会社の相続で相続税が払えないとどうなる?リスクと対処法について解説

会社の相続で相続税が払えないとどうなる?リスクと対処法について解説

会社を相続する際、「相続税が払えないとどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。中小企業では自社株式の評価が高額になりやすく、納税資金を準備できないまま相続が始まるケースもあります。本記事では、会社の相続税が払えない場合に起こり得る問題と有効な対処法をわかりやすく解説します。相続や事業承継に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

複雑な相続手続き、すべておまかせください!

戸籍の取り寄せから財産評価、遺産分割協議書の作成、税務申告までワンストップで代行します。

目次

会社の相続で相続税が払えないケース

税金の計算

中小企業の事業承継では、思わぬ理由から納税資金が不足しやすく、後継者の負担が大きくなる場合があります。会社の相続で相続税が払えなくなる主なケースを紹介します。

相続税対策が不十分だったため

本来は生前に納税資金を備えておく必要がありますが、対策が不十分なまま相続が始まると、手元資金が少ない状態で高額な相続税だけが発生してしまいます。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内と短いため、その間に必要な融資を受けるのは容易ではありません。

結果として、後継者が納税資金の確保に追われ、会社の資金繰りや経営にまで影響が及ぶ可能性があります。

参考:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

自社株式の評価額が予想以上に高額だったため

中小企業の株価は、利益や保有資産の状況が直接評価額に反映されるため、経営者の想定以上に高く算定される場合があります。

相続税評価では以下2つの方式が用いられますが、どちらの方式も、会社の財務状況をそのまま数字に落とし込むため、内部留保や含み資産が増えていれば、評価額も自動的に上昇します。

評価方式

評価の考え方

類似業種比準価額方式

同業他社の利益・配当・純資産を指標に株価を算定する

純資産価額方式

会社の保有資産と負債を基に実質的な財産価値で評価する

その結果、思いのほか株価が高くなり、相続税だけが過大になるケースが少なくありません。

参考:No.4638 取引相場のない株式の評価|国税庁

先代の個人資産が多く納税資金が足りないため

相続税は会社の株式だけでなく、先代個人が持つ不動産や預貯金にも課税されます。

特に土地は評価額が高くなりやすいため、実際の収入が多くなくても相続税だけが重くなる場合があります。土地の評価は時価ではなく国税庁の算定基準で決まるため、実態と評価額が一致しないケースが多いです。

その結果、「現金収入は少ないのに評価額だけ高い」という状況が生じやすく、納税資金が不足する原因となります。

参考:路線価|国税庁

参考:No.4606 倍率方式による土地の評価|国税庁

財産のほとんどが自社株式など換金性の低い資産だったため

中小企業では、相続財産のほとんどが自社株式など現金化が難しい資産で構成されているケースが多いです。株式を売れば現金化できますが、第三者に売ると経営権が移ってしまうため、簡単に処分できません。

このように、財産の構造自体が現金を生みにくく、対策をしていても相続税の納税資金を用意しづらいという根本的な問題が生じます。

複雑な相続手続き、すべておまかせください!

戸籍の取り寄せから財産評価、遺産分割協議書の作成、税務申告までワンストップで代行します。

会社の相続で相続税が払えないときに取れる主な対処法

税金

では、相続税が払えない場合、どのような方法で資金を用意すればよいのでしょうか。相続税の支払いが難しいときに検討できる主な対処法を紹介します。

会社に自社株式を売却して資金を確保する

後継者が相続した自社株式を会社が買い取り、その代金を納税資金に充てる方法です。会社が自己株式として取得する仕組みを利用するため、後継者は株式をスムーズに現金化できます。経営権を外部に渡さず資金を作れる点がメリットです。

個人資産を売却して納税資金を確保する

不動産・預貯金・有価証券など、自社株以外の個人資産を売却し、現金を作って納税に充てる方法です。換金しやすい資産があれば、比較的取り組みやすい手段で、まとまった資金を短期間で用意できます。

銀行借入を利用して資金を準備する

金融機関から借り入れて相続税を支払う方法です。資産を売却せずに納税できるため、会社の事業運営に影響を与えずに資金を確保できます。返済計画を立てながら納税できる点が特徴です。

納税猶予・延納制度を利用する

相続税を一括で支払うのが難しい場合、分割で納付できる制度です。延納が認められると、定められた期間にわたり相続税を年単位で分割して納めることができます。

参考:No.4211 相続税の延納|国税庁

物納制度を利用して資産で納税する

現金がどうしても用意できない場合、相続した土地や建物などの財産そのものを国に納めて納税する制度です。現金化が難しい資産を保有している場合に選択肢となります。

参考:No.4214 相続税の物納|国税庁

会社の相続で相続税が払えない事態を防ぐための事前対策

株の評価額によって発生する多額な税金

会社の相続で相続税が払えなくなる事態は、生前の備えが不足しているほど起こりやすく、相続発生後では対応できる選択肢も限られます。将来の負担を軽減するために押さえておきたい事前対策について解説します。

事業承継税制を活用して自社株の相続税負担を抑える

「事業承継税制」を利用すると、後継者が引き継ぐ自社株式にかかる相続税や贈与税を猶予でき、一定の条件を満たせば最終的に免除される可能性があります

あらかじめ承継計画を立てておけば、相続時にまとまった現金を準備する必要がなくなり、納税資金不足のリスクを大幅に軽減できます。

参考:法人版事業承継税制(特例措置) | 中小企業庁

自社株式の評価額が上がりすぎないように対策しておく

相続時の評価額が過度に上昇すると相続税負担が一気に増えるため、評価が高くなりすぎないよう事前に管理しておくのが重要です。

自社株式の評価は利益や保有資産の増加に敏感に反映されるため、内部留保の積み上がりや資産構成がどのように影響するかを把握し、評価基準日前に適切な見直しを行いましょう

