小規模宅地等の特例は老人ホーム入居中でも使える?適用条件と注意点を解説

小規模宅地等の特例は老人ホーム入居中でも使える?適用条件と注意点を解説

被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、小規模宅地等の特例は使えるのでしょうか。実は、介護や病気など「やむを得ない事情」があれば特例が認められるケースがあります。本記事では、老人ホーム入居中の特例適用条件や対象施設、認められる事例・認められない事例、申告時の注意点までわかりやすく解説します。老人ホーム入居後の自宅の扱いに迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

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小規模宅地等の特例とは

土地・建物の贈与税

小規模宅地等の特例とは、被相続人が生前に住んでいた自宅や、事業のために使っていた土地について、相続税の評価額を減額できる制度です。

相続税の負担を軽減することで、遺族が住み慣れた自宅や土地を手放さずに済むよう配慮されています。

ただし、形式的に所有していただけで実際に住んでいなかった場合など、被相続人の「居住実態」が確認できないケースでは特例の対象外となります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

老人ホーム入居と「小規模宅地等の特例」の関係

では、被相続人が老人ホームに入居している場合、小規模宅地等の特例は使えないのでしょうか。制度改正の背景や適用の条件など、老人ホーム入居と特例の関係について解説します。

制度改正により老人ホーム入居中も特例の対象になった

前述したように、小規模宅地等の特例は、被相続人が「居住していた自宅」を前提とした制度であるため、老人ホームに入居して自宅を離れている場合、「居住していない」と判断され、特例の対象外とされていました。

しかし、介護や病気などでやむを得ず自宅を離れるケースが増えたことから、平成26年1月1日以降の相続から制度が改正され、一定の要件を満たせば、老人ホーム入居中でも自宅を「居住用」とみなして特例を適用できるようになりました。

要介護・要支援などの認定が必要

この特例を受けるためには、被相続人が介護保険制度上の「要介護」または「要支援」認定を受けている必要があります。

自宅での生活が困難となり、介護のためにやむを得ず施設へ入居した場合に限られ、利便性や生活環境の変更といった理由だけでは対象外です。

参考:要介護認定の仕組みと手順  |  厚生労働省

対象となる老人ホームの種類

特例の対象となるのは、介護保険法に基づく以下の介護施設に限定されます

施設名

概要

特別養護老人ホーム(特養)

介護が常時必要で自宅生活が難しい高齢者が入居する施設

介護付き有料老人ホーム

介護サービスが常時提供される有料の老人ホーム

認知症グループホーム

認知症の高齢者が共同生活を送りながら介護を受ける施設

入居先がどの施設に該当するか、契約書や施設の種別で確認しましょう。

参考:介護保険3施設の概要  |  厚生労働省

自宅の利用状況

被相続人が老人ホームへ入居した後、自宅をどのように扱っていたかによって、小規模宅地等の特例が使えるかどうかが決まります。

入居後に自宅を他人へ貸したり、事業用として使用していた場合は、「居住の継続」がないと判断され、特例の対象外となります。

一方で、入居後も自宅をそのまま維持し、誰にも貸していなければ、「居住の意思が残っていた」とみなされ、特例が認められる可能性があります。判断のポイントとなるのは、以下のような点です。

  • 固定資産税を引き続き支払っていたか
  • 登記上や住民票の住所が自宅のままかどうか

これらの要素から、被相続人が自宅を生活の拠点として維持していたかどうかが判断されます。

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小規模宅地等の特例が認められるケース

家・土地の相続・贈与

被相続人が老人ホームに入居しても、小規模宅地等の特例が認められるのはどのような場合でしょうか。入居後でも特例の対象となる主なケースについて解説します。

配偶者が自宅に住み続けている

被相続人が老人ホームに入居しても、配偶者が引き続き自宅に住んでいた場合は、小規模宅地等の特例が認められます。例えば、夫が介護のために特別養護老人ホームへ入居し、妻が自宅にそのまま住み続けていた場合などが該当します。

配偶者の居住によって生活拠点が維持されている場合は、居住用宅地としての実態が保たれていると判断されます。

空き家を「家なき子」が相続した場合

被相続人が老人ホーム入居後、自宅が空き家になっていた場合でも、相続人が自分名義の家を持たない場合は、特例が認められる可能性があります。これは「家なき子特例」と呼ばれるもので、持ち家のない相続人が親などの自宅を相続した際に、居住用宅地として評価減を受けられる仕組みです

例えば、子が結婚後に賃貸住宅で暮らしていて、親が老人ホーム入居後にその自宅を相続した場合、自分名義の家を持っていなければ特例の対象となる可能性があります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

同居していた親族がそのまま相続した

被相続人と生前から同居していた親族がそのまま自宅を相続する場合も、特例の適用が認められでしょう。例えば、長男夫婦が親と同居しており、親が介護施設に入居した後も同じ家に住み続けていた場合、「居住の継続」が確認できるため特例の対象になります。

