親が亡くなったら何をすればいい?死亡後の手続きと相続税申告の流れを解説
親が亡くなったとき、何から手をつければいいのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。突然のことで気が動転し、必要な手続きを後回しにしてしまうケースも少なくありません。本記事では、親の死亡後に行う手続きの流れや注意点、相続税申告までのポイントをわかりやすく解説します。手続きの進め方に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
親が死亡した直後に行う手続き

親が亡くなった直後、何から手をつければよいのか分からず戸惑う方も多いのではないでしょうか。親が死亡した直後に対応すべき主な手続きの流れについて解説します。
死亡診断書・死体検案書を受け取る
親が病院で亡くなった場合、医師から「死亡診断書」が発行され、自宅などで突然亡くなった場合は、警察の立会いのもと「死体検案書」が作成されます。
いずれの書類も、死亡届を提出する際に必要となる重要な書類です。
死亡届を役所に提出し、火葬許可証を取得する
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければなりません。届出先は、亡くなった方の本籍地・死亡地、または届出人の住所地の市区町村役場です。
提出すると「火葬許可証」が交付されるため、葬儀社に渡して火葬手続きを進めます。
参考:死亡届 | 法務省
葬儀社へ連絡し、葬儀・通夜の準備を進める
葬儀社への連絡や、親族・関係者への通知、通夜や葬儀の日程調整を行います。
葬儀費用は喪主が一時的に立て替えるケースが多いですが、後に遺産から精算されるのが一般的です。領収書や明細書は、後の相続手続きにも必要になるため必ず保管しましょう。
葬祭費や埋葬費の給付申請を行う
健康保険加入者が亡くなった場合、「埋葬料」または「葬祭費」の給付を申請できます。
勤務先の健康保険組合、または市区町村の国民健康保険窓口で手続きが可能です。申請期限は原則2年以内のため、忘れずに行いましょう。
参考:加入者が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます | 全国健康保険協会
葬儀後すぐに行う手続き

葬儀が終わったあとも、遺族が対応すべき手続きはまだ多く残っています。葬儀後に速やかに行う必要がある主な手続きについて解説します。
年金の受給を停止し、未支給年金を請求する
年金受給者が亡くなった場合、「年金受給停止届」を日本年金機構に提出します。死亡月分や、未支給年金がある場合は遺族が請求できます。
健康保険・介護保険の資格を喪失させる手続きを行う
勤務先の健康保険や国民健康保険、介護保険などは、死亡日をもって資格が喪失します。健康保険証を返却し、必要に応じて扶養家族の保険切り替えも行いましょう。
健康保険(社会保険)の場合は、被保険者が亡くなった日の翌日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を提出します。
国民健康保険や介護保険の場合は、14日以内に市区町村役場へ届け出るのが原則です。
参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構
世帯主を変更し、住民票の除票を取得する
同居していた場合は、世帯主の変更手続きが必要になります。
死亡者の住民票は「除票」として保存され、相続手続きで求められる場合があります。市区町村役場で発行を受けておくと、後の手続きがスムーズです。
免許証やパスポートを返納し、契約を解約・名義変更する
運転免許証やパスポートは返納し、銀行口座・クレジットカード・携帯電話・公共料金などの名義変更や解約を進めます。
特に光熱費や通信契約は、解約忘れによる請求トラブルが起きやすいため注意しましょう。
親の死亡後に必要な相続手続きの流れ

