亡くなった方の銀行口座をそのまま使うのは危険!リスクと対策を解説

亡くなった方の銀行口座をそのまま使うのは危険!リスクと対策を解説

ご家族が亡くなった際、葬儀費用や当面の生活費を支払うため、亡くなった方の銀行口座からお金をおろしたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、亡くなった方の預貯金は相続財産の一部のため、安易に手をつけるのは危険です。

本記事では、なくなった方の口座利用がなぜ危険なのか、そしてリスクを回避するための対策を解説します。

亡くなった方の銀行口座をそのまま使いつづけるリスク

リスク

故人の預貯金は、相続人全員の共有財産です。必要な手続きを経ずに引き出すと、さまざまなトラブルやリスクを招きかねません。まずは、どのようなリスクがあるかを詳しく見ていきましょう。

1. 口座凍結で資金難に陥るリスク

各金融機関は口座名義人の死亡を知った時点ですぐに凍結します。一般的には親族からの連絡によって凍結する場合が多いですが、行政からの通知や訃報欄の情報で凍結されるケースもあります。凍結されると、入出金はもちろん、公共料金やクレジットカードの引き落としもできなくなります。

口座凍結を解除し、預金残高の全額を引き出すためには、遺産の分け方が決まっていることが前提です。つまり、相続の話し合いが終わってからでないと凍結は解除できません。

相続手続きの費用や相続税の支払いを故人の預金でまかなう予定が、口座凍結によって費用の捻出が難しくなるケースもあります。

2. 贈与税の課税リスク

故人の預貯金はすべての相続人の共有財産となります。税務署は、相続人の一人が故人の預貯金を引き出した場合、他のすべての相続人から金銭を受け取ったものとみなします。その結果、金銭を引き出した特定の相続人に対して贈与税が課税されるリスクがあるのです。

他の相続人の合意があったかや、贈与する意思があったかは関係ありません。あくまでも、結果として財産が特定の個人に移転したことが重要です。

もし、相続人同士で預金の引き出しについて争いになり、財産を返還したりした場合は、原則として贈与はなかったものとして処理されます。しかし、一度税務署から指摘を受けると後の手続きが複雑化するため、リスクの高い行為は初めからしないのが望ましいです。

3. 税務調査と追徴課税のリスク

故人の口座からの不自然な出金は、税務調査で疑われやすい項目の一つです。使途が不明確な高額な引き出しなどがあると、税務署から税金逃れのための財産隠しを疑われるリスクが高まります

実際、亡くなった直後の高額出金が「仮装・隠蔽行為」と認定されたケースが数多く存在します。税務署に悪質と判断された場合のペナルティは、本来納めるべき相続税に重加算税(最大40%)が追加され、非常に重いです。

葬儀費用など必要な支払いをした後に、残った金銭を私的に流用していないかなどを厳しくチェックされます。全額の使途を明確に証明できない場合、財産隠しとみなす判断は覆りにくいでしょう。

4. 相続トラブルが生じるリスク

遺言書がない限り、故人の預貯金は、遺産分割が完了するまでは相続人全員のものです。特定の相続人が無断で預金を引き出すのは、他の相続人の権利を侵害する行為にあたります。

他の相続人から刑事上または民事上の責任を問われる可能性があります。刑法上は、財産を不法に取得したとして窃盗罪や横領罪の対象となる場合があります。

親族相盗例に該当して罰せられなかったとしても、民事上の責任からは逃れられません。引き出した金銭の返還(不当利得返還請求)などを求められる可能性があります。

裁判沙汰になると家族関係が修復不能になる可能性もあるため、親しい家族でも無断で財産に手をつけるのは避けましょう。また、遺産分割協議の長期化によって相続税申告が期限内にできない場合、特例が適用できず税負担が過大になるリスクもあります。

5. 相続放棄ができなくなるリスク

故人に多額の借金がある場合、財産も負債も一切引き継がない「相続放棄」の選択肢があります。しかし、故人の預貯金を引き出すと、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができない場合があります。

たとえ少額であっても、故人の口座から金銭を引き出すと相続財産の「処分行為」に該当する可能性が高いです。負債が多い場合や、負債の全貌が分からない場合は、むやみに故人の財産に手をつけるのは避けるのが無難でしょう。

6. 遺産が目減りするリスク

銀行口座の名義変更(払戻し)手続きをせずに放置すると、預金から「未利用口座管理手数料」が徴収される場合があります。さらに、10年以上にわたり放置すると、最終的に休眠預金として国の管理下に置かれ、取り戻す場合の手続きが複雑になります

口座だけでなく相続手続き自体を放置している場合、時間が経つほどに手続きにかかるコストも増大します。相続税申告が必要な場合、申告期限を過ぎると延滞税が発生し、本来払わなくてもよい税金の負担が増えてしまいます。

7. 二次相続や認知症により手続きが複雑化するリスク

銀行口座の名義変更を行わないうちに相続人が亡くなった場合、相続人のさらに相続人となる者も関わることとなり、相続関係が複雑化します。また、相続人が認知症などにより判断能力を失った場合、相続手続きのためには成年後見人の選任が必要になります。

亡くなった直後から相続手続きに着手しないと、さまざまな要因で手続きが複雑になり、かかる時間も労力も増大します。

故人の口座を使っているのはなぜバレる?

