家族信託で後悔・失敗する原因と防止策

家族信託で後悔・失敗する原因と防止策

家族信託は、自分自身で財産管理ができなくなった場合に備えて信頼できる家族に財産を託す契約です。しかし、実際には思っていた通りにならずに後悔する方も多いです。

本記事では、税理士が家族信託の失敗・後悔事例をもとに、根本原因と具体的な回避策を分かりやすく解説します。

家族信託で後悔する3つの根本原因

相続税の申告に間に合わない

家族信託で後悔する原因で多いのが、準備段階での思い違いや理解不足にある場合です。特に目的の共有不足受託者の選定ミス税務リスクの誤認の3点は失敗を招く三大要因であると言えます。まずは3つの要因について詳しく解説します。

1.信託目的の共有不足

何のために信託契約を結ぶのかを家族全員が理解していなければ、どれほど法的に正しい設計をしてもトラブルや不信感を招く原因となります。

例えば、財産を託した親と託された子どもの認識がくい違う場合がトラブルの典型例です。親は、自身の介護資金の確保と相続での円滑な財産承継を両立するために、子どもと信託契約を結んだつもりだとします。しかし、財産を託された子どもは財産を好きに使ってよいと誤解し、信託目的に反する行動をとってしまう場合があります。

親だけでなく他の兄弟からも「不公平だ」「財産を私物化している」といった不信感を買い、家族関係が悪化するおそれがあります。

信託契約書の文面だけでは、家族の想いや意図までは伝わりません。設計前に家族会議を開き、何のための信託なのか、将来的に誰にどのように財産を引き継ぎたいのかを確認しましょう。

2.受託者の責任の理解不足

家族信託では、受託者(主に子ども)が親의財産を管理・運用する立場になります。しかし、家族だからといって必ずしも受託者の責任を果たせるとは限りません。

受託者には、信託法で定められた厳格な義務があります。財産を私的に使えないことはもちろん、収支の記録や信託財産から生じる所得の税務申告などもすべて受託者の仕事です。場合によっては不動産管理・賃貸契約なども任されます。

特に税務面では、信託財産から生じる所得の申告漏れや経費処理の誤りが発生しやすく、適切に管理しなければ追徴課税などのリスクがあります。

受託者が事務負担の重さや責任の大きさに耐えかねて「引き受けなければよかった」と後悔するケースも多いのです。同時に、受託者がうまく管理できないのを見て、任せた親や家族が後悔することもあります。

信託を設計する際は、受託者の事務能力・居住地・時間的余裕などを考慮した人選が求められます。また、必要に応じて税理士などの専門家のサポートを受けられる体制を整えましょう。

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3.信託のリスクの認識不足

家族信託では、信託の対象にできない財産(例:農地、年金受給権)や、信託によって税務上の特例が使えなくなる財産が存在します。リスクを理解せずに契約を進めると、想定外の税負担や手続き上のトラブルに直面するおそれがあります。

例えば、自宅不動産を信託した場合、信託後の売却時に「居住用財産を売却した場合の特例」が使えないケースがあります。要件を満たすと譲渡所得から3,000万円が控除される制度です。控除を適用した場合と比べて課税対象となる所得額が数千万円単位で変わる可能性があり、想定外の大きな税負担となりかねません。

信託契約の前に税理士によるシミュレーションを行い、税務上のリスクを確認しておくことが重要です。

家族信託の後悔事例と防止策

家族信託で後悔してしまう背景には、運用段階でのトラブルがあります。ここでは、実際によくある失敗事例とトラブル防止策を分かりやすく解説します。

【受託者選定】信頼していた家族が原因で後悔するケース

受託者が信頼していた家族であるにもかかわらず、管理上の問題や不正行為で後悔するケースです。例えば以下のような事例があります。

  • 受託者が信託口座の資金を私的に使い込んだ
  • 遠方に居住する受託者が不動産の適切な修繕を行わず、価値が低下した
  • 受託者も高齢や病気になり、信託が機能しなくなってしまった

受託者の要因で信託が機能不全に陥るのを防ぐには、第二受託者や信託監督人の設置が効果的です。税理士や司法書士などの専門家を信託監督人とすることで、金銭管理のチェックや定期報告を第三者が担保できます。

また、受託者が職務を継続できない場合のルールを契約書上に定めておくことで、運用リスクを抑えられます。

【財産管理・運用】信託契約が足かせとなって後悔するケース

家族信託は、柔軟な設計ができることが魅力です。しかし、契約内容によって財産の運用・処分が制限されて後悔する事例もあります。例えば以下のようなケースです。

  • 自宅を売却して施設入居費用に充てたいが、受益者の同意が得られない
  • 信託財産である不動産に担保設定することを受益者が拒み、リフォーム資金が調達できない

売却・担保設定・再投資などの柔軟な処分権限を受託者にもたせる場合、契約で明示しておくことが大切です。さらに、ライフステージに合わせて契約を見直せるように、「変更条項」を設けておくとより柔軟な対応ができます。専門家に依頼して個別の事情に合わせた信託契約書を作成してもらうとトラブル防止に効果的です。

【法律・税務】専門的な問題で後悔するケース

法務や税務の誤認によって、思わぬコストが発生する以下のようなケースもあります。

  • 信託不動産を受託者名義に変更し忘れ、売却などの処分がすぐにできなかった
  • 信託財産から発生した賃料収入を申告し忘れ、数年後に重い追徴課税を課された
  • 相続税の「小規模宅地の特例」が適用できず、税負担が重くなった

信託には税務や登記など多岐にわたる専門知識が絡みます。税理士・司法書士・弁護士などの専門家との連携が、家族信託を安全に運用する鍵です。

【家族関係】親族間の不公平感や争いで後悔するケース

制度設計が適切でも、家族関係のバランスが崩れると信託は破綻します。信託の不公平感は、将来の相続トラブルにも繋がりやすいです。例えば以下のようなケースがあります。

  • 同居して介護を担っていた長女だけが受益者となり、兄弟から不満が噴出した
  • 受託者が他の家族に運用状況を報告しないため、財産の使い込みを疑われた

将来のトラブルを防ぐためにも、契約前後を通じて家族全員への情報開示と説明を徹底しましょう。受託者が定期的に状況を報告して透明性を保つことが信頼維持につながります。家族信託は家族の合意と信頼で成り立つという意識が大切です。

家族信託で後悔したら信託契約の見直しや解約の検討も

遺言書を書くイメージ

家族信託で「失敗したかも」と感じても、決して手遅れではありません。問題が深刻化している場合は、信託契約の一部見直しや契約終了(解約)を検討する選択肢があります。

たとえば、受託者の高齢化や家族構成の変化により、当初の契約内容が合わなくなった場合、受託者の交代や信託目的の変更が可能です。

また、信託がかえって家族関係を悪化させている場合には、信託終了条項に基づいて契約を終了することも可能です。

ただし契約を終了する際は、財産の帰属先や税務処理に注意が必要です。安易な解約は思わぬ大きな税負担を招くリスクがあるため、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談し、慎重に進めましょう。

まとめ

家族信託の失敗・後悔事例の多くは、家族間の情報共有不足や税務リスクの誤認に起因します。家族の安心のためには、法的な設計はもちろん、相続税・贈与税の視点からの専門的なシミュレーションが必要です。すでに信託契約を結んでいる場合も、家族の状況に合わせて定期的な見直しをしましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
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