山林を相続放棄したい場合の手続きと選択肢について解説

山林を相続放棄したい場合の手続きと選択肢について解説

山林の相続では、固定資産税の負担や境界の不明確さ、管理の難しさから「山林を相続放棄したい」と考える方も少なくありません。山林は不動産として相続財産に含まれ、維持に手間がかかるため、安易に引き継ぐと後に大きな負担となる場合があります。本記事では、山林の相続放棄の基本から具体的な手続き、山林を手放すための代替手段、実務上の注意点までを解説します。山林の扱いに悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

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山林の相続放棄とは

相続と相続放棄

被相続人が所有していた山林を相続したものの、活用予定がなく受け継ぎたくない場合には、相続放棄することも可能です本章では、相続放棄について詳しく解説していきます。

相続放棄について

相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切引き継がないと決める手続きであり、預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や維持管理が必要な資産を含むすべての相続財産を受け取らない意思を示すものです。

この手続きは家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して行い、受理されると、法律上は最初から相続人ではなかったという扱いになります。

参考:相続の放棄の申述 | 裁判所

山林も「相続財産」に含まれるのか

山林は土地や建物と同じ「不動産」の一つであるため、相続財産に含まれます

被相続人が所有していた山林には、固定資産税の支払いや、雑草・倒木・境界問題などの管理義務が発生するため、相続が発生すると、これらの責任が自動的に相続人へ移ります。

参考:No.4105 相続税がかかる財産|国税庁

山林のみを相続放棄できるのか

相続放棄は「相続全体を受け取らない」とする手続きであり、特定の財産だけを切り離して手放す仕組みではないため、山林だけを選んで放棄することはできません

つまり、山林のみを除外して預金や家屋などの他の財産だけを相続するという扱いは認められていません。

「山林のみを手放したい」場合の代替手段

山林だけを放棄することは制度上できませんが、「山林を手放したい」というニーズに応えるための方法はいくつか存在します。相続放棄を選ばずに山林のみを処分したい場合の代替手段について解説します。

遺産分割協議で他の相続人に山林を引き受けてもらう

遺産分割協議で他の相続人に取得してもらう方法があります。相続放棄とは異なり、遺産分割であれば山林のみを他の相続人に相続させることができます。

ただし、遺産分割は相続人全員の合意が前提となるため、事前にしっかり話し合いを行う必要があります。協議がまとまったら、登記名義の変更を行い、正式に所有権を移転する流れになります。

相続土地国庫帰属制度を利用する

「相続土地国庫帰属制度」は、2023年4月に始まった制度で、相続や遺贈で取得した不要な土地を国に引き渡せる仕組みです。ただし、利用条件が厳しく、山林は審査に通りにくいケースが多いので注意しましょう。

利用にあたっては、以下のような制限や負担があります。

  • 崩落の危険がある土地などは、そもそも申請できない場合がある
  • 審査に通っても、10年分の土地管理費に相当する「負担金」が必要となる
  • 地形が複雑・境界不明などの理由で、山林は申請が通りにくいケースが多い

制度を利用するかどうかは土地の状態によって判断が大きく分かれるため、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

参考:相続土地国庫帰属制度について  |  法務省

山林を売却・寄付・贈与する

山林の維持が難しい場合や、相続後に活用する予定がない場合には、売却・寄付・贈与といった形で手放す方法もあります。地元の森林組合や自治体、NPO法人などに相談すれば、引き取り先が見つかるケースもあり、相続人自身が管理し続ける必要がなくなる点がメリットです。

ただし、山林は平地の土地とは異なり、境界が曖昧だったり、地形が複雑だったりするので、対応する際には測量や境界の確認が必要になる場合があります。また、売却価格がつきにくいケースや、引き受け先が限られる地域もあるため、手続きに時間や費用がかかる可能性も念頭に置いておきましょう。

最終的にどの方法が取れるかは山林の状態や地域の事情によって変わるため、現地の不動産業者や専門家に相談し、状況に合った最適な手放し方を検討するのが大切です。

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山林を相続放棄する手続きの流れ

山林を相続放棄するには、どのような流れで手続きを進めれば良いのでしょうか。相続放棄を行う際の基本的な手続きの流れについて解説します。

相続開始を確認し熟慮期間を把握する

相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヵ月以内の「熟慮期間」に家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。この熟慮期間は、相続財産の内容や借金の有無などを確認し、放棄するかどうかを判断するための猶予期間として設けられています。

必要書類を準備する

相続放棄の申立てには、家庭裁判所へ以下の書類を提出します。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の戸籍(除籍)謄本
  • 申述人(相続人)の戸籍謄本

相続放棄の申述書は家庭裁判所の窓口またはウェブサイトから入手できます。不備があると受理が遅れ、手続き全体に影響するため、記載内容や添付資料は事前によく確認しておきましょう。

参考:相続の放棄の申述書(成人) | 裁判所

家庭裁判所に申立てを行う

書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申立てを行います。申立ては本人でも可能ですが、書類作成や添付資料に不安がある場合は、弁護士や司法書士に依頼すると確実です。

申立てが熟慮期間を過ぎてしまうと原則として相続放棄は認められません。ただし、事情によっては期間延長が認められる場合もあるため、早めに状況を確認し手続きを進めましょう。

