遺言書で指定の相続人が先に死亡したときは代襲相続になる?
遺言書で指定した相続人が被相続人よりも先に死亡したとき、遺言の該当部分が無効になります。代襲相続が適用されないため、相続人全員の話し合いで財産の分け方を決める必要があります。不測の事態に備えるには「予備的遺言」により、指定した相続人が先になくなったときの財産の分け方を事前に決めておくのが重要です。今回は、相続人が先に死亡する状況に対策する方法や、予備的遺言の文例などを解説します。
目次
代襲相続とは

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、被相続人よりも先に相続人が死亡したとき、相続人の子どもが相続することです。もし、相続人の子どもも先に死亡しており、孫がいる場合は、孫への相続である「再代襲相続」が認められます。
被相続人の兄弟姉妹が相続人で、先に死亡している場合も同様で、兄弟姉妹の子どもへの相続が認められています。被相続人の子どもへの相続と異なり、兄弟姉妹の子どもの場合、甥や姪など1代のみとなっている点は押さえておく必要があります。
注意したいのは、被相続人の養子が先になくなったケースです。
民法887条第2項但書において、養子縁組後に生まれた養子の子どもは代襲相続が認められています。一方で、養子縁組前に生まれた養子の子どもは認められていません。相続権を失った養子の子であっても、被相続人の直系卑属ではないためです。
遺言書で指定の相続人が先に死亡すると代襲相続にならない
遺言書で相続人を指定していても、被相続人よりも早く死亡した場合は、代襲相続が認められません。遺言の該当部分が無効になるため、相続人全員の共有財産として扱われるのが特徴です。相続人全員の合意のもとで、改めて遺産の分け方を決定する必要があります。
相続での争いを回避するには、さまざまな状況に備え、次に相続する人を「予備的遺言」で指定しておくのが有効です。以下の通り、遺言書では法的効力が生じる事項と、生じない事項に分けられる点も押さえておきたいポイントの1つです。
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法的に認められる内容 |
法的に認められない内容 |
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法的に認められない内容を記載していた場合でも、遺族が合意すると実現されるケースもあります。
相続は「争続」ともいわれるほど、相続人の間でトラブルが起こりやすいのが特徴です。相続できる財産が限られる点から、富裕層の方よりも一般家庭でのトラブルが起こりやすい点は知っておく必要があります。
遺産相続をスムーズに進めるためには、専門家に相談するのがおすすめです。
遺言書で指定の相続人が先に死亡したときの対処方法

不測の事態に備えるための対象方法について、具体的に以下の表にまとめました。
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遺言書の内容を訂正する |
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予備的遺言を遺す |
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生前贈与する |
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相続時精算課税制度と暦年贈与について、どちらを利用すべきかは、それぞれの状況によって異なります。相続時精算課税制度は、早期にまとまった財産を移転するうえで有効です。
一方、贈与による特別受益があることを他の相続人に知られたくないときは、暦年贈与を適用するとよいでしょう。
納税額が数百万円以上変わるケースもあるため、具体的なシミュレーションをしたうえで適用するのがポイントです。生前贈与に関しての相談も税理士へ依頼するとスムーズです。
予備的遺言の文例
予備的遺言の基本的な書き方として、以下の通り法務局の公式サイト記載の遺言書を紹介します。
出典:【見本1ー①】
上記の第3条が予備的遺言にあたる部分です。上記の見本において、もし第3条の部分がないと、妻が先に死亡したり、遺言書の書き換えなどをしていなかったりする場合、遺言書自体の効果がなくなることに注意が必要です。
以下の通り、遺言書を作成するときの基本も押さえておくとよいでしょう。
- 遺留分を検討する
- 遺産の内容をすべて把握する
- 相続でトラブルが起こりそうなときは公正証書遺言を作成する
- 遺言執行者を指定する
- 特別受益・寄与分のある相続人の相続分を把握する
遺言書保管所に保管する場合を除き、遺言書を作成したあとは、封書に入れたあとで封印するのが望ましいです。
内容に不備があると、相続時にトラブルを招く原因になります。税理士へ依頼すると、適切な遺言書作成と合わせて、財産の整理や相続税の試算も行ってもらえます。
よくある質問

遺言書に関してよくある質問をまとめました。以下で詳しく見ていきましょう。
受遺者が先に死亡したときは遺言の効力は無効になりますか?
はい。民法により、遺言者が死亡する前に受贈者が死亡した場合、該当部分の遺言の効力は生じないと定められているためです。
該当部分が無効になった場合、相続人全員の共有財産となるため、遺産分割協議で分け方を決定する必要があります。
予備的遺言はどこまで指定できますか?
法定相続人のほか、戸籍上関係のない方も指定できます。
受贈者の範囲が決まっていないため、いとこやボランティア団体なども指定できるのが特徴です。状況に応じて、複数人を指定するのがポイントです。
受贈者が死亡したとき代襲相続できますか?
遺言は死亡時に効力が発生するため、原則として代襲相続はできません。受贈者が死亡したときの遺贈相手が遺言書で指定されている場合、代襲相続に代わって死亡した受贈者の子どもなどに遺贈されるケースもあります。
相続に関する相談は税理士へ
遺言書で指定した相続人が先に死亡したときの対処方法や、予備的遺言の書き方などを解説してきました。
相続人が被相続人よりも先に死亡したとき、遺言書で次に相続させる方を指定していないと、遺言の内容は無効になります。遺言書は書き方が定められており、不備があると内容が反映されない点にも注意が必要です。
遺産相続をスムーズに進めるには、正しい遺言書の作成など、相続が発生する前の段階が最も重要です。遺言書は自分でも作成できますが、税理士などの専門家に相談したうえで進める方が、未然にトラブルを防ぐことにつながります。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
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