相続の手続きが10ヵ月でできない!間に合わない場合の対処法

相続の手続きが10ヵ月でできない!間に合わない場合の対処法

相続税の申告には、10ヵ月の期限があります。本記事では、申告期限に間に合わない場合の対処法や遅れた場合のペナルティについて解説しています。また、基本的な手続きの流れについても併せて紹介しています。相続税の申告期限について詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

基本的な相続税申告の流れ

亡くなった方の財産を引き継ぐことを相続といいます。原則として、相続によって得た財産には相続税という税金を支払わなければなりません。以下では、基本的な相続税の申告の流れを解説していきます。

1.相続財産と相続人を確定する

まずは、亡くなった方がどんな財産をどれくらい持っていたのか、借金などの負債はいくらあるのかという点を確認します。

財産だけでなく負債まで確認するのは、相続財産に負債などのマイナス要素も含まれるからです。確認する財産は、預金や株式はもちろん、不動産、自動車、保険金など多種多様でこれらのすべてを目録にまとめます。

財産の確認だけでも、多くの時間と労力を要します。また、これらの財産を誰が相続するのか、相続する権利を有する人も確認しなければなりません。財産を相続できるのは、民法で定められた法定相続人のみとなっています。

法定相続人には相続できる順番が決められているため、戸籍謄本を用いて第一順位から順に確認するようにしましょう。具体的な相続順位は以下の通りです。

相続順位

続柄

常に相続人になる

配偶者

第一順位

子ども

第二順位

第三順位

兄弟姉妹

原則として、子どもがいる場合は配偶者+子ども、いない場合は配偶者+親というように相続を行います。ただし、遺言書によりその他の人物が指定されている場合は、遺言書に則って相続を行わなければなりません。

2.遺産分割協議を行う

相続人や財産の総額が確定したら、だれがどの財産をどのくらい引き継ぐのかを話し合わなければなりません。これを遺産分割協議と言います。遺言書がある場合は、基本的にはそれに従って分割しますが、法定相続分通りに行いたい場合はその旨も話し合います。

原則として、遺産分割協議は相続する人全員が揃った状態で行わなければなりません。誰か1人でも欠けていると、その協議自体が無効になってしまいます。話し合いがまとまったら、決定事項を遺産分割協議書にまとめましょう。

3.申告および納税を行う

各々の相続財産が決まったら相続税の申告および納税を行います。申告は相続人が個人で行うことも可能ですが、不明点がある場合は税理士などの専門家に依頼すると安心です。また、申告は亡くなった方が住んでいた地域を担当する税務署で行わなければならない点を覚えておきましょう。

納税方法は税務署の窓口での納付やクレジットカード、金融機関など様々な方法から選べます。

相続の手続きには期限がある

時計と現金

これまで相続手続きの大まかな流れを解説してきましたが、財産の確認や相続人の確定などは短時間でできるものではありません。亡くなった後は、葬儀の手配や遺品の整理等で慌ただしくなってしまいますが、相続の手続きを後回しにすることはお勧めできません。

これは、相続の手続きに期限が設けられているためです。以下では、相続の手続き関連で設けられている期限について解説していきます。

相続税の申告期限は原則10ヵ月

原則として、相続税の申告は財産の持ち主が亡くなった日の翌日から起算して10ヵ月以内に行わなければなりません。また、申告と合わせてこの期間内に納税まで済ませなければならないのです。そのため、財産の調査や相続人の確定を後回しにしてしまうと、この期限内に間に合わない可能性があるのです。

様々な手続きで忙しく、心理的な負担もあるため後回しにしてしまいがちですが、早い段階で手続きを開始しておきましょう。

その他相続関連の期限

相続権がある方が、その権利を放棄することを相続放棄と言います。相続問題に関わりたくない場合や、相続財産に負債が多く含まれている場合などに選択肢として検討されることが多い制度です。この相続放棄の手続きは、相続が生じたことを知ってから3ヵ月以内が期限となっています。

相続財産に負債が含まれており、その金額がはっきりしない場合は限定承認という方法で相続することがおすすめされています。限定承認とは、プラスとなる財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。限定承認によって相続すればプラスとなる財産で負債を弁済できるため、相続人が借金を肩代わりするような状況が生じないのです。

限定承認による相続を希望する場合は、相続が生じたことを知ってから3ヵ月以内にその旨を申告しなければなりません。また、亡くなった方の所得税を申告する準確定申告は、相続が生じたことを知ってから4ヵ月以内が期限となっています。

申告の期限に間に合わないとどうなる?