申立て後には、裁判所から照会書(質問書)が届くため、記載内容を確認し、質問に回答して返送します。

参考:相続の承認又は放棄の期間の伸長 | 裁判所

相続放棄申述受理通知書を受け取る

照会書の回答内容に問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。この通知書を受け取った時点で、相続放棄が正式に成立します。金融機関の手続きや自治体への説明で必要になる場合があるため、大切に保管しておくと安心です。

森林法に基づく届出の要否を確認する

山林を相続した場合、市町村へ「森林の土地の所有者届出書」を提出する義務が生じる場合があるので注意しましょう。ただし、家庭裁判所で相続放棄が受理されれば、そもそも相続人ではなくなるため、こうした届出義務も発生しません。

放棄の時期によっては届出が必要となるケースもあるため、念のため自治体へ確認しておくと確実です。

参考:森林の土地の所有者届出制度  |  林野庁

山林相続放棄における実務上の注意点

山林を相続放棄するときは、一般的な相続放棄の手続きに加えて、山林特有の事情や周囲の相続人への影響にも注意が必要です。トラブルを防ぐために押さえておきたい実務上のポイントについて解説します。

相続人全員の意思と影響を確認する

相続放棄は相続人ごとに個別で行えるものの、放棄をすると次順位の相続人へ権利が移る点に注意が必要です。自分が放棄した結果、兄弟姉妹や甥姪が不要な山林を引き継ぐケースも少なくありません。

想定外の負担を他の親族に押しつけることにならないよう、放棄前に家族間で意向を共有し、十分に話し合っておきましょう。

境界不明や所有者不明地など山林特有の問題に注意する

山林は登記が古いまま放置されている場合が多く、境界や所有者情報が不明確なケースが少なくありません。

このような土地は、放棄手続きに必要な調査や登記情報の確認に時間がかかるため、相続放棄を検討する段階で、境界や所有関係を確認し、必要に応じて測量や登記調査を専門家へ依頼しておくと後のトラブルを防ぎやすいでしょう。

期限を過ぎた場合や書類不備によるリスクを避ける

相続放棄は、相続開始を知った日から3ヵ月以内という厳格な期限があります。この期間を過ぎると原則として放棄が認められず、「相続財産管理人の選任」など別の手続きを取らなければなりません。

また、申述書や照会書の記載ミス・必要書類の不備によって受理が遅れる場合もあるため、期限管理と書類チェックは慎重に行いましょう。

参考:相続財産清算人の選任 | 裁判所

放棄後に一時的な管理義務が残る場合がある

家庭裁判所で相続放棄が受理されても、他に相続人がいない場合や相続財産管理人が未選任の場合、一定の管理義務が残り、山林に関する固定資産税や管理に関する通知が届くケースがあります

こうした負担を避けるためには、早い段階で相続財産管理人の選任を家庭裁判所へ申し立てておくと良いでしょう。管理人が選任されれば、山林の管理や税金対応を含む事務を第三者が担うため、不要な連絡や負担を避けられて安心です。

山林の相続放棄に関してよくある質問

FAQ・Q&A

山林の相続放棄には、一般の相続放棄と同じルールが適用される一方で、特有の注意点もあります。特に多く寄せられる質問を整理したので、判断の参考にしてください。

相続放棄をすると、生命保険の非課税枠は使えなくなりますか?

相続放棄が受理されると、法的に「最初から相続人でなかったもの」と扱われるため、生命保険金の500万円非課税枠を含む、相続人向けの税制優遇は一切利用できません。山林を理由に相続放棄を行う場合でも同様で、預金・家屋などのプラス財産とあわせて非課税枠も放棄する点に注意しましょう。

相続放棄をした後でも、相続財産管理人の手続きは必要ですか?

必ずしも必要ではありませんが、状況によっては相続財産管理人の選任が必要になる場合があります

相続放棄によって相続人の地位は失いますが、他の相続人がいない、または管理人が未選任のまま山林が放置されていると、税金や維持管理に関する通知が届くなど、思わぬ負担が生じる可能性があります。

そのため、負担が生じるリスクを避けたい場合には、家庭裁判所へ相続財産管理人の選任を申し立てておくことをおすすめします。

相続放棄をすると次順位の相続人に迷惑がかかる場合がありますか?

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われ、相続権は次順位の相続人へ移るため、山林のように維持費や管理負担の大きい財産では、次の相続人が責任を引き継ぎ、思わぬ負担を抱えてしまうケースがあります

こうした影響を避けるためにも、放棄を検討する際は事前に家族間で状況を共有し、負担の有無を確認しておくのが重要です。

山林の相続放棄に不安がある方は専門家へ相談を

山林の管理負担や税金の問題から相続放棄を検討しても、山林特有の境界不明や古い登記といった事情により、手続きや放棄後の影響を誤ると次順位への負担移転や相続財産管理人の選任といった新たなリスクを招く場合があります。

こうしたトラブルを避けるためには、早い段階で専門家に相談し、状況に応じた最適な方法を確認しましょう

小谷野税理士法人では、山林を含む不動産相続や相続放棄に精通したスタッフが手続き全体を丁寧にサポートします。不安がある方は、ぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。