相続税対策はいつまでに行うべき?タイミング別の節税手法を紹介

「相続税対策はいつまでに始めれば良い?」「相続税の節税対策はいつまでできる?」このような疑問をお持ちの人も多いでしょう。
結論として相続税対策に明確な期限はなく、早ければ早いほど良いといえます。また、相続開始までの時間的な余裕によって選択できる節税対策に違いがあるため、実施するタイミングに合わせた適切な手段を選ぶことが大切です。
今回は相続税対策の手法をタイミング別に紹介します。
目次
相続税対策に「いつまで」の期限はない。ただし早ければ早いほど良い
前提として、相続税対策に明確な期限はありません。「いつまでにやらなければならない」という絶対的な基準は存在しないといえます。
相続税対策に明確な期限はありませんが、早ければ早いほど良いのが事実です。相続税対策を始める時期が早いほど実施できる選択肢が多く、得られる節税効果も大きくなります。
相続税対策|なるべく早いうちから行うべき手法3選

まずは相続税対策のうち、なるべく早いうちから行うべき手法を3つ紹介します。
1.暦年贈与の活用
相続税対策の中でもよく活用されるのが暦年贈与の活用です。
暦年贈与とは、1年間で贈与を受けた財産の合計額が基礎控除以下であれば贈与税がかからないという仕組みを活用した贈与です。贈与税の基礎控除額である110万円以下の贈与を毎年繰り返し行えば、多額の財産を税負担なく引き継ぐことができます。
暦年贈与を早く行うべき理由は以下の2つです。
- 税負担なく贈与できる額が1年につき110万円と少額であり、多額の財産を移転させるには長い年数がかかるため
- 相続開始前3年〜7年以内に行われた暦年贈与は相続税の課税対象になるため
(年間110万円以下の贈与でも相続財産に加算する必要がある)
特に注意が必要なのが、2の「相続開始前の贈与は相続財産に加算される(生前贈与加算)」というルールです。令和6年(2024年)の法改正により、この加算対象となる期間は従来の「亡くなる前3年間」から、最大で「亡くなる前7年間」へと延長されることになりました。
つまり、相続が近づいてから慌てて暦年贈与を始めても、過去7年分の贈与は相続財産として扱われてしまう可能性が高く節税効果を得られないということです。
2.相続時精算課税制度による生前贈与
相続時精算課税制度とは、特別控除である累計2,500万円までは贈与税が非課税になるという制度です。2,500万円までは贈与税が課されない分、相続発生時に相続財産に加算することになります。60歳以上の両親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で選択できます。
特別控除の活用だけであれば、相続開始の直前に行なっても効果に違いはありません。しかし、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除額が存在します。暦年贈与と違い、相続時精算課税制度を選択した贈与の場合、基礎控除以下の部分は時期を問わず相続財産への加算が不要です。
基礎控除を最大限に活用するためには、相続時精算課税制度による生前贈与も早いうちから始めるのが理想です。
3.不動産の活用
所有しているだけで放置している土地や建物などの不動産がある場合は、なるべく早いうちから活用し始めましょう。
アパートやマンションなどの賃貸物件は「貸家建付地」「貸家」として扱われ、自用物件よりも相続税評価額が低くなります。賃貸物件の新築に際して融資を利用すれば、債務控除の適用ができ課税価格の減額による節税もできます。さらに、賃貸経営により家賃収入を得られれば遺せる現預金が増えるため、納税資金を確保する方法としても効果的です。
さらに土地を自宅や事業のために使用すれば、小規模宅地等の特例の適用対象になる可能性があります。小規模宅地等の特例の適用対象になれば、相続税評価額を最大80%減額できます。
賃貸経営および自宅や事業目的での活用、いずれの方法も実際に開始するまでに様々な作業が必要です。不動産の活用までに時間がかかる可能性もあるため、節税効果を確実に得られるよう早めに準備を進めましょう。
相続税対策|相続開始の直前にも実施できる手法3選

