5,000万円の遺産に相続税はいくら?課税・非課税の基準や計算方法を解説

5,000万円の遺産に相続税はいくら?課税・非課税の基準や計算方法を解説

遺産が5,000万円ある場合、「相続税がかかるのか」「申告が必要なのか」と不安に感じる方も多いでしょう。相続税は、基礎控除額や相続人の人数によって課税・非課税のラインが大きく変わります。本記事では、5,000万円の遺産を例に、相続税が発生するケースとしないケースの違い、計算方法、節税のポイントまでをわかりやすく解説します。相続税の有無や金額を正しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

5,000万円の遺産で相続税はいくらになる?

相続税の分割協議

5,000万円の遺産を相続した場合、相続税はおよそ「0円〜300万円」です。これは、相続人の人数や構成、適用できる控除の内容によって金額が大きく変わるためです。

まずは相続税の計算の流れについて説明し、遺産5,000万円における相続税のシミュレーション結果をご紹介します。

まず「課税遺産総額」を計算する

はじめに行うのは、相続税の対象となる金額(課税遺産総額)の算出です。課税遺産総額は、遺産の総額から基礎控除額を差し引いて求めます。

基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で算出します。

相続人の人数が多いほど控除額が増えるため、同じ遺産額でも課税対象となるかどうかが変わります。

参考:No.4152 相続税の計算|国税庁

法定相続分で分けて、それぞれに税率をかける

次に、課税遺産総額を「法定相続分(法律で定められた取り分)」に従って分け、それぞれに税率を適用します。

【法定相続分の速見表】

相続人の組み合わせ

配偶者の相続分

子の相続分

父母の相続分

兄弟姉妹の相続分

配偶者と子

1/2

1/2

(均等)

配偶者と父母

2/3

1/3

(均等)

配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4

(均等)

配偶者のみ

全額

子のみ

全額

(均等)

参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

分けた金額に、下記の国税庁が定める速算表の税率をかけ、控除額を差し引いて各人の税額を算出します。

【相続税の速算表】

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超から3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超から5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超から1億円以下

30%

700万円

1億円超から2億円以下

40%

1,700万円

2億円超から3億円以下

45%

2,700万円

3億円超から6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

参考:No.4155 相続税の税率|国税

各人の税額を合計して全体の相続税額を出す

それぞれの相続人ごとに計算した税額を合計し、全体の相続税額を求めます。この段階で、配偶者控除・未成年者控除・障害者控除などを適用し、最終的な納税額を確定します。

5,000万円の遺産で相続税シミュレーション

正味の遺産額5,000万円の遺産を相続した場合、相続人の構成や適用できる控除によって相続税の金額は大きく変わります。

配偶者がいる場合は配偶者控除が適用され、税額が「0円」となる場合がありますが、単独相続や兄弟姉妹が相続人となるケースでは、最大で「300万円」の税負担が発生するケースもあります。

以下の表で、主なパターンごとの目安を確認してみましょう。

相続人の構成

基礎控除額

課税対象額

相続税額目安

法定相続人なし

(遺贈)

3,000万円

2,000万円

300万円

(2割加算対象)

兄弟姉妹1人

3,600万円

1,400万円

192万円

(2割加算対象)

甥・姪1人

(代襲相続)

3,600万円

1,400万円

192万円

(2割加算対象)

子1人のみ

3,600万円

1,400万円

160万円

子2人のみ

4,200万円

800万円

80万円

配偶者+子1人

4,200万円

800万円

40万円

(配偶者控除適用)

配偶者+母親

4,200万円

800万円

26万円

(配偶者控除適用)

子3人のみ

4,800万円

200万円

20万円

配偶者のみ

3,600万円

1,400万円

0円

(配偶者控除適用)

相続税額の差は、主に基礎控除・税額控除・加算の有無によって生じます。配偶者がいる場合は「配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)」により、課税額が0円になるケースがあります。

一方で、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となる場合は2割加算が適用されるため、同じ遺産額でも税負担が重くなります。また、相続人が多いほど「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」が増えるため、課税対象が小さくなり、結果として税額が軽減されます。

参考:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

参考:No.4157 相続税額の2割加算|国税庁

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相続税がかかる財産とかからない財産

相続税の支払いに悩む夫婦

相続の対象となる財産には、どのような違いがあるのでしょうか。一見するとすべての財産に相続税がかかるように思えますが、実際には扱いが異なる場合があります。相続税が課される財産とそうでない財産の違いについて解説します。

課税対象となる財産

相続税の課税対象には、預貯金や不動産、有価証券、美術品など、被相続人が保有していたすべての財産が含まれます。さらに、生命保険金や死亡退職金、個人年金の受給権など、死亡により取得する「みなし相続財産」も対象です。

これらは名義や現金化の有無に関わらず、実質的に経済的価値を持つ財産として扱われ、遺産総額に加算されます。

参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

参考:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

非課税扱いになる財産

ただし、相続税の対象となる財産の中には、一定の条件を満たす場合に非課税とされるものもあります。

代表的なものとして、墓地・墓石・仏壇・仏具などの祭祀に関わる財産が挙げられます。

また、生命保険金や死亡退職金についても、相続人が受け取った金額のうち「500万円×法定相続人の数」までが非課税枠として認められています。

これらは遺族の生活保障や社会的慣習を考慮し、特別に課税の対象から除外されています。

参考:No.4108 相続税がかからない財産|国税庁

控除できる費用・債務

相続税の計算では、非課税財産とは別に、一定の費用や債務を遺産総額から差し引くことができます。対象となるのは、被相続人の借入金・未払金・未払医療費などの債務のほか、通夜・葬儀・火葬・埋葬にかかる実費などの葬式費用です

