れて収益が激減するリスクがあります。

代替わりしても主要な取引先との契約は継続される確証があるか、技術やノウハウを継承できるかを冷静に検討しましょう。

直近の決算が黒字でも、数年以内に赤字に転落すると予想される場合、無理な事業継続は得策ではありません。事業が市場から評価されているうちに、M&Aで借金を整理するか、計画的廃業を選ぶのが賢明です。

自社株の評価と財務状況をプロの目で分析する

一見すると借金まみれでも、実態を評価すると会社に価値があるケースもあれば、その逆もあります。数字の裏付けがあれば、家族や従業員、金融機関に対して会社を廃業する・続けるの決断を迷いなく伝えることもできます。税理士に相談し、会社の価値を正しく評価することから始めましょう。

廃業して借金を整理する場合の借金対策

相続と相続放棄

親の会社を廃業するという選択は、負債を切り離して自分の人生を守るための戦略です。会社を廃業した上で、親の連帯保証債務も相続しなくて済む方法を検討しましょう。

相続放棄|資産も負債も一切引き継がない

相続放棄は、プラスの財産(現金・不動産・株式など)とマイナスの財産(借金・連帯保証債務など)をすべて受け取らない方法です。

家庭裁判所に申し立てて受理されると、最初から相続人ではなかったことになります。親に巨額な負債があった場合でも、一銭も返済する必要がありません。

ここで注意したいのが、相続財産に手をつけると借金も含めてすべて引き継ぐ「単純承認」をしたとみなされ、相続放棄ができなくなるという点です。特に親の預金からの支払い(公共料金や未払金の精算)や、会社の備品売却などは厳禁です。

子どもが全員相続放棄した場合、次の順位(親の両親や兄弟姉妹)に相続する権利が移ります。相続放棄することを親族間で事前に共有することで、知らぬ間に多額の借金を背負わされる人が出ないようにしましょう。

限定承認|資産の範囲内で負債を返済する

限定承認は、相続で得たプラスの財産の範囲内で借金を返済する制度です。全額返済できなくても、相続人が自分の持ち出しで返済する必要はありません。会社の自社株や親と同居していた実家など、手放したくない財産がある場合に有力な選択肢となります。

限定承認を選択する場合は、相続放棄と同様に相続開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所への申し立てが必要です。

しかし、実務での利用が少ないのには、相続人全員の合意が必要という点以外に、税務上のリスクがあるからです。限定承認をすると、不動産などを時価で売却したとみなされる「みなし譲渡所得税」が発生し、思わぬ高額納税を迫られることがあります。この損得勘定は非常に複雑なため、必ず税理士によるシミュレーションが必要です。

経営者保証ガイドラインの特則|破産を避け、私財を守る

会社を廃業するなら自己破産するしかないというのは誤解です。廃業時における経営者保証ガイドラインの特則を活用すると、破産を避けて連帯保証債務を整理できます。

自己破産の場合、原則としてすべての資産を処分しなければなりません。一方、特則を利用すると以下のような資産を手元に残せる可能性があります。

  • 一定期間の生活費(再起支援金)
  • 華美でない自宅
  • 相続人が元から持っていた預貯金や不動産

官報に名前が載ることもないため、経済的信用を守りながら再出発できるメリットの大きい救済策と言えます。まだ会社の資産が残っているうちに相談するのが重要なポイントです。

参考:事業承継時に焦点を当てた 「経営者保証に関するガイドライン」の特則|全国銀行協会

事業を続けたい場合の借金対策

企業・会社

親の会社を引き継ぎたい場合、借金をそのままにするのではなく、財務構造をリセットする戦略が必要です。

以下より相続人が無理な返済で共倒れにならないための対策を解説します。

保証の解除|経営者保証は引き継がない

子が会社を引き継ぐ際、かつては会社の借金の連帯保証もセットで引き継ぐのが常識でした。しかし現在は、国が定める「経営者保証ガイドライン」により、連帯保証を引き継がずに済むよう金融機関と交渉できます。

交渉材料として、法人と個人の資産を明確に分けているか、会社の利益で借金を返せるかといった財務の健全性の証明が必要です。税理士に相談し、説得力のある試算表や経営計画書を作成しましょう。

参考:経営者保証ガイドライン | 中小企業向け融資に関する相談窓口 | 一般社団法人 全国銀行協会

第二会社方式(事業譲渡)|借金を切り離して事業を救う

「会社には将来性があるが、親の代の借金が多すぎて利息を返すだけで精一杯」という場合に検討すべきなのが第二会社方式です。収益性の高い事業だけを新しく設立した会社へ譲渡し、多額の負債は元の会社に残して整理します。

一見すると不当な借金逃れのように聞こえますが、国が正式な再生スキームとして認めている手法です。第二会社方式の真の目的は、価値ある事業と雇用の維持にあります。会社が倒産してしまうよりも、適正な譲渡対価を得て収益部門が生き残る方が、債権者の回収額も大きくなります。

ただし、適当に会社を分けるだけでは資産隠し(詐害行為)とみなされ、債権者から訴えられるリスク</b>があります。事業価値の適正な算定や、残った負債の法的処理など、高度な専門性が求められるため、税理士や弁護士に相談しましょう。

生前の役員借入金免除

親が健在のうちであれば、さらに選択肢は広がります。例えば、返ってくる見込みのない親から会社への貸付金をなくす対策が可能です。

代表的なのが、親が返済を免除して借金を消す方法や、貸付金を会社の株式に変える手法(DES)です。 貸付金を株式に変えると、相続時の評価が貸付金の額面から業績に応じた株価になります。業績が低迷している場合は価値が低く評価され、相続税を抑えられる可能性があります。

さらに、帳簿上の借金が自己資本に置き換わるため、銀行からの評価が上がり、融資を受けやすくなるメリットもあります。

ただし、債務を免除された会社側には、税務上利益が出たとみなされ、会社側に重い税金がかかるリスクがあります。会社側の税負担を抑えつつ負債を整理するには、専門家の協力が欠かせません。

まとめ

親の会社の借金は、原則として相続の対象ではありません。ただし例外として、親が会社の借金の連帯保証人となっている場合、連帯保証債務が相続の対象となります。

相続人としてどのように対応すべきかは、会社そのものを引き継ぐか廃業するかによって異なります。親が会社経営をしているケースでは、親個人の財産だけでなく会社の価値も正しく評価して、あなたと家族の財産を守る判断をすることが重要になります。

会社経営者からの相続の場合、相続人だけで対応するのは非常に困難です。早期に税理士に相談することを強くおすすめします。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。