続いて、相続開始の直前に実施しても節税効果を得られる手法を3つ紹介します。
1.各種特例を活用した生前贈与
前述のように、贈与税の基礎控除の仕組みを最大限に活用するためには生前贈与をなるべく早い時期に開始するのが理想です。
しかし、以下の特例を活用した生前贈与であれば、相続開始の直前であっても節税効果を得られます。
概要 | 控除額 | |
住宅取得等資金贈与の特例 | 直系尊属からマイホームの新築、取得、増改築等のための資金援助を受けた場合に適用可能 | 【省エネ等住宅の場合】 【それ以外の住宅の場合】 |
配偶者への居住用不動産の贈与(おしどり贈与) | 婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合に適用可能 | 最大2,000万円 |
教育資金の一括贈与の特例(※1) | 直系尊属から30歳未満の子や孫へ教育資金を一括贈与した場合に適用可能 | 最大1,500万円 |
結婚・子育て資金の一括贈与の特例 | 直系尊属から18歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚や子育てのための現預金を一括贈与した場合に適用可能 | 最大1,000万円 |
(※1)2026年3月31日をもって廃止
これらの特例を活用した贈与は暦年贈与と違い、相続開始の直前に行われた場合でも相続税の課税対象になりません。
ただし、「教育資金の一括贈与の特例」「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」を活用した贈与は注意が必要です。これらの贈与財産について、贈与者の死亡時、すなわち相続発生時点で未使用残高がある場合は相続税の課税対象になります。
2.墓地や仏具など非課税財産の取得
墓地、墓石、仏壇、仏具などは相続税の非課税財産であり、課税対象になりません。 被相続人が亡くなってから相続人が購入しても節税にはなりませんが、生前に被相続人が購入しておけば、その購入費用の分だけ課税対象となる現金を減らすことができます。
ただし、墓地等の購入時にローンを利用した場合、ローン残債は債務控除の対象外となるのでご注意願います。
3.養子縁組の実施
養子縁組の実施は、法定相続人の数を増加させることで相続税の節税につながります。 養子は実子と同じく相続人としての権利を持ち、第1順位の法定相続人として扱われます。
法定相続人が増えることで相続税の基礎控除額が増加し、結果として課税遺産総額が少なくなるため、相続税の節税が可能です。
ただし、税法上、法定相続人の数に含める養子の数には制限があるため注意しましょう。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
相続税対策|相続開始後でも実施できる手法3選

最後に、相続開始後でも実施できる相続税対策の手法を3つ紹介します。
1.控除を最大限に活用する
相続税を最小限に抑えるために最も大切であるのが、控除を最大限に活用することです。
相続税計算における控除は、基礎控除、債務控除、特例による税額控除の3つに大別できます。このうち基礎控除以外の控除は、要件を満たしていても自動で適用はされません。控除を適用するためには、相続税申告書に必要事項の記入や書類の添付などを行う必要があります。
相続税の控除制度には、基礎控除額を上回る大きな控除額を持つものも多く存在します。控除の適用有無が税額を大きく左右するため、税負担を最小限に抑えるには、適用要件を満たしている控除を洗い出し、漏れなく申告することが重要です。
2.土地の相続税評価額の計算は専門家に依頼する
土地は形状や立地によって使い勝手の良し悪しが変わります。そのため、土地の状況によっては補正によって評価額を減額することが可能です。
しかし、補正の可否や利用する補正率の判断には専門知識が必要です。もし補正の適用漏れを起こすと、土地の相続税評価額が実態よりも高額になってしまうこともあります。反対に本来は補正ができない土地で補正率を乗じて申告をしてしまうと、相続税の過少申告となり、過少申告加算税や延滞税などを課される恐れがあります。
土地の相続税評価額は、形状や立地に応じた複雑な補正によって大きく変動する可能性があります。 この補正の適用可否や適切な補正率の判断には専門知識が不可欠です。税負担を最小限に抑えるため、相続財産に土地が含まれる場合は、不動産鑑定士や相続専門の税理士に相談するのが賢明です。
3.相続財産を寄附する
相続財産を公益法人や認定NPO法人等に寄附した場合、寄附をした財産や支出した金銭は相続税の課税対象になりません。そのため、相続財産の寄附も相続税対策として効果等といえるでしょう。遺言書で遺産の寄附が指定されていた場合も相続税の課税対象外になります。
ただし、寄附先が一般社団法人や任意団体、個人の場合は相続税が課税されます。
参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁
相続税対策は早いほど良い!生前のうちから節税対策を行うのが理想
相続税対策に「いつまで」という法的な期限はありません。しかし、生前にしか実施できない、または期間が長いほど節税効果が高い手法は多く存在します。特に、相続開始後では選択肢が限定されるため、対策はなるべく早いうちから始めるのが理想的です。
どのような手法が効果的であるかは、個々の資産状況や家族構成に応じた専門的なアドバイスが欠かせません。ぜひ、相続専門の税理士のサポートを受けることをご検討ください。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。







