暦年贈与と相続時精算課税の違いとメリット・デメリットを解説!

暦年贈与と相続時精算課税の違いとメリット・デメリットを解説!

贈与を検討する際、多くの方が悩むのが「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらを選ぶべきかという点です。2つはどちらも贈与税の課税方法ですが、非課税枠や税率、相続時の扱いが大きく異なります。選び方を間違えると、節税できないどころか税負担が増えてしまうケースもあります。本記事ではそれぞれの仕組みやメリット・デメリット、向いているケースをわかりやすく解説し、失敗しない制度選択のポイントを紹介します。

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」がある

贈与税

贈与税には、財産を受け取る際の課税方法として「暦年課税」「相続時精算課税」の2種類があります。どちらも選択制で、贈与する人や財産の金額に応じて使い分けることが可能です。

両者の違いを表にしてまとめました。

項目

暦年贈与

相続時精算課税

利用できる人

原則だれでも

60歳以上の親・祖父母→18歳以上の子・孫へ

非課税枠

毎年110万円まで

110万円+合計2,500万円の特別控除

非課税枠超の税率

10~55%(金額に応じて変動)

一律20%

申告

110万円超で申告

初回に制度選択の届出+110万円超で申告

相続時の扱い

基本は相続財産に加算なし(※生前7年分は加算対象)

贈与した財産は相続時に贈与時の価額で相続財産に合算

制度の変更

いつでも継続利用可

選んだら暦年贈与に戻れない

暦年贈与と相続時精算課税は、同じ「生前に財産を渡す方法」でも仕組みが大きく異なります。贈与や相続の方法に迷う場合は早い段階で税理士に相談し、最適な方法を検討することをおすすめします。

「やさしい相続相談センター」では、お客様の家族構成や財産状況を踏まえた最適な贈与方法をご提案しています。どちらの制度にすべきか選択で迷われている方は、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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暦年課税と相続時精算課税のメリット・デメリット

メリット・デメリット

暦年課税と相続時精算課税のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。

制度

メリット

デメリット

暦年贈与

  • 毎年110万円まで贈与税なしで渡せる
  • 少額を継続して移せる
  • 大きな金額を一度に移すのには不向き
  • 申告が必要になる場合あり

相続時精算課税

  • 合計2,500万円まで贈与税がかからない
  • 値上がりしそうな資産を早めに移せる
  • 選択すると暦年贈与に戻れない
  • 相続の際に改めて税計算が必要
  • 不動産贈与は手続き・費用が増える場合がある

暦年課税と相続時精算課税には、それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。どちらの制度を選ぶかは、贈与する金額や期間、財産の種類、将来の相続税の見込みなどによって変わります。まずは自分や家族の状況に合わせて、どちらの制度が最も有利かを整理することが大切です。

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暦年課税と相続時精算課税制度は併用できない

結論から言うと、同じ贈与者からの贈与で「暦年課税」と「相続時精算課税」の併用はできません。贈与を行う前に、どちらの制度を利用するか必ず選ぶ必要があります。

また一度相続時精算課税を選択すると、翌年以降に暦年課税に変更することもできません。つまりある年に相続時精算課税を適用し、翌年は暦年課税を適用する、といった切り替えはできないため注意が必要です。

暦年贈与と併用できる制度と控除

暦年贈与と併用できる制度と控除をご紹介します。

制度名

対象となる相手

非課税となる金額(上限)

主な使い道・条件

利用期限

住宅資金贈与の特例

直系卑属(子・孫など)

500万〜1,000万円

自宅購入・新築・増改築の資金に充当

2026年12月31日

教育資金一括贈与の特例

直系卑属(子・孫など)

最大1,500万円

授業料・塾代・学校関連費用などに使用

2026年3月31日

結婚・子育て資金一括贈与の特例

直系卑属(子・孫など)

最大1,000万円

結婚費用、妊娠・出産、育児関連費用に使用

2027年3月31日

配偶者控除(おしどり贈与)

配偶者

最大2,000万円

居住用不動産または取得資金の贈与が対象

制限なし(ただし婚姻20年以上が条件)

各制度には利用期限や手続き書類があり、後から適用できないことがあります。また制度の組み合わせや家族構成によって相続税の課税額が変わるため、見通しを立ててから計画的に進めましょう。

暦年課税と相続時精算課税制度のどっちを選ぶべき?

おしどり贈与

暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選ぶべきか迷っている方は、以下の表を参考にしてください。

制度

向いている人

暦年課税

  • コツコツと少額ずつ資産移動したい

相続時精算課税

  • 短期間で大きな金額を移動させたい
  • 将来値上がりする財産を持っている
  • 今値下がりしている財産を持っている
  • 収益不動産を贈与する
  • 贈与者が高齢で基礎控除内の資産をコツコツ移動したい

贈与税や相続税の制度は複雑で、どの方法を選ぶのが最適か迷う方も多いです。特に暦年課税と相続時精算課税では、贈与する金額やタイミング、財産の種類によって最適な選択が変わります。

「やさしい相続相談センター」では、初めての方でも分かりやすく、あなたに合った贈与・相続の方法をご提案しています。税金の負担を減らしつつ、家族にスムーズに財産を残すためのサポートを丁寧に行います。専門家が具体的なケースに沿って、最適な節税プランをご案内いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

暦年贈与と相続時精算課税に関する注意点

最後に暦年贈与と相続時精算課税に関する注意点を2点解説します。

財産状況や家族構成によって有利な制度が変わる

暦年贈与と相続時精算課税は、どちらが有利になるかが家庭ごとに異なる制度です。財産の種類や金額、家族構成によって最適な選択が変わるため、「どちらが節税になるか」を一概に決めることはできません。

自分のケースがどちらに適しているかは判断が難しいことも多いです。誤った制度選択は、かえって税負担が増える可能性もあります。迷った場合は、早い段階で専門家に相談し、最適な制度を選びましょう。

贈与のタイミングや手続きの違いが複雑

暦年贈与と相続時精算課税は適用タイミングや手続きが複雑で、正しく使わないと節税効果が得られない点に注意が必要です。特にいつから贈与を始めるか、どの財産から贈与するかによって、将来の相続税額が大きく変わります。節税のつもりで始めた贈与が、結果的に負担増になるケースもあるため、計画的な判断が必要です。

まとめ

暦年課税と相続時精算課税は、それぞれに明確なメリット・デメリットがあります。暦年課税は少額をコツコツ贈与でき、年間110万円の非課税枠を活かすことで長期的な節税が可能です。しかし多額の贈与には向かず、贈与ごとに申告手続きが必要です。

相続時精算課税は短期間で大きな金額を移動でき、特別控除2,500万円や一律20%の税率により相続税の負担を大幅に抑えられます。収益不動産や値上がりが見込まれる財産の贈与にも適し、相続争いの予防にもつながります。ただし一度選択すると暦年課税は使えず申告の手間や不動産贈与のコスト、将来の税制改正によるリスクも考慮する必要があります。

贈与額や財産の種類、家族構成に応じて、どちらの制度を選ぶか慎重に検討することが大切です。どちらの制度を選ぶかは贈与額や財産の種類、家族構成に応じて慎重に検討しましょう。

「やさしい相続相談センター」では、初めての方でも分かりやすく、あなたやご家族に最適な贈与・相続プランをご提案します。税負担を抑えつつスムーズに財産を移すためのサポートも充実しているので、まずはお気軽にご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。