株主が亡くなり名義変更しないで配当金は受け取れる?手続きの進め方を解説

株主が亡くなり名義変更しないで配当金は受け取れる?手続きの進め方を解説

株主が亡くなると、名義変更をしないままでも配当金は受け取れるのか疑問に思う方も多いはずです。名義変更を放置すると配当金の支払留保や時効により受け取れなくなる可能性があります。さらに未受領配当金は相続税や所得税の課税関係にも影響するため、判断を誤ると申告漏れにつながることもあるので要注意です。そこで本記事では名義変更をしない場合のリスクや未受領配当金の確認・手続き方法、税務上の注意点を解説します。

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株主が亡くなり名義変更しないで配当金は受け取れる?

結論からいうと、名義変更をしないままでは配当金を受け取れません。配当金は、基準日時点で株主名簿に記載されている名義人に対してのみ支払われるのが原則です。そのため、相続により株式を取得していた場合でも、被相続人名義のままでは、原則として相続人は配当金を受け取れません。

名義変更がされていない場合、配当金は「支払留保」として保留されるか、一定期間を経過すると時効により請求できなくなる可能性もあります。特に、毎年継続して配当を出している企業の株式では、名義変更が遅れるほど本来受け取れるはずだった配当収入を失い続けることになります。

未受領配当金については後から請求できるケースもありますが、その際は相続関係を証明する書類の提出など、手続きが煩雑になりがちです。こうした不利益を避けるためにも、株式を相続した場合は、できるだけ早く名義変更の手続きを行うのが望ましいです。

未受領配当金の手続きが必要か確認する方法

未受領配当金の手続きが必要か確認するために2つの方法をご紹介します。

故人宛ての配当金領収証の有無を確認する

故人宛ての配当金領収証が手元に残っている場合、その配当金はまだ受け取られていない可能性が高いと考えられます。配当金領収証は、相続開始からしばらく時間が経ってから郵送されることもあるため、遺品整理の際は見落とさないように注意が必要です。

ただし、配当金の受取方法として「配当金領収証方式」以外(口座振込方式など)を選択していた場合、領収証自体が送付されません。その場合、この方法だけでは未受領配当金の有無を確認できない点に注意しましょう。

証券会社や信託銀行に問い合わせる

未受領配当金の有無を確実に把握したい場合は、証券会社や信託銀行等へ直接確認する方法が最も確実です。具体的には、故人が口座を開設していた証券会社に対し「未受領(未払)配当金明細書」の発行を請求します。

なお、株式の管理状況によっては、証券会社ではなく株主名簿管理人(信託銀行など)への請求が必要となるケースもあります。

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未受領配当金の相続手続きの進め方

相続に関する書類手続き

未受領配当金の相続手続きは、配当金領収証の有無や払渡し期限内かどうかによって手続き方法が異なります。ここでは代表的な2つのケースに分けて解説します。

配当金領収証があり、払渡し期限内の場合

配当金領収証が手元にあり、なおかつ払渡し期限内であれば、銀行窓口で手続きを行います。必要書類は次の通りです。

  • 配当金領収証
  • 株主が亡くなったことが確認できる戸籍謄本
  • 手続きを行う相続人の本人確認書類
  • 印鑑(認印可)

請求書類はWeb上では入手できないため、銀行窓口で直接記入する必要があります。配当金額が少額であれば、他の相続人の署名・捺印がなくても、その場で受け取れるケースもあります。

一方、配当金額が100万円以上になると窓口での支払いはできず、相続事務センターでの手続きが必要です。この場合、相続人全員の署名・捺印および印鑑証明書が求められ、払い出しまでに3週間程度かかるため、余裕をもって進めましょう。

配当金領収証がない、または払渡し期限を過ぎている場合

配当金領収証がない場合や、払渡し期限を過ぎている場合は、株主名簿管理人である信託銀行に対して手続きを行います。原則として窓口対応はなく、郵送での手続きとなります。

一般的な必要書類は以下の通りです。

  • 信託銀行所定の依頼書
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 亡くなった株主の戸籍謄本(16歳の誕生日から死亡まで確認できるもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書(発行から6ヵ月以内)

必要書類は信託銀行ごとに異なるため、事前に確認しましょう。また、手続き完了までに3週間〜1ヵ月程度かかるのが一般的です。また配当金には除斥期間があるため、早めに対応するのが望ましいです。

未受領配当金は相続税の対象?

未受領配当金(未収配当金)が相続税の課税対象になるかどうかは「相続が始まった日」と、配当に関する次のタイミングとの関係で判断されます。

相続開始日がいつなのかによって、相続税か所得税か、あるいは両方が関係するかが変わるため注意が必要です。以下では、3つのケース別に相続税の対象となるかどうかについて解説します。

相続開始日が配当基準日より前の場合

このケースでは、配当を受け取る権利は相続人自身に帰属します。そのため、相続税の対象にはならず、相続人の配当所得として所得税の課税対象となります。

相続開始日が配当基準日の翌日〜配当確定日までの場合

この場合、配当金そのものはまだ確定していませんが「将来配当を受け取れる見込みの権利(配当期待権)」があると判断されます。配当期待権は、相続財産として相続税の課税対象になります。

