二世帯住宅の相続はトラブルに発展しやすい?対処方法を解説!

二世帯住宅の相続はトラブルに発展しやすい?対処方法を解説!

二世帯住宅の相続の場合、相続人同士の意見の相違や不平等な相続が起こりやすく、トラブルに発展する可能性が高いと言えます。基本的には不動産の相続と同じで、特例の適用により、相続税を抑えられる可能性がある点は知っておくとよいでしょう。今回は、二世帯住宅の相続におけるトラブルの可能性や対処方法、注意点、特例適用のための要件などを解説します。

二世帯住宅の相続はトラブルに発展しやすい

相続税 家族信託

二世帯住宅を相続するときは、評価額を起因とする不平等な遺産分割や、共有名義による相続人間の意見不一致などが起こるケースが多いのが特徴です。

二世帯住宅の相続において、対象となるのは親の持分です。持分とは、1つの不動産などを複数人で所有しているとき、各人の所有権の割合を示します。親の持分がなく、二世帯住宅を建てている土地と建物がすべて長男夫婦の名義の場合、相続は比較的スムーズに進みます。

そもそも、相続は「争続」と言われるほどトラブルが起きやすく、遺産の額が少ないケースでは特に注意が必要です。裁判所の発表によると、令和3年に起こった相続争いの調停・審判の数は13,447件だと判明しており、内訳は以下に示します。

  • 調停:5,895件
  • 調停に代わる審判:3,851件
  • 取り下げ:2,353件

うち、遺産分割に関しての割合は以下に示します。

  • 遺産額1,000万円以下:33%
  • 遺産額5,000万円以下:43.8%

相続で調停になる件数の約8割は、遺産の額が5,000万円以下であることが分かります。預金などその他の財産によるものの、二世帯住宅を含む不動産は平等に分けるのが難しく、相続人間でのトラブルが起こりやすいと知っておくのがポイントです。

例として、以下のケースを紹介します。

  1. 不動産:3,000万円、預金など:500万円
  2. 不動産:3,000万円、預金など:3,000万円

上記1のケースでは、不動産を相続する方に対して、他の相続人からの不満が出やすく、相続争いに発展する可能性は高いです。2のケースでは相続人間で平等に相続できるため、円満に相続を終えられるでしょう。

二世帯住宅の相続において、チェックしたい点は以下の通りです。

名義

  • 親名義:土地・建物が相続税の課税対象
  • 共有名義:親の持分が相続税の課税対象
  • 区分所有登記:親世帯の住居が相続税の課税対象

居住実態

  • 親と子どもが同居していたと認められると特例を適用できる
  • 特例の適用には住民票などの提出が必要

基本的に、通常の土地や建物などの相続と、二世帯住宅の相続にかかる相続税の計算方法などは同じです。ただし、二世帯住宅の土地については、小規模宅地等の特例を適用することで、評価額を80%も減額させられる可能性があります。

参考:司法統計年報

二世帯住宅の相続でトラブルに発展するケース

二世帯住宅の相続において、トラブルに発展するケースは以下の表にまとめました。

相続財産が少ない

  • 相続する住宅に比べ、他の財産が少ないと公平に分割できない
  • 二世帯住宅を相続した方に代償金の支払いが生じたとき、金額の大きさや支払いの有無などでトラブルに発展するケースがある

相続人が複数人いる

  • 住宅という特性上、分割が困難である
  • 相続財産が自宅の場合、住み続けたい方と売却したい方とで意見が分かれるケースがある
  • 相続した住宅を売却すると、今住んでいる方は住む場所を失う

評価方法に対する意見の違い

  • 不動産の評価額は、実勢価格や固定資産税評価などによって金額が変わる
  • 業者によって、実勢価格は数百万円以上異なるケースがある

例えば、兄弟で相続するとき、財産が実家の建物と土地のみというのはよくあるケースです。兄弟のいずれかが実家に住んでいる場合、分割が難しく、争いに発展するケースもあります。

