準確定申告とは?誰がやる?必要な人や申告方法を解説

準確定申告とは?誰がやる?必要な人や申告方法を解説

亡くなった方の確定申告をすることを準確定申告といいます。本記事では、準確定申告が必要な人や具体的な申告方法について解説しています。

また、申告の際の注意点についても併せて紹介しています。ご自身のケースが準確定申告を要するのか知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

準確定申告とは?いつまで申告するの?

準確定申告とは、亡くなった方の所得および所得税額を申告することを指します。対象期間は1月1日から死亡した日までです。この制度は亡くなった方の所得税を納めることを目的としていますが、場合によっては還付金を受け取れるケースもあります。

準確定申告が必要なケース

準確定申告のイメージ

準確定申告は、必ずしも必要というわけではありません。申告が必要となるのは、亡くなった方に収入があった場合と還付金を受け取れる場合です。

以下では、より詳しく申告が必要なケースについて解説していきます。

亡くなった方に収入がある場合

原則として、確定申告の必要な雇用形態で働いていた方は申告が必要です。具体的には、個人事業主、給与所得が2,000万円を超える方、掛け持ちで働いている方などが該当します。勤め先で年末調整を行っている場合、申告は原則不要です。

ただし、勤め先で年末調整を行っていても副業所得が20万円超ある場合は申告をしなくてはなりません。また、公的年金を年間400万円超受け取っていた方も必要となります。

還付金が受け取れる場合

源泉徴収などにより多く税金を納めている場合や医療費控除などの所得控除が利用できる場合は、還付金を受け取れる可能性があります。所得控除はのべ15種類あり、それぞれ適用条件が異なります。

特に代表的なものとしては、下記の控除が挙げられます。

  • 医療費控除
  • 配偶者控除
  • 生命保険料控除
  • 社会保険料控除

原則として、上記のような控除を利用する場合は、亡くなった日までに支払った金額が対象となります。利用できる控除が分からない場合は、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

準確定申告は誰が行なう?

準確定申告が必要なケースに該当する場合、誰が手続きを行えばよいのでしょうか。以下では、亡くなった方の代わりに申告の義務を負う人と、義務が免除されるケースについて解説していきます。

原則としてすべての相続人が申告の義務を負う

基本的に、準確定申告の義務はすべての相続人に対して課せられます。ただし、手続き自体は相続人全員で行う必要はなく、申告書に全員が連署するだけで問題ありません。申告後に納税が必要となった場合には、相続した財産の割合に応じて所得税を納めましょう。

相続放棄をした相続人の取り扱いは?

前提として、相続放棄をした人は申告の義務も発生した所得税を納める義務もありません。

そもそも、相続放棄とは相続に関するすべての権利を放棄することを指します。そのため、相続放棄の手続きをした時点で相続人ではなくなるのです。相続人の中に相続放棄をした人がいれば、その方に連署をしてもらう必要はありません。

準確定申告の準備と手続き

準確定申告を行う際には、必要書類を集めたうえで申告書を作成しなければなりません。以下では、準確定申告の準備や手続きについてさらに詳しく解説していきます。

必要書類の収集

準確定申告には、支払調書や源泉徴収票、年金の支払通知書といった収入を証明する書類が必要となります。また、医療費控除を受ける場合は医療費明細書、生命保険料控除を受ける場合は保険料の控除証明書が必要です。

具体的な必要書類および入手方法は以下の表をご参照ください。

必要書類

入手方法

確定申告書

国税庁HP・税務署

所得税及び復興特別所得税の
確定申告書付表

国税庁HP・税務署

委任状

国税庁HP

支払調書または
源泉徴収票等所得の証明書

勤務先または支払先から取り寄せ

年金の支払通知書

日本年金機構・共済組合
※公的年金は年金支払通知書が郵送される

医療費明細書

支払い時に入手。
保管していない場合は再発行依頼またはマイナポータルにて入手。

保険料の控除証明書

生命保険会社・共済組合など

参考:申告所得税関係|国税庁

参考:申請・届出様式|日本年金機構

申告書の作成

申告書の作成では、下記の点に注意して作成しましょう。

  • 申告書の左に準確定と記載する
  • 欄外に亡くなった日、相続人の個人番号と氏名を記載する
  • 個人情報欄に亡くなった方の情報を記載する
  • 1人で相続する場合は、個人情報欄に相続人の情報を記載する

