相続税対策にリフォームは効果的?評価額の算出方法や注意点を解説

相続税の負担を少しでも減らすため、節税対策としてリフォームを検討する人は多いです。しかし、工事内容や費用負担の方法を誤ると、建物の評価額の上昇や、贈与税が発生するリスクがあります。本記事では、相続税対策として有効な条件や、注意しておきたいポイントをまとめました。相続税対策の正しい知識を身につけ、無駄な費用負担を抑えるための参考に活用しましょう。
目次
相続税対策にリフォームは効果があるのか

相続税対策としてのリフォームは、注意点を理解したうえで進めると効果的です。以下に該当する人は、相続税対策としてリフォームをするメリットがあります。
- 相続財産が基礎控除を超える人
- 修繕工事を行う予定のある人
通常の維持管理(修繕)とみなされる工事では、支払った費用の分だけ相続財産が減る一方で、建物の評価額は上がりません。
維持管理とみなされる工事の一例は、以下の通りです。
- 壁紙の張り替え
- 外壁の塗装
- トイレや給湯器の交換
上記の工事は、資金(相続財産)を減らしたうえで評価額を据え置けるため、節税効果が高い傾向にあります。一方、建物の資産価値を高めてしまうと評価額に加算されるため、節税効果は薄まる可能性が高いです。
リフォームで相続税対策をする際の注意点

リフォームによる相続税対策は、タイミングや費用負担の方法を誤ると、想定した節税効果を得られません。以下の章では、評価額が加算されるケースや、贈与とみなされるリスクについて解説します。相続税対策で失敗しないためのポイントを、この機会に押さえましょう。
相続開始直前のリフォームは評価額に加算される
相続開始直前にリフォームが完了した場合、償却費を控除した費用の70%相当額が評価額に加算されます。固定資産税評価額の改定は3年に1度ですが、相続直前にかかった費用は、評価額に反映しないといけません。
そのため、親の資金を費用に充てても、節税対策に効果があるかは疑問が残ります。近い将来、相続が発生しそうだからという理由での無理な駆け込みリフォームは避け、他の対策を検討しましょう。
共有名義の場合は持分に応じた負担をする
共有名義の建物が対象となる場合、それぞれの持分に応じた割合での費用負担が必要です。例えば、親子で2分の1ずつ共有している建物に対し、親が費用の全額を支払うと、子の負担すべき金額を肩代わりしたとみなされます。
肩代わりした分は、親から子への援助とみなされ、贈与税の課税対象になります。相続税対策で資金を減らしても、贈与税が発生しては本末転倒です。
共有名義の不動産を扱う人は、施工会社への支払いを誰がいくら行うか、持分比率と照らし合わせて確認しましょう。
大規模な増改築は評価額が上がる
建物の床面積が増えたり、設備の大規模入れ替えを行ったりすると、評価額が上がる可能性が高いです。大規模な増改築は単なる修繕とは異なり、建物の資産価値向上につながると判断されるためです。
評価額が高くなると、相続税の基準となる金額も増えるため、節税効果は限定されます。また、毎年の固定資産税も上がる可能性が高いです。
増築や大規模な改修を検討している人は、節税メリットが薄れる可能性があるため、慎重な判断をおすすめします。
所有者でない人が費用を負担すると贈与税の対象になる
相続税対策として所有者以外の人がリフォーム費用を負担する場合、贈与税がかかる点に注意が必要です。例えば、所有者を子に変更した建物をリフォームする際に、親が費用を肩代わりするケースが該当します。
相続税対策におけるリフォームのポイント
やみくもに節税対策を行うだけでは、大きな効果は期待できません。節税対策の効果を高めるためには、評価額の仕組みや特例制度の理解が必要です。以下の章では、相続税対策に有効なリフォームのポイントを解説します。
資産価値を上げない修繕工事を行う
相続税対策としてリフォームを行う際は、建物の固定資産税評価額が上がらない「修繕工事」を中心に行うことがポイントです。
リフォームには、建物の価値を高める「資本的支出」と、壊れた部分を直して元の状態に戻す「修繕」の2種類があります。
資本的支出とみなされると評価額が上がり、相続税対策の効果が薄れてしまいます。一方、修繕の場合は評価額が据え置かれるため、支出した費用の分だけ純粋な節税が可能です。
先述した通り、一般的に修繕に該当するのは、外壁塗装やクロスの張り替え、雨漏りの修理などが該当します。節税対策を適正に進めたい人は、大規模な改修よりも、傷んだ部分のメンテナンスを優先しましょう。
二世帯住宅にして小規模宅地等の特例を活用する
実家を二世帯住宅に改修した場合でも、基本的には小規模宅地等の特例が適用され、土地の相続税評価額を下げられます。
一定の要件を満たしたうえで親と同居した場合、自宅の敷地(330㎡まで)の評価額が80%減額されます。土地の評価額が高い都市部では、評価額の減少による節税効果に期待できるケースが多いです。
ただし、建物の構造や登記方法が原因で、同居とみなされない場合もあります。特例を活用したうえで節税対策を検討している人は、専門家への相談をおすすめします。
贈与税の非課税枠を活用する
子や孫のリフォーム費用を援助するための「住宅取得等資金贈与の特例」の活用も、節税対策には有効です。親から子へ資金を直接渡すと贈与税がかかりますが、特例を活用すると、一定額まで非課税で援助が可能です。
特例を活用すると、結果として将来の相続税負担を抑えられます。特例の活用で非課税となる限度額は、以下の通りです。
住宅の種類 | 非課税限度額 |
省エネ等住宅 | 1,000万円 |
それ以外の住宅 | 500万円 |
要件に該当すると、数百万円規模の非課税枠を使った節税対策が可能です。子や孫へ援助を検討している場合は、非課税制度の活用をおすすめします。
税理士にシミュレーションを依頼する
相続税対策としてのリフォームを検討する場合は、税理士へのシミュレーションの依頼がおすすめです。リフォームの内容が修繕か資本的支出かを区別するには専門知識が必要であり、誤って判断すると税務調査での指摘につながりかねません。
また、小規模宅地等の特例も要件が複雑で、適用できるかどうかで税額が数百万円単位で変わる可能性もあります。相続税対策を適切に進めて、節税効果を高めたい人は、税理士への依頼をおすすめします。
リフォームした物件の相続税評価額の算出方法