他の相続人の持分を現金で支払う「代償分割」という方法もあり、資金の余裕がある場合に有効です。後述する方法も含め、あらかじめトラブルに対処する必要があります。

二世帯住宅の相続のトラブル対処方法

壮年の夫婦

二世帯住宅の相続はトラブルに発展しやすいからこそ、事前に対処するのが重要です。具体的な対処方法は以下の表の通りです。

住宅も土地も子どもの単独登記にする

  • 共有持分を同居の子どもに売却もしくは贈与する
  • 相続について、親が生きている間に解決できる
  • 親が亡くなったときも、同居の子どもは今の住宅に住み続けられる
  • 税制上の優遇措置を受けられなかったり、以下の納税を求められたりする
  • 譲渡:譲渡所得税
  • 贈与:贈与税

親と相続人で話し合う

  • 親と相続人全員で話し合ったうえで、遺産分割について決める
  • 税理士など専門家の立ち会いのもとで、決定内容を文書に残すのが1つの方法である

遺言書を残す

  • 相続トラブルに対処するうえで特に効果的な方法である
  • 同居していた子どものほかに相続人がいる場合、遺留分の侵害に注意が必要である
  • 遺言書がないと、相続人全員で遺産分割について話し合う必要がある
  • 遺産分割では相続人間で意見がまとまらず、トラブルに発展する可能性がある

トラブルに対応するうえでは、以下の通り法律上不備のない遺言書があると理想的です。

自筆証書遺言

公正証書遺言

秘密証書遺言

作成方法

自筆

  • 本人が口頭で伝える
  • 公証人によって作成

本人

費用

なし

必要

必要

特徴

  • 内容を秘密にできる
  • 偽造などの可能性がある
  • 見つけられないリスクがある
  • 偽造などのリスクがない
  • 内容を秘密にできない
  • 時間や手間がかかる
  • 公証役場に記録を残せる
  • 内容を秘密にできる
  • 時間や手間が必要である

二世帯住宅の評価方法

遺産分割や相続税の計算をするうえで、まずは二世帯住宅の評価額を求める必要があります。相続財産は「親が亡くなったときの自由な取引によって成立した価額によって評価される」のが特徴です。

二世帯住宅の場合、以下の通り家屋や門、庭園設備なども評価の対象となります。

評価の対象

評価額の算出方法

家屋

固定資産税評価額✕1.0

家屋と一体の設備

家屋と同じ

庭園設備

再調達価額✕0.7

門・塀などの設備

(再建築価額ー経過年数に応じた減価額)✕0.7

各市区町村役場の税務課にある固定資産課税台帳によって、固定資産税評価額を調べられます。二世帯住宅などの不動産は相続税額が高額になりやすいため、なるべく早く計算するのが望ましいです。

相続税の計算方法・申告方法などが分からないときは、税理士へ相談するのが賢明です。

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共有名義の二世帯住宅の相続での注意点

共有名義の二世帯住宅を相続するときに注意したいのは、相続人の間で意見が分かれるケースです。例として、以下の通り長男と次男が共有名義で二世帯住宅を相続するケースを紹介します。

  • 長男:保有したいと考えている
  • 次男:売却したいと考えている

話し合いでの解決が難しい場合、裁判所を通す訴訟手続きである「共有物分割訴訟」によって、長男を訴える権利が次男にはあります。もし、次男の持分を買い取れるほどの資金を長男が持っている場合、訴訟になる事態を避けられます。

長男と次男の意見が同じ場合でも、将来的に長男もしくは次男に相続が生じたとき、権利は妻や子どもに移行するのが特徴です。共有者が増えるほど、意見の相違が起こりやすくなり、結果としてトラブルが生じる可能性は高いでしょう。

