不動産の生前贈与による相続税対策はお得?気をつけたいポイントを解説

不動産の生前贈与による相続税対策はお得?気をつけたいポイントを解説

不動産の生前贈与は税金対策として有効な印象を持つ人もいるかもしれませんが、税負担が増えるケースもあり、慎重な判断が必要です。そこで本記事では、不動産を生前贈与するメリットや注意点を解説します。記事の内容を把握すれば、生前贈与か相続のどちらを選択すれば良いか判断できます。正しい知識を身につけて、自身の状況に合った対策を見つけましょう。

不動産の生前贈与による相続税対策はお得?

不動産の生前贈与が相続税対策として有効かどうかは、状況によって異なります。特定のケースでは節税効果が期待できますが、条件次第では負担が増える可能性もあります。

有効なケースは、以下の通りです。

  • 将来的に値上がりが見込める不動産を所有している
  • 賃貸マンションやアパートで収入を得ている

将来値上がりしそうな不動産は、価格が上昇する前に贈与を行えば、安い評価額で財産を引き継げます。また、収益不動産を贈与すれば、家賃収入が受贈者に移り、将来的な相続税を抑えられます。

一方、対策に向いていないケースは以下の通りです。

  • 贈与税が相続税よりも高くつくケース
  • 相続を急いでいない場合

贈与税の税率は相続税よりも高く設定されているため、一度に多額の不動産を贈与すると税負担が重くなります。

また、不動産取得税や登録免許税といった費用も生じるため、入念なシミュレーションが必要です。相続を急いでいない人は、他の節税対策と比較検討する余地があるでしょう。

生前贈与を行う際は、自身の状況が節税に適しているか判断したうえで、手続きを進めるのがおすすめです。

不動産の生前贈与で気をつけたいポイント

不動産(賃貸)の相続

生前贈与を検討する際は、注意点も把握しておく必要があります。事前にポイントを押さえておけば、適切な判断が可能です。税負担や費用面でのデメリットを理解して、納得のいく選択をしましょう。

贈与税の税率が相続税より高い

同じ金額の不動産を1度に渡した場合、贈与税の方が相続税よりも税率が高いです。例えば、基礎控除後の課税価格が3,000万円の不動産を子どもに贈与した場合の税率は特例贈与でも45%です。一方、相続の場合は税率15%で済むため、贈与よりも30%税負担を抑えられます。

ただし、贈与税と相続税では基礎控除の計算方法も異なるため、単純に税率のみで生前贈与と相続のどちらが得か判断することは難しいでしょう。

贈与税は、相続税より高い税率が適用されるため、不動産を贈与すると、想定以上の負担が発生するリスクがあります。節税目的で生前贈与を行う際は、それぞれの税率を比較し、総合的に判断するのが大切です。

小規模宅地等の特例が適用できない

生前贈与した不動産は、相続時における小規模宅地等の特例の対象外です。小規模宅地等の特例は、亡くなった人の自宅や事業用の土地を相続した場合に、評価額を最大80%まで減額できる制度です。

生前贈与で所有権を移転すると、不動産は相続財産ではなくなるため、特例の対象からは外れます。結果的に、特例を使えば負担を軽減できたはずのケースでも、贈与を選ぶと税額が高くなる可能性があります。

特例の対象となる可能性がある不動産は、税理士にシミュレーションをしてもらうのがおすすめです。例えば、1,000万円の不動産で80%の減額制度が利用できない場合、800万円の控除は受けられなくなります。

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登記や取得に伴う各種費用が発生する

不動産の生前贈与では、相続をした時よりも多くの費用が発生します。贈与と相続の費用負担を比較した表は、以下の通りです。

項目

登録免許税

不動産取得税

贈与したケース

2%

4%

※現在は軽減税率として3%が適用

相続したケース

0.4%

なし

税率だけで判断すると、贈与で不動産を取得した場合は、相続よりも負担が大きいです。登録免許税は5倍、不動産取得税は4%増で費用がかかります。贈与を検討する際は、付随して発生する費用もすべて洗い出し、総額でいくらかかるのかを事前に把握しておきましょう。

特別受益を踏まえて判断する必要がある

生前贈与で受け取った不動産は「特別受益」として扱われ、遺産分割の際に相続分の調整対象となるケースがあります。

例えば、父親が長女に2,000万円の不動産を生前贈与し、亡くなった時に3,000万円の預金が残っていたとします。相続人が長女と次女の2人だった場合、相続財産は預金3,000万円と不動産2,000万円を合計した5,000万円です。

長女はすでに2,000万円分の不動産を生前贈与で受け取っており、残りの遺産から受け取れるのは500万円です。一方で、次女は預金2,500万円を受け取ります。

不動産を生前贈与すると、上記の通り相続時の取り分に差が生じ、トラブルへ発展するリスクを想定しておく必要があります。贈与を実行する際は、他の相続人へ十分に説明し、将来も良好な家族関係を保てるよう配慮しましょう。

不動産の生前贈与をおすすめしたい人

不動産の生前贈与には注意すべき点もありますが、複数のメリットも存在します。特定の目的がある人にとっては、相続よりも贈与が有効な選択肢となる場合があります。どのような人が不動産の生前贈与に向いているのか、具体的なケースを見ていきましょう。

希望する相手に確実に引き継ぎたい人

特定の相手に確実に不動産を引き継ぎたい場合は、生前贈与がおすすめです。相続では、遺産分割協議で誰が不動産を引き継ぐかが決まるため、スムーズに解決しないケースがあります。

また、遺言書を作成しても、相続人全員の合意があれば、遺言とは異なる内容で分割されるケースもあります。一方、生前贈与なら所有権を直接移転できるため、意図した相手への確実な引き継ぎが可能です。