相続税の申告の期限に間に合わないと、主に以下のような不利益を被ります。

  • 追徴課税の対象になる
  • 特例が利用できなくなる

以下では、上記に該当してしまった場合にどのような不利益を被るのか、具体的に解説していきます。

追徴課税の対象となる

追徴課税とは、税金を正しく納めなかった場合に追加で課せられる、ペナルティとしての税金のことを指します。相続税の申告に間に合わなかった場合は無申告加算税が課せられます。また、申請は間に合ったものの納税が遅れてしまった場合は、延滞税が課せられる仕組みになっているのです。

無申告加算税が課される具体的なケースおよび税率は以下の通りです。

相続税額のうち
50万円以下の部分

相続税額のうち
50万円を超える部分

期限の翌日から税務調査通知を
受けるまでに自ら申告した場合

5%

5%

税務調査通知を受けてから
調査実施までに自ら申告した場合

10%

15%

税務調査後に申告した場合

15%

20%

例えば、100万円の相続税を税務調査通知後かつ調査実施までの間に自ら申告した場合の無申告加算税は次のようになります。

50万円×10%=5万円

50万円×15%=7万5,000円

5万円+7万5,000円=12万5,000円

つまり、上記のケースでは本来の相続税100万円に加えて、12万5,000円を追加で納めることになります。また、申告自体が期限後になると、当然納付も期限内にはできません。そのため、上記に加えて延滞税も課せられるのです。

延滞税の税率は、期限から2ヵ月以内の場合は年7.3%、それ以降は年14.6%となっています。要するに、延滞税とは本来の納付額にかかる利息と考えられています。

特例が利用できなくなる

相続税の納付には配偶者控除小規模宅地等の特例など、税額が抑えられる特例が設けられています。これらの特例を適用するためには、原則として期限内に申告および納付をしなくてはなりません。

本来、特例の対象となるにも関わらず、期限内に申告できなかったために利用できなくなってしまうと、税額は大幅に跳ね上がります。期限内に申告しないことは、結果として税負担を重くしてしまう行動なのです。

10ヵ月以内に手続きできない場合の対処法

相続税の申告

期限内に申告したいと考えていても、遺産分割協議で揉めている、相続人と連絡が取れないといった問題が生じるケースもあります。どのような事情があれど、基本的には期限を守らなければ追徴課税を避けることはできません。

では、期限内に申告できそうにない場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか。

遺産分割がまとまっていなくても申告する

遺産分割協議ができていない場合や揉めてしまっている場合は、一先ず法定相続分どおりに分割して申告するようにしましょう。このように、正式に遺産分割を行わないまま申告することを未分割申告と呼びます。未分割申告をしておけば、後から配偶者控除などの特例を適用することが可能です。

未分割申告を行う場合は、申告期限後3年以内の分割見込書という書類を提出しなければなりません。その後、正式な遺産分割が済んだら修正申告または更正の請求を行い、正しい税額で相続税をおさめます。より詳しい手続きの流れや注意点は、下記の関連記事で解説しています。

延納を検討する

申告をしたとしても相続税を支払う余裕がないという方も少なくありません。相続放棄をすれば相続税の負担はありませんが、不動産や預金などの遺産が必要な場合もあるでしょう。このようなケースでは、相続税の延納を検討しましょう。

延納とは、本来一括で支払わなければならない相続税を分割で納めることを指します。延納が利用できるのは、下記の条件を満たす場合のみです。

  • 相続税が10万円を超えている
  • 納付が困難な理由があり、実際に相続税額が高額であること
  • 延納する税額とその利子に該当する金額の担保を用意できること
  • 期限内に申請書類を提出すること

実際にどのくらいの期間延納できるかは相続財産に含まれる不動産の割合によって異なり、5年から20年の間で設定されています。具体的な期間や利子率は国税庁のHPで確認してください。

参考:No.4211 相続税の延納|国税庁

遺産分割協議がまとまらない場合にできること

調停の天秤

遺産分割協議がまとまらない場合でも、未分割申告を行えば追徴課税を免れることが可能です。しかし、未分割申告をしたからと言って簡単に話がまとまる訳ではありません。

以下では、遺産分割協議がまとまらない場合にできることを紹介していきます。

調停を行う

相続人同士で話し合ってもそれぞれが納得できる結果を得られない場合は、遺産分割調停により解決を目指します。遺産分割調停と聞くと裁判をイメージを持つ方も少なくありませんが、実際は調停員を交えて話し合いを円滑化する手続きなのです。

第三者を交えることで感情的になることが避けられ、それぞれが納得できる折衷案を見出すことが可能になります。調停を希望する場合は、家庭裁判所に申立てを行いましょう。

ただし、調停を開くと、話し合いがまとまるまでには多くの時間を要することを理解しておきましょう。

専門家にアドバイスをもらう

調停のように時間や労力を割くのは避けたいという場合は、弁護士や司法書士、税理士などに相談すると良いでしょう。相談先によって得手不得手があるため、悩みに応じて相談先を選んでください。

相談先の決め方の具体例としては、相続税に関することであれば税理士、相続争いがある場合は弁護士などが挙げられます。

相続税の申告期限は10ヵ月以内

「まだ時間がある」と思っていても準備には想像以上に時間がかかります。専門の税理士が無料でご相談を承ります。

間に合わないと判断したら迷わず専門家に相談しよう

相続税の申告期限に間に合わないと、無申告加算税や延滞税などの追徴課税を受けることになります。また、配偶者控除などの税額軽減措置も利用できなくなってしまうため、相続人の負担は重くなるばかりです。

このような事態を避けるためにも、相続が生じたら早急に相続人の確定や相続財産の調査を行わなくてはなりません。手続きに少しでも不安や疑問がある場合は、迷わずに専門家に相談することをおすすめします。

期限に間に合わない場合は、未分割申請などによって追徴課税を避けるようにしましょう。本記事を参考に、相続の手続きの期限や流れについて整理してください。

相続問題に強い税理士事務所です

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相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。