ただし、香典返しなど葬儀に直接関係しない支出については、控除の対象外となりますので注意しましょう。

参考:No.4126 相続財産から控除できる債務|国税庁

参考:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|国税庁

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5,000万円の遺産にかかる相続税を抑えるための方法

相続税の計算をする女性

相続税は、財産の内容や家族構成によって大きく変わりますが、制度を正しく活用すれば負担を抑えられます。相続税を軽減するための代表的な方法をご紹介します。

小規模宅地等の特例を活用する

被相続人が居住していた土地や事業用・賃貸用の土地については、「小規模宅地等の特例」により最大80%の評価減が認められます。例えば、自宅として使用していた土地(330㎡まで)は80%減額、事業用・賃貸用宅地も一定割合で評価が下がります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

生前贈与で財産を分散する

相続の前に少しずつ財産を贈与しておけば、将来の相続財産を減らし、相続税を抑えられます。

毎年110万円までの「暦年贈与」は非課税で行えるほか、「相続時精算課税制度」を利用すれば2,500万円まで贈与税がかからずに贈与できます

ただし、相続時精算課税制度は贈与時に課税を先送りし、相続が発生したときに贈与した財産を相続財産に合算して税額を精算する仕組みであるため、単純な節税制度ではない点に注意しましょう。

さらに、死亡前7年以内に行った贈与は原則として相続財産に加算されます。令和6年1月以降は「3年以内」から「7年以内」に延長され、4〜7年前分の贈与については合計100万円まで加算の対象外となります。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

各種税額控除を適用する

相続税の計算後には、前述した配偶者控除をはじめ、さまざまな税額控除を適用できます。これらの控除を正しく活用すれば、最終的な税負担を大きく抑えられるでしょう。

主な控除は以下の通りです。

控除の種類

説明

配偶者控除

1億6,000万円または法定相続分までの金額が非課税となる

未成年者控除

18歳になるまでの年数×10万円を相続税から控除できる

障害者控除

85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)を控除できる

相次相続控除

前回の相続から10年以内に再び相続がある場合、前回の税額の一部を控除できる

参考:No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

参考:No.4167 障害者の税額控除|国税庁

参考:No.4168 相次相続控除|国税庁

相続税の申告・納税の流れ

相続税は、被相続人の死亡後に一定の期限内で申告と納付を行う必要があります。申告の判断から納税までの基本的な流れについて解説します。

申告の対象と期限を確認する

相続税の申告が必要かどうかは、遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人」の基礎控除額を超えるかで判断します。基礎控除を超える場合は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納付が必要です

なお、相続税がゼロとなる場合でも、小規模宅地等の特例などを利用して評価額を減額する場合は、特例適用のための申告が必要となります。申告を行わないと特例が受けられないため、忘れずに手続きを行いましょう。

財産を評価し、申告書を作成する

正確な相続税を計算するためには、まず相続財産の内容を把握し、評価額を算出します。その際に必要となる主な書類は以下の通りです。

書類

内容

戸籍謄本

相続人の確定に使用する

遺産分割協議書

各相続人が取得する財産の内容を明記する

登記事項証明書・固定資産評価証明書

不動産の所有状況と評価額を確認する

預貯金残高証明書

相続開始時点の預貯金額を証明する

これらをもとに財産ごとの評価額を整理し、基礎控除や特例を反映して課税遺産総額を計算し、相続税申告書を作成します

税務署へ申告し、相続税を納付する

必要な書類をそろえたら、期限内に税務署へ申告書を提出しましょう。相続税は、原則として現金による一括納付が求められます。ただし、資金が不足する場合には、一定の条件を満たせば「延納(分割払い)」や「物納(不動産や有価証券での納付)」が認められます

延納を利用する場合は利子税が発生するため、早めに資金計画を立てておくのが大切です。また、納期限を過ぎると加算税や延滞税が課されることがあるため、余裕をもって手続きを行いましょう。

参考:No.4211 相続税の延納|国税庁

参考:No.4214 相続税の物納|国税庁

5,000万円の遺産と相続税に不安がある方は専門家に相談

相続税は基礎控除や特例の活用次第で課税額が大きく変わるため、誤った判断をすると本来不要な税負担が発生する可能性があります。特に不動産評価や生前贈与の扱いを誤ると、追徴課税や修正申告が必要になるケースも少なくありません。

こうしたリスクを避けるには、相続税の実務に詳しい専門家へ早めに相談するのが重要です

小谷野税理士法人では、5,000万円規模の遺産を含む相続税シミュレーションや節税対策、申告手続きまで一貫してサポートしています。「自分の場合はいくらかかるのか」、「申告が必要か分からない」という方は、ぜひ小谷野税理士法人へお気軽にご相談ください。

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相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。