確実に引き継いでおきたい不動産がある人は、税理士へ相談してみてはいかがでしょうか。大切な資産をトラブルなく贈与するには、専門家への依頼がおすすめです。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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認知症になる前に対策したい人

高齢になり、認知症のリスクが高まる前に対策をしたい人には、生前贈与が適しています。認知症を患うと、法律上「判断能力がない」と見なされ、贈与契約が無効になる可能性があるためです。

また、遺言書の作成も不可能となるため、自分の希望どおりに相続を進めるのが難しくなる場合があります。判断能力があるうちに贈与を済ませれば、自身の意思で財産を確実に引き継げます。

将来の認知症リスクを考慮し、元気なうちに計画的な対策をしておくのがおすすめです。

相続トラブルを未然に防ぎたい人

相続時の親族間トラブルを避けたい人にも、生前贈与は有効な手段です。遺産分割では誰がどの財産を相続するかで、揉めるケースも想定されます。特に不動産は現金のように簡単に分割するのが難しく、トラブルの要因になりがちです。

生前に贈与を済ませておけば、誰が不動産を引き継ぐのかが明確になるため、相続時の負担を減らせます。

ただし、他の相続人が納得できるよう、贈与の目的を事前に説明しておく配慮は必要です。家族が円満に財産を引き継げるよう、元気なうちから対策を講じておきましょう。

不動産の生前贈与で利用できる非課税制度

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生前贈与では、税負担を軽減できる制度が複数用意されています。制度を適切に活用すれば、数百万円から数千万円規模の非課税枠の利用が可能です。計画的に贈与を進めるために、自身の状況に合った制度を理解しましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、最大2,500万円の特別控除を利用できる制度です。原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で使えます。2024年からは、特別控除とは別に年間110万円の基礎控除も適用されるようになりました。

ただし、贈与を行った人が亡くなった場合、贈与された財産は相続税の対象となります。また、1度選択すると、同じ人からの贈与は暦年課税に戻せない点に注意が必要です。将来の相続税額も踏まえ、制度の利用は計画的な判断をおすすめします。

贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の配偶者へ居住用不動産を贈与する際に利用できる制度です。2,000万円までが贈与税の対象から控除され、基礎控除110万円と併用すれば、最大2,110万円まで非課税で贈与できます。

ただし、贈与を受けた配偶者が実際に住んでおり、その後も住み続ける見込みが必要です。また、同じ配偶者との間では一生に1度しか利用できない制度です。将来の生活を支えるために自宅を配偶者へ贈与する場合は、仕組みを理解したうえで制度を活用しましょう。

暦年課税の基礎控除

暦年課税の基礎控除とは、年間110万円までの贈与が非課税になる制度です。贈与額が110万円以下であれば、申告は不要です。ただし、不動産は金額が大きいため、110万円の範囲で贈与を進めるのは簡単ではありません。

対策の1つとして、不動産の所有権を分割し、毎年少しずつ贈与する方法があります。持分移転を行う場合は、計画的な一括贈与と見なされる「定期贈与」のリスクや、登記の費用負担が発生する点に注意が必要です。

不動産をスムーズに引き継ぎたいとお悩みの人は、専門家への相談を検討してはいかがでしょうか。専門家であれば、相談者の状況に合った節税対策をシミュレーションしてもらえます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

不動産を生前贈与するための手続き

不動産登記

不動産の生前贈与では、どのような手続きが必要で、費用がどれくらい発生するのかが気になるところです。あらかじめ生前贈与の全体像を掴んでおけば、スムーズに手続きの対応ができます。大切な財産を確実に引き継ぐために、具体的な流れを確認しておきましょう。

生前贈与でかかる税金や費用

不動産の生前贈与では、贈与税の他にも複数の税金や専門家への費用が発生します。具体的にかかる税金や費用は、以下の通りです。

項目

内容

贈与税

財産を受け取った人にかかる税金

登録免許税

不動産の名義変更時にかかる税金

不動産取得税

不動産を取得した際にかかる税金

その他

司法書士への報酬、贈与契約書の印紙代など

先述した通り、登録免許税と不動産取得税は、相続で不動産を引き継ぐ場合よりも税率が高くなる点に注意が必要です。贈与を検討する際は、贈与税の金額だけではなく、付随費用もすべて含めた総額で判断するのが大切です。

生前贈与を行う手順

不動産の生前贈与は、計画的に進めると手続きをスムーズに行えます。不動産の生前贈与を行う手順は、以下の通りです。

  • 不動産を贈与する相手を決める
  • 贈与税の課税方法を選択する
  • 契約書を作成する
  • 必要書類を準備する
  • 名義変更の登記を行う
  • 都道府県へ不動産取得の届出を提出する
  • 贈与税の申告と納税を行う

まずは贈与の意思を明確にするため、契約書を作成し、必要な手続きを進めていきます。しかし、必要書類の準備や各種申請は司法書士が代行するケースが多いです。手間をかけずにスムーズに手続きを済ませたい人は、専門家への依頼がおすすめです。

不動産の生前贈与は税理士への相談がおすすめ

不動産の生前贈与は、希望した相手にスムーズに引き継いだり、相続トラブルを防いだりと、複数のメリットがあります。しかし、贈与税の税率が相続税より高くなる点や、各種費用がかかる点には注意が必要です。

生前贈与と相続のどちらが適しているかは、個々の状況により異なります。自身での判断が難しいと感じたら、専門家である税理士に相談するのがおすすめです。

小谷野税理士法人では、無料相談を受け付けています。専門家の視点で贈与のプランを提案してもらい、納得できる不動産の承継を実現しましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。