生命保険を活用して納税資金を確保しておく

相続税を現金で支払うための有効な準備策として、生命保険で納税資金を確保しておく方法があります。

経営者があらかじめ生命保険に加入しておけば、死亡時にまとまった保険金を受け取れるため、換金しにくい自社株式を多く保有している場合でも、納税に必要な現金を安定的に用意できます。

生前贈与などで相続財産を計画的に減らしておく

将来の相続税負担を抑えるためには、生前の段階で財産を計画的に移しておくのも有効です。

贈与税の非課税枠などを活用すれば、毎年少しずつ財産を移転できるため、無理なく相続財産を圧縮できます。これにより、相続発生時の課税対象額を減らし、納税資金の準備もしやすくなるでしょう。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

会社の相続で相続税対策を進める際の注意点

会社の相続では、対策を進める際に思わぬ制度上の制約や税負担の増加が生じる場合があります。相続税対策を検討する際に押さえておきたい重要な注意点について解説します。

自己株式の買戻しには会社法・税務面の制約がある

自己株式の買戻しは制度上の制約を理解したうえで進めましょう。会社が後継者から自社株式を買い取る方法は納税資金を確保できる選択肢ですが、取得株数の上限や株主総会の決議など、会社法上の手続きが細かく定められています。

また、会社に十分な資金がなければ実施できず、取得方法によっては後継者に所得税や贈与税がかかる場合もあります。制度面を踏まえ、慎重に検討しましょう。

資産売却による納税資金の確保には追加の税負担が生じる場合がある

資産売却で資金を確保する場合は、税負担や価格変動に注意しましょう。不動産や有価証券の売却は現金化しやすい反面、売却益が出れば譲渡所得税などの追加負担が生じます。また、相続直後は時間が限られ、希望額で売れず資金が不足するリスクもあります。

売却を選択する際には、税金と市場価格の両方を見込んで判断しましょう。

参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

延納や物納は要件が厳しく誰でも使える制度ではない

延納・物納制度は利用条件の厳しさを理解しておきましょう。相続税を一括で納められない場合に利用できる延納・物納は、担保の提供や利子税の負担など、申請要件が細かく厳格に決められています。

特に物納は延納が利用できない場合に限られ、納められる資産にも優先順位があり、自社株式が必ず認められるわけではありません。

制度を過度に期待せず、実際の運用条件を把握しておくのが重要です。

利益の積み上がりや資産の取得で株価が想定以上に上昇する場合がある

株価は業績や資産の変動で大きく動くことを把握しておきましょう

内部留保の増加や含み益のある資産取得が続くと、自社株式の相続税評価額が上昇します。事前対策を行っていても、評価基準日付近の利益の動きによって株価が想定外に高くなり、結果として相続税が増えるケースもあるでしょう。

相続時の株価変動を踏まえ、定期的な確認と管理を行うのが重要です。

会社の相続で相続税が払えないときによくある質問

会社を引き継ぐ際には、相続税や株式の扱いなど多くの疑問が生じやすく、不安を抱える後継者も少なくありません。以下によくある質問をまとめましたので、相続に向けた理解を深める際の参考にしてください。

相続税の支払い期限を過ぎたらどうなりますか?

支払い期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが発生します。相続税は相続開始の翌日から10ヵ月以内に申告・納付する必要があり、期限を過ぎれば延滞税が加算され、状況によって追加の負担が発生する可能性もあります

納付が難しいと感じた段階で、延納などの手続きを早めに検討するのが重要です。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

自社株式の相続で贈与税や所得税はかかりますか?

相続後の株式の扱いによって、相続税以外に贈与税や所得税がかかる場合があります。相続自体は相続税の対象ですが、その後に株式を売却したり、会社が株式を買い取る方法を選ぶと、取扱いによって別の税区分が適用される場合があります。

どの税が関係するかは株式の扱い方によって変わるため、手続き前に確認しておきましょう。

相続した自社株式はすぐに売却しても大丈夫ですか?

売却は可能ですが、会社の経営に影響する可能性があるので注意しましょう。自社株式は相続後すぐ売却できますが、売却後の株主構成によって経営権や意思決定に変化が生じる場合があります

特に中小企業では外部株主が増えるリスクが大きいため、納税目的だけで判断せず、会社運営全体を踏まえた慎重な判断が必要です。

会社の相続で相続税の支払いに不安がある場合は専門家へ相談

会社の相続では、自社株式の評価や財産の持ち方が税額に大きく影響するため、準備不足のまま相続を迎えると納税資金が不足して経営が不安定になる恐れがあります。

こうしたリスクを避けるためには、相続税と事業承継に精通した専門家のサポートが不可欠です

小谷野税理士法人では、会社の状況に応じた株価評価、納税資金対策、事業承継プランニングまで総合的に支援しています。会社の相続税に不安がある場合は、迷わず小谷野税理士法人にご相談ください。

複雑な相続手続き、すべてお任せください

戸籍収集から財産評価、遺産分割協議書の作成、税務申告までワンストップで代行。あなたは故人を偲ぶ時間に集中してください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。