相続開始日が配当確定日の翌日〜配当支払日までの場合

このタイミングでは、配当金の額はすでに確定しており、まだ支払われていない配当金は「未受領配当金」として扱われます。未受領配当金は、相続財産として相続税の課税対象です。

相続開始日が配当支払日の翌日以降の場合

相続開始日が配当支払日の翌日以降であれば、配当金は被相続人の預金等として相続財産に含まれます。配当支払日を迎えたあとに相続が開始した場合、配当金はすでに「支払済み」とみなされます。そのため、被相続人の預金・現金と同様に相続財産として申告します。

配当金領収証を受け取っていても、換金前に亡くなった場合は、配当金は被相続人の預金・現金と同様に相続財産として申告する必要があります。また、この配当金は被相続人に帰属する配当所得となるため、相続人は準確定申告を行う必要があります。

配当基準日や相続開始日のタイミングによって、未受領配当金は相続税の対象になるのか、所得税の対象になるのかが大きく変わります。判断を誤ると、申告漏れや二重課税につながるおそれもあるため注意が必要です。

株主が亡くなり名義変更をしない場合のデメリット

デメリット

株主が亡くなり名義変更をしない場合のデメリットは、以下の通りです。

会社の重要な意思決定に関われなくなる

名義変更をしていない株式については、議決権を行使できなくなります。議決権は、株主総会で会社の経営方針や重要事項を決定するための重要な権利ですが、行使できるのは株主名簿に記載された名義人のみです。

たとえ実質的に相続が完了していたとしても、名義が被相続人のままであれば、会社に対して正式な発言権は持てません。特に非上場企業では、取締役の選任や定款変更など、議決権の行使が事業の方向性に直結する場面も多くあります。議決権を行使できない状態が続くと、他の株主に影響力が偏る可能性もあり、相続人・会社双方にとって大きなリスクとなります。

相続税申告でペナルティを受けやすくなる

名義変更を行わず、相続税の申告内容に漏れがあると、税務署からペナルティを課されるリスクが高まります。主なペナルティは次の通りです。

  • 延滞税
  • 無申告加算税
  • 過少申告加算税
  • 重加算税

死亡届の提出後、税務署は金融機関の情報などから相続財産の有無を把握します。相続開始から6〜8ヵ月後に「相続税申告に関するお尋ね」が届くこともあります。通知が届いた段階ではまだ申告期限内です。期限を過ぎる前に、遺産分割協議と名義変更を進めましょう。

相続人間の話し合いがこじれやすくなる

名義変更を先送りにすると、相続人同士のトラブルにつながることがあります。例えば誰が株式を相続するのか、評価額をどう考えるのかで意見が分かれ、協議が長引くケースも考えられます。

また株式の存在に気づかず、数ヵ月後・数年後に発覚することもあります。その場合、再度遺産分割協議を行う必要があり、結果として相続全体が複雑化してしまうでしょう。

未受領配当金に関するよくある質問

FAQ・Q&A

最後に未受領配当金に関するよくある質問をまとめたので、こちらもぜひ参考にしてください。

未受領配当金の確定申告は必要?

原則として確定申告は不要ですが、申告したほうが有利な場合もあります。株式の配当金は、受け取る際に源泉徴収されているため、亡くなった方の準確定申告や相続人の確定申告は原則不要です。

ただし、確定申告を行うことで配当控除を受けられ、税金が還付される可能性があります。一方で、相続人が申告すると翌年の健康保険料が上がるケースもあるため注意が必要です。

配当金額が少ない場合は、手間に見合わないこともあるでしょう。

なお、相続後の株取引で損失が出ている場合は、申告分離課税を選択して損益通算すれば還付を受けられる可能性があります。

未受領配当金に受け取り期限はある?

期限を過ぎると受け取れなくなる可能性があります。未受領配当金を請求できる権利は、民法上は10年で時効とされています。

ただし多くの会社では、これより短い除斥期間(上場会社では3〜5年が一般的)を独自に定めています。この期間を過ぎると会社は支払いに応じる義務がなくなります。

また「配当金領収証方式」の場合、券面に記載された払渡期限を過ぎると、銀行窓口では受け取れません。ただし、配当金自体の除斥期間内であれば、信託銀行等で手続きを行うことで受け取れるケースもあります。

いずれにしても、手続きを先延ばしにすると、手間が増えるだけでなく、配当金を受け取る権利そのものを失うリスクがあります。相続が発生したら、早めに確認と手続きを進めましょう。

まとめ

株主が亡くなった後に名義変更を行わないと、配当金を受け取れず、議決権も行使できなくなります。さらに、相続税申告でペナルティを受けやすくなるほか、相続人同士のトラブルにつながる恐れもあります。

未受領配当金は、相続開始日と配当時期によって、相続税か所得税のどちらが課税されるかが変わるため、注意が必要です。対応が遅れるほど、手続きは複雑になり、受け取れるはずだった配当金を失うリスクも高まります。

株式の名義変更や未受領配当金の扱いは、相続の中でも特に見落とされやすいポイントです。少しでも不安がある場合は「やさしい相続相談センター」にご相談ください。専門家が状況を丁寧に整理し、名義変更から税務面まで、安心して相続を進められるようサポートいたします。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。