上記の情報を記載したら、申告書に沿って所得額や控除額を記載しましょう。申告書の作成が完了したら、準確定申告の付表の作成に移ります。本書類にはすべての相続人の所得税額や個人番号等の情報を記載します。

なお、付表にはすべての相続人の情報が必要となるため予め準備しておくとスムーズに作成できるでしょう。

申告書の提出及び期限

作成が完了した申告書は、亡くなった方の住所を管轄する税務署に提出します。紙の申告書の他にも、e-Taxを利用した電子申告も可能です。

申告には期限があり、原則として亡くなったことを把握してから4ヵ月以内に申告を終わらせる必要があります。期限を過ぎてしまった場合はペナルティが課される可能性があるため、必ず期限内に行いましょう。

期限を過ぎた場合のリスク

リスク

準確定申告を期限内に行えなかった場合は、ペナルティとして無申告加算税が課されます。また、期限内に納税できなかった場合は延滞税もかかってしまいます。無申告加算税の税率は、申告をしたタイミングによって以下のように設定されています。

所得税額のうち
50万円以下の部分

所得税額のうち
50万円を超える部分

税務調査通知を受けてか調査実施までに自ら申告した場合

10%

15%

税務調査後に申告した場合

15%

20%

期限の翌日から税務調査通知を受けるまでに自ら申告した場合

5%

5%

例えば200万円の所得税の申告を忘れており、税務調査通知までに申告を行った場合の無申告加算税は次のように計算します。

50万円×5%=2万5,000円

150万円×5%=7万5,000円

2万5,000円+7万5,000円=10万円

つまり、上記のケースでは本来の所得税額に加えて10万円の追徴課税を受けることになるのです。申告期限に間に合わないということは、納税も期限内に行えません。そのため、上記の無申告加算税に加えて延滞税も発生します。

申告を忘れてしまった場合の対応

相続の手続きなどで慌ただしく、うっかり準確定申告を忘れてしまっていたというケースは珍しくありません。このような場合は、即座に期限後申告の手続きを行わなくてはなりません。期日を過ぎれば過ぎるほど追徴課税の税率は高くなるため、できるだけ早く申告を行いましょう。

また、申告期限を把握していても期限内に間に合いそうにないというケースもあるでしょう。このような場合は一旦申告を行い、正しい内容を把握できてから修正申告をするという方法もあります。

還付金の申告は相続の発生を知ってから5年以内が期日となっているため、まずは所得税の申告だけでも終わらせておくと安心です。

準確定申告が必要な人や手続きの流れを理解しよう

亡くなった方の所得税額を申告する準確定申告は、原則としてすべての相続人がその義務を負うことになっています。申告には期日があり、これを過ぎると無申告加算税などの追徴課税が発生するため、相続人が責任をもって行わなくてはなりません。

申告が必要か否かは、亡くなった方に収入があったか、一定額以上の公的年金を受け取っていたかなどで判断します。また、源泉徴収や医療費控除などですでに支払っている税金が戻ってくるケースもあるため、この点にも注目する必要があるでしょう。

申告についての不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談すると安心です。必要であれば申告のサポートも行ってもらえるため、手続きに不安がある方はこちらも併せて検討してみましょう。

本記事を参考に、準確定申告が必要か否かをチェックしてみて下さい。

大切な方を亡くされたご心痛、お察しいたします

私たちは、単なる手続き代行ではありません。ご家族のお気持ちに寄り添い、円満な相続が完了するまで、最後まで伴走します。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。