一方で、将来的に二世帯住宅を売却する意思が兄弟間で統一されている場合、公平性を保てるケースもあります。それぞれの持分に応じて、売却金額を分け合えるためです。

二世帯住宅の相続で最大80%減額になる小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、配偶者か親族が亡くなった方の自宅用の土地を相続するとき、相続税計算時の評価額が80%引きになる制度です。地価が高い地域ほど節税効果は高くなるのが特徴で、数百万円以上変わるケースもあります。以下で本特例の詳細を解説します。

要件

配偶者か配偶者以外の親族かによって、小規模宅地等の特例の適用要件は異なるのが特徴です。具体的な要件は以下の表にまとめました。

配偶者

  • 親と子どもが同居している
  • 建物の名義が親である
  • 子どもは部屋の家賃の支払いがない

配偶者以外の親族

  • 上記、配偶者の要件を満たす
  • 親が亡くなったときから相続税の申告期限まで、引き続き住み続ける

合わせて、面積が330㎡(100坪)以下の要件も満たす必要があります。例えば、敷地面積300㎡、評価額が4,000万円の宅地の場合、評価額は800万円と求められます。

相続税の申告が必要なものの、本特例の適用により、遺産の合計額が基礎控除以下となる場合、相続税の納税がなくなるケースもあります。

本特例を適用するには、親が亡くなってから、10ヵ月以内に手続きをするのがポイントです。期限内に申告が終わらない場合、以下の方法で相続税の還付を受けられます。

  1. 相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し提出する
  2. 更正の請求をする

本特例の要件や手続きなどで不明な点がある場合、税理士へ依頼するとよいでしょう。

注意点

子ども世帯が今の家に住み続けられるようにするという観点から、本特例は区分登記の場合に適用できません。適用したい場合、以下の方法によって、親が亡くなるまでに区分所有登記の解消が求められます。

  • 売買などによって子どもの名義から親名義にし、区分合併登記する
  • 各区分建物部分の持分をそれぞれ交換する

区分合併登記とは、別々に登記されている複数の区分建物を、登記上1つの建物にまとめる登記を示します。親が亡くなるまでの同居期間に定めはありませんが、親が亡くなったあと10ヵ月経過するまでは、自宅に住み続ける必要があります。

住民票が親の自宅の住所である方の場合、実際に同居していた事実があることが重要です。以下の通り、税務調査では住民票に記載されている住所ではなく、本当に同居していたのかがチェックされるためです。

  • 通勤定期の区間
  • 水道光熱費の推移
  • 周辺の住民への聞き込みなど

本特例を適用するうえでは、親が亡くなったあとすぐ自宅を離れたり、自宅に住民票を移したからと安心したりしないのがポイントです。

よくある質問

相続に関してよくある質問をまとめました。以下で詳しく見ていきましょう。

親の死後に二世帯住宅を相続するとき共有名義だとどうなる?

相続対象は配偶者と子どもで、子どもが複数人いるとトラブルに発展する可能性があります。預貯金などの財産と異なり、明確に分けるのが難しいためです。

子ども同士の仲が悪かったり、相続後の意見が異なったりするケースにおいて、共有名義での相続は望ましくありません。

二世帯住宅の相続税対策とは?

小規模宅地等の特例を適用することです。相続された土地の評価額を最大80%減額できるため、納税額を抑える効果が期待できます。預貯金などとは異なり、土地や建物などの財産は評価が難しい特徴があるため、税理士へ相談すると安心できるでしょう。

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相続に関する相談は税理士へ

今回は、二世帯住宅の相続におけるトラブルの起こりやすさや対処法、評価方法、注意点などを解説しました。二世帯住宅の相続も、基本的には他の不動産の相続と同じ流れで進みます。

公平な遺産分割が難しいため、相続におけるトラブルに発展しやすい点を押さえておく必要があります。円満に相続するには、親に法的に有効な遺言書を残してもらったり、相続人同士で意見交換したりするのが有効です。

二世帯住宅の相続ならではの注意点があるため、不安に感じている方は税理士へ相談するのが望ましいです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。