贈与が時効前にバレて頭を抱える男性

「少額ならおろしてもバレないだろう」というのはよくある誤解です。故人の口座からの不自然な引き出しが知られるルートは複数あります。

1.銀行が発行する残高証明書や取引履歴

銀行口座は、相続人から死亡の連絡を受けた時点で凍結されるのが一般的です。凍結後、相続手続きのために発行される預金取引履歴には、故人の死亡後に口座から行われたすべての出金が記録されます。

もし誰かが預金を勝手に引き出していた場合、その行為はこの取引履歴に明確に残ってしまいます。この記録がのちの相続トラブルや税務調査の動かぬ証拠となってしまうのです。

2.税務署の職権調査

税務署は、金融機関への職権調査を行う権限をもっています。申告された相続財産に疑義がある場合、過去数年間にわたる預金移動履歴を詳細に調査することがあります。

特に、亡くなった後の不自然な出金がないかは重要なチェック項目です。財産隠しの意図がなくても、税務署から厳しい目を向けられるきっかけとなるため注意しましょう。

3.他の相続人による開示請求

相続税の申告や遺産分割協議を行う際は、亡くなった方のすべての財産を調べて財産目録を作成します。相続人全員の共有財産である以上、誰がいつ、いくら引き出したかは相続人全員が確認する権利をもちます。

故人と同居していた方や生前に財産を管理していた人は、無断で預金を引き出してしまいがちです。しかし、他の相続人に財産の管理を怪しまれ、取引履歴の開示請求をされた場合、隠し通すことはできません。

リスクを避ける相続までの口座管理

銀行口座、金融機関のイメージ

トラブルや税務リスクを回避するためには、故人の口座をそのままにせず、以下のように適切に対応することが重要です。

葬儀費用など緊急で必要な現金を確保する

葬儀会社や病院への高額な支払いは、故人の預貯金をあてにしているというケースも多いでしょう。しかし、故人の口座から勝手に金銭を引き出す行為は、前述の通りさまざまなリスクを伴います。

故人の預金に手を付ける前に、まずは相続人の自己資金で対応することが現実的かつ安全な手段です。やむを得ず故人の資金を利用する場合は、使途を明確に記録し、領収書をすべて保管しておきましょう。相続人同士のトラブルを防ぐため、誰に・いつ・いくら・何のために支払ったかを記録することも重要です。

引き落とし口座を変更する

故人の口座から公共料金、家賃、クレジットカード代金などが引き落とされている場合は、口座凍結の前に口座を変更しましょう。代金の引き落としができないと、最悪の場合は生活インフラが停止するおそれがあります。

故人と同居していた家族がいる場合は、公共料金、インターネット、家賃の支払いは相続手続きの完了を待たずに変更しましょう。故人名義のクレジットカードなど、家族の生活に緊急の影響を及ぼさないものについては、いったん相続人が立て替えるのが一般的です。未払金は故人の負債にあたるため、相続財産から精算できます。

銀行へ死亡の事実を伝えて口座凍結する

当面の生活への影響を最小限に抑えたら、銀行に死亡の連絡をして口座を凍結してもらいましょう。凍結することで、特定の相続人による勝手な引き出しを防ぎ、相続トラブルや税務リスクを低減します。

どうしても必要な場合は仮払い制度を利用する

凍結後に緊急の資金が必要になった場合は仮払い制度(預貯金の払戻し制度)を利用できます。これは遺産分割協議が成立していなくても、相続人が単独で故人の預貯金の一部を引き出すことができる仕組みです。

「預貯金残高 × 1/3 × 引き出す相続人の法定相続分」の金額まで引き出せますが、1つの金融機関につき150万円が上限です。

<ケース1>A銀行の残高600万円、法定相続分が1/2の場合

600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円

上限内なので100万円までが可能です。

<ケース2>B銀行の残高1,500万円、法定相続分が1/2の場合

1,500万円 × 1/3 × 1/2 = 250万円

上限を超えるため、仮払いは150万円までとなります。

この制度は、他の相続人の同意を得ることなく単独で引き出せる点が大きな利点ですが、後のトラブル防止のため他の相続人に伝えておくのが無難です。

銀行口座を解約する

亡くなった方の銀行口座の解約手続きは、遺産分割の方法が決まって初めて行うことができます。手続きのために下記のような書類が必要です。

  • 故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または遺言書)

有効な遺言書がある場合は、原則として遺産分割協議書は不要です。自力での手続きが難しい場合は、行政書士などの専門家に依頼するとスムーズです。

まとめ

故人の銀行口座をそのまま使い続ける行為は、相続トラブルや税務上のリスクに繋がります。少額なら問題にならないだろうというのは危険です。取引履歴や税務署の調査で必ず発覚します。

遺産分割が完了するまでは、故人の預金を引き出さずに済むに越したことはありませんが、どうしても必要な場合は仮払い制度を利用するなど、法に則った手続きを行いましょう。対応に迷う場合は、速やかに税理士などの専門家に相談し、安全かつ納得のいく解決を目指しましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。