被相続人と同居していた親族が生活拠点を共有していた事実が、判断を左右するポイントとなります。

小規模宅地等の特例が認められないケース

では逆に、被相続人が老人ホームへ入居した後に小規模宅地等の特例が認められないのはどのような場合でしょうか。特例の対象外と判断される主なケースについて解説します。

別生計の親族が新たに住み始めた

被相続人が老人ホーム入居後、別生計の子や親族が新たに自宅へ住み始めた場合は、特例の対象外となります。例えば、親が老人ホーム入居後、別の子がその家に引っ越して住み始めた場合、被相続人本人の生活拠点が失われていると判断され、「居住の継続」が認められません。

自宅を第三者に貸した

老人ホーム入居後に自宅を他人へ貸していた場合も、小規模宅地等の特例は適用されません

例えば、空き家の管理費をまかなうために賃貸に出したケースでは、他人の居住用に転用されたとみなされるため、被相続人の居住用宅地として扱われなくなります。

ただし、貸付によって事業用資産として扱われる場合は、特定居住用宅地等としてではなく、「貸付事業用宅地等」として50%減額の対象となる場合があります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

生計を共にしていなかった持ち家に住んでいる親族が相続した

被相続人と生前に生計を共にしていなかった持ち家に住んでいる親族が自宅を相続した場合も、特例は認められません

同じ親族であっても、生活基盤を共有していなかった場合には特例が適用されない点に注意しましょう。

老人ホーム入居時の小規模宅地等の特例申告手続き

被相続人が老人ホームに入居していた場合、小規模宅地等の特例を受けるにはどのような手続きが必要なのでしょうか。申告手続きの流れについて、順を追って解説します。

必要書類を準備する

被相続人が老人ホームへ入居していた場合に小規模宅地等の特例を受けるには、入居の経緯や介護状況を証明する書類が必要です。相続税申告に必要な書類とは別に求められるもので、以下の書類を揃える必要があります。

  • 被相続人の戸籍の附票の写し(死亡日以降の住所履歴確認用)
  • 介護保険被保険者証または要介護・要支援認定証の写し
  • 老人ホームの入所契約書や施設の所在地がわかる書類

相続税申告書に特例適用を記載する

老人ホーム入居中でも小規模宅地等の特例を受ける場合は、当初申告で明確に適用意思を示す必要があります。

具体的には、「第11表(小規模宅地等の特例の計算書)」に対象宅地の所在地・区分・地目・面積・評価額・適用面積・減額後の金額を記載し、どの宅地に特例を使うかを明示します。その計算結果を踏まえて、第1表など申告書本体の課税価格・税額にも反映させます。

最初の相続税申告の時点で小規模宅地等の特例を申告しておかないと、後から修正申告などで追加申請できないので注意しましょう。

参考:小規模宅地等についての課税価格の計算明細書 第 11 ・ 11 の 2 表 の 付 表 1 ︵ 令 和 6 年  |  国税庁

相続税の申告期限内に申告する

小規模宅地等の特例を受けるには、相続税の申告期限内(被相続人の死亡翌日から10ヵ月以内)に手続きする必要があります。この期限を過ぎてしまうと、原則として特例は適用できないので注意しましょう。

特に、介護保険証や老人ホームの入所契約書などの書類は発行に時間がかかる場合が多いため、早めに書類を集めて内容を確認しておくのが大切です。

参考:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

老人ホーム入居中に特例を申告する際の注意点

老人ホーム入居中に小規模宅地等の特例を申告する際、どのような点に注意すべきでしょうか。特例が否認されないために確認しておくべき重要なポイントについて解説します。

居住実態を確認しておく

被相続人が実際に住んでいた証拠を確認しましょう。小規模宅地等の特例は被相続人が実際に住んでいた自宅が対象のため、老人ホーム入居後に他人へ貸したり別の家族が住み始めた場合は「居住していなかった」と判断され適用されない可能性があります。

入居後の自宅がどのように使われていたかを正確に把握し、居住実態が維持されていた事実を証明できるよう準備しておきましょう。

要介護・要支援認定を受けているか確認する

介護認定の有無を確認しましょう。特例を受けるには、被相続人が介護保険の「要介護」または「要支援」の認定を受けている必要があります。

認定がないと、老人ホーム入居が「介護目的ではない」と判断され、特例が認められないため、認定証をきちんと保管しておきましょう。

添付書類の不備がないようにする

提出書類のミスや抜け漏れを防ぎましょう。申告時には、戸籍の附票、介護認定証、老人ホームの入所契約書など、居住実態や介護の事情を証明できる書類が必要です。

書類が足りないと、特例が否認される可能性もあるため、提出前に税理士などに確認してもらうのが安心でしょう。

小規模宅地等の特例と老人ホーム入居に関する相談は専門家へ

老人ホーム入居中の宅地は、介護認定の有無や施設の種類、自宅の利用状況などによって特例の可否が大きく変わります。条件を誤ると、特例が適用されず相続税が数百万円単位で増えるケースもあります。

こうした判断は複雑で、税制改正や運用の変化を踏まえた正確な対応が求められるため、適用条件を誤らないよう早めに専門家へ相談するのが賢明でしょう

小谷野税理士法人では、最新の税法や判例を踏まえ、老人ホーム入居時の小規模宅地等の特例に関する適用可否の判断から申告手続きまで丁寧にサポートしています。老人ホーム入居後の自宅の扱いに不安がある方は、お気軽に小谷野税理士法人にご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。