リフォーム後の評価額の算出方法は、工事内容によって異なります。相続税対策にリフォームを検討している人は、以下の章で具体的な評価額の算出方法を確認しましょう。
固定資産税評価額が改定されないケース
一般的な内装リフォームや修繕は、工事直後に固定資産税評価額は改定されません。評価額が改定されない場合は、以下の内容で区別します。
リフォームの内容 | 評価額の算出方法 |
修繕(現状維持) | 従来の固定資産税評価額をそのまま使用 |
資本的支出(資産価値向上) | 従来の評価額に「リフォーム費用から償却費を引いた額の70%」を加算 |
修繕か資本的支出になるかどうかは自分で断定はせず、専門家にアドバイスをもらいましょう。安易に自己判断をしてしまうと、税務調査で申告漏れを指摘される可能性があります。
固定資産税評価額が改定されるケース
床面積が増える増築や、建物の主要構造部をやり直す大規模な改修を行うと、固定資産税評価額が改定されるケースがあります。
例えば、評価額5,000万円の建物を、費用3,000万円(償却費は考慮せず)でリフォームした場合の計算は以下の通りです。
内容 | 金額 |
元の評価額 | 5,000万円 |
加算される評価額 | 3,000万円 × 70% = 2,100万円 |
リフォーム後の相続税評価額 | 7,100万円 |
大規模な改修は、固定資産税評価額が大きく変動します。「相続税対策のため」のリフォームを実施する場合は、節税効果を高めるために税理士への相談を検討しましょう。税理士はあらゆる側面から、適切なアドバイスを考えてくれます。
資本的支出と修繕の区分方法
リフォーム費用を加算するかどうかの判断基準は、工事が「原状回復」か「資産価値の向上」かによって決まります。資本的支出と修繕の主な違いは以下の通りです。
資本的支出 | 修繕 |
部屋の増築 | 外壁の塗り替え |
耐震補強工事 | 壁紙の張り替え |
キッチンのグレードアップ | 古くなったトイレの修繕 |
区分の判定は判断が難しいケースも多いため、安易に「修繕の範囲内だろう」といった決め付けをするのは適切ではありません。リフォームを進める際は、施工業者や税理士など、専門的な知識を持った人の意見を聞きましょう。
よくある質問
相続税対策とリフォームの関係について、多くの人が抱える疑問に回答します。疑問点を解消し、納得のいく相続税対策を進めるための参考にしましょう。
リフォーム中に相続が発生した場合の評価額は?
工事が進んでいる部分にかかった費用の70%相当額で評価されます。リフォーム完成後の固定資産税評価額よりも割高になるケースが多く、相続税の計算上は不利になる傾向があります。
実家のリフォームと建て替えはどちらが節税になる?
一概にどちらが有利とは断定できません。建て替えは評価額を抑えやすい一方で、費用が高くなります。一方、リフォームは内容次第で評価額への影響が異なります。人それぞれ前提条件が違うため、判断に迷う場合は税理士への相談がおすすめです。
リフォームすると固定資産税は必ず上がる?
リフォームしたからといって、固定資産税が必ず上がるわけではありません。壁紙の張り替えや外壁の塗装など、メンテナンス要素が強い場合は評価額が据え置きされる可能性が高いです。
評価額が上がるのは、床面積が増える増築や、柱など建物の骨組みを大きく作り替える工事をした場合です。
賃貸の内装工事をすると評価額はどうなる?
通常の修繕工事や内装リフォームの場合、固定資産税評価額は変わりません。そのため、工事費として使った資金は、そのまま相続財産の圧縮につながります。
ただし、建物の価値を大きく高める大規模な改修を行う場合は、評価額が上がる可能性があるため注意しましょう。
マンションのリフォームでも評価額は上がる?
マンションの場合も戸建て住宅と同様で、大規模な改修を行うと評価額が上がります。ただし、修繕的なリフォームの場合、評価額は据え置きされる可能性が高いです。
相続税対策でリフォームをする際は専門家に相談しよう
相続税対策としてのリフォームは、資産価値を上げない「修繕」の範囲内で行うと高い効果を発揮します。一方で、大規模な増改築による評価額の上昇や、親子間の費用負担による贈与税の発生には注意が必要です。
自己判断で相続税対策を行うと、かえって税負担が増えてしまうケースもあります。確実に相続税対策を行うためには、着工前に税理士へ相談し、シミュレーションの実施をおすすめします。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。