親が亡くなったあと、相続の手続きはどのような順序で進めればよいのでしょうか。遺言書の確認から名義変更まで、相続に関する一連の流れについて解説します。
遺言書の有無を確認する
まずは、遺言書が残されていないかを確認しましょう。見つかった場合は、封を開けずに家庭裁判所で検認手続きを行います。自筆証書遺言には検認が必要ですが、公正証書遺言の場合は不要です。
遺言書の内容によって、相続の進め方が大きく変わるため、慎重に確認しましょう。
参考:遺言書の検認 | 裁判所
相続人を確定する
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、すべての相続人を確定します。
兄弟姉妹や代襲相続人(亡くなった子の子ども)など、思わぬ相続人がいる場合もあるため、漏れのないよう丁寧に確認しましょう。
相続財産の調査を行う
相続財産には、預貯金・不動産・株式・生命保険金・借入金など多様な資産が含まれます。通帳や登記簿、保険証券を確認し、財産を一覧にまとめた「相続財産目録」を作成しておきましょう。
これにより遺産分割協議や相続税申告の際に、漏れや重複を防ぎ、スムーズな手続きが可能になります。
遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成する
相続人全員が集まり、財産をどのように分けるかを話し合います。合意内容を「遺産分割協議書」にまとめ、全員の署名と押印を行うのが基本です。
不動産や預金の名義変更にはこの協議書が必要となるため、誤記や押印漏れがないよう注意しましょう。
亡くなった人の分の確定申告を行う(準確定申告)
被相続人に給与や年金、事業所得があった場合、相続人が代わって確定申告を行います。これを「準確定申告」といい、相続の開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に税務署へ提出します。
必要書類は被相続人の所得証明や源泉徴収票などです。申告漏れや期限超過は延滞税の対象となるため早めに準備しましょう。
参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
不動産の相続登記や預金名義変更を行う
不動産の名義変更は2024年4月から義務化され、相続開始から3年以内に登記を行わなければなりません。放置すると過料が課される場合があるため注意しましょう。
また、預金の名義変更や解約にも全相続人の同意が必要です。各金融機関で手続きが異なるため、早めに必要書類を確認し、協議書と併せて手続きを進めましょう。
参考:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始) | 法務局
親が死亡した後の相続税申告における注意点
親が亡くなったあとの相続税申告では、期限や手続きのミスが後に大きな負担に繋がる可能性があります。相続税申告を行う際に注意しておきたいポイントについて解説します。
相続税申告が必要になるケース
相続税は、相続財産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えると申告が必要になります。
また、小規模宅地等の特例を使って最終的に税額がゼロになる場合でも、控除を受けるには申告が必要です。不動産や預貯金だけでなく、生命保険金や退職金も対象となるため、財産の全体像を正確に把握しましょう。
申告・納付期限を過ぎた場合のペナルティ
相続税の申告と納付は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課され、特例が適用できなくなる場合もあるため注意しましょう。
財産調査や評価には時間がかかるため、早めに専門家へ相談し、余裕をもった準備を進めるのが大切です。
税額控除・非課税枠を活用する方法
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、生命保険金の非課税枠などは、要件を満たしていないと適用されません。
申告書への添付書類や記載内容に不備があると、控除が認められない場合もあります。制度を正しく理解し、条件を確認したうえで、証明書類を漏れなく提出しましょう。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
二次相続を見据えた節税対策
相続は一度限りではなく、もう一方の親が亡くなった際にも再び発生します。夫婦の一方が亡くなったあと、残った配偶者が亡くなったときに起きる二度目の相続を「二次相続」と言います。
一次相続で財産の多くを配偶者に集中させると、二次相続時に課税対象が増え、結果的に税負担が重くなる場合があるため、最初の相続から配偶者と子どもの分け方を考え、不動産や預金の名義を分けておくなど、将来を見据えた設計が大切です。
親の死亡後の手続きをスムーズに進めるためのポイント
親が亡くなったあとの手続きは多岐にわたるため、事前の準備と整理が重要です。手続きを効率的かつ円滑に進めるための実践的なポイントについて解説します。
手続き書類はコピー・控えを残して保管する
提出する書類は必ずコピーを取り、控えを残して保管しましょう。役所や金融機関に提出した書類は返却されないケースが多いのですが、同じ証明書を複数の手続きで使う場合があります。
再取得には手間と時間がかかるため、提出前にコピーを取ってファイルで整理しておきましょう。
財産調査は「相続財産目録」を作成して整理する
相続財産や負債を正確に把握するために、「相続財産目録」を作成しましょう。預貯金・不動産・保険・借入金などを一覧にまとめておけば、遺産分割協議や相続税申告の際に手続きがスムーズになります。
Excelなどを活用して金額や内容を整理し、必要に応じて更新するのがおすすめです。
相続人間で費用・役割を明確にする
後々のトラブルを防ぐためにも、相続人同士で費用や役割を明確に決めましょう。
葬儀費用や遺品整理、名義変更の負担をめぐって揉めるケースは少なくありません。誰がどの作業や費用を担当するかを事前に話し合い、合意内容をメモや書面で残しておくと安心です。
親が死亡した後の手続きに不安がある方は専門家に相談
親が亡くなった後は、死亡届や保険・年金の手続き、相続税の申告など、多くの手続きを限られた期間内に行う必要があります。順序を誤ったり期限を過ぎたりすると、税金の加算や控除の適用漏れなど、思わぬ不利益を受けるリスクもあります。
こうした複雑な手続きをスムーズに進めるには、税務や相続に精通した専門家のサポートが欠かせません。
小谷野税理士法人では、「親の死亡後の手続き」に関するご相談を幅広く受け付けています。相続税の申告から遺産分割、準確定申告まで、一貫したサポートが可能ですので、お困りの方はぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。






