相続手続きの期限一覧|期限を過ぎた場合はどうする?

相続手続きの期限一覧|期限を過ぎた場合はどうする?

身内が亡くなった後は、なるべく早く相続の手続きを行わなければいけません。相続に関する手続きは内容が複雑である上に、期限が定められているため、後回しにするとトラブルに発展する可能性もあります。

本記事では、相続に関する手続きの内容と期限について詳しく解説します。相続の手続きに関して悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続発生直後の手続きとは?

 

相続が発生したら以下のような対応を行わなければいけません。

  • 死亡届の提出
  • 住民票の変更や健康保険に関する手続き
  • 年金の受給停止手続きや遺族年金の請求手続き

身内が亡くなって精神的な負担が大きい状態で手続きを進める必要があります。そのため、落ち着いて期限を確認し、正しく対応することが大切です。失念してしまうと、相続の手続きを進められなくなる可能性があるので注意しましょう。

7日以内|死亡届死亡届・死亡診断書

被相続人が亡くなった場合は、すぐに死亡届の提出を行いましょう。死亡届の提出は法律上の義務であり、死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村役場へ届け出なければなりません。

葬儀社が手続きをサポートしてくれることも多いため、依頼する際に一緒に確認しておきましょう。提出時には、医師が作成した死亡診断書や死体検案書が必要です。

参考:戸籍法第八十六条

14日以内|住民票・健康保険の手続き

死亡届の提出後は住民票の変更や健康保険に関する手続きも進める必要があります。代表的なものとしては「世帯主変更届」や「国民健康保険資格喪失届」などが挙げられます。

世帯主変更届は、故人が世帯主だった場合に、新たな世帯主を届け出るための手続きです。故人が国民健康保険に加入していた場合は、資格喪失届を提出し、保険証を返却しなければなりません。手続きを怠ると、故人に対して保険料の請求が続くといったトラブルにつながることがあります。

また、故人が年金を受給していた場合には、年金の受給停止手続きや遺族年金の請求手続きも速やかに進める必要があります。これに加えて、公共料金や携帯電話、インターネット回線などの契約名義を変更する手続きも可能であればこのタイミングで着手しておくと、その後の事務処理がスムーズです。

遺族年金の受給額については以下の記事をご確認ください。

関連記事:【税理士監修】遺族年金はいくらもらえる?もらえる条件やいつまでもらえるのかを解説

相続発生から数ヵ月以内に行う手続き

相続開始後の数ヵ月間は、以下の手続きを行わなければいけません。

  • 相続方法の選択
  • 準確定申告と納税

相続に関する判断や申告には明確な期限が設けられています。その中でも、相続放棄や限定承認の判断は、遺産の内容によって相続人の経済的負担が大きく変わるため、早急に意思決定を行わなければいけません。また、被相続人が生前に得ていた所得に関する税務処理も必要です。

ここでは、相続発生から数ヵ月以内に行わなければいけない手続きについて紹介します。

3ヵ月以内|相続か放棄か

相続開始から3ヵ月以内には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択しなければいけません。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄


この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続財産の全体像を把握するための猶予期間とされています。

被相続人に多額の借金や債務がある場合は、相続放棄を選ぶことで、金銭面での負債を背負うのを回避可能です。しかし、何の手続きも行わずに3ヵ月が経過すると、単純承認したものとみなされ、負の財産(債務)も含めすべての財産を引き継ぐことになります。

遺産の調査に時間がかかり、3ヵ月の期限内に判断が難しい場合は、家庭裁判所へ申し立てを行うことで熟慮期間の延長が認められる可能性があります。仮に忙しい場合でも、放置することは絶対にしないようにしましょう。

参考:民法九百十五条

4ヵ月以内|準確定申告と納税

相続発生後4ヵ月以内には、被相続人の所得税に関する準確定申告と納税を行う必要があります。準確定申告とは、被相続人の死亡日までに発生した所得を、相続人が代理で税務署に申告する手続きです。

例えば、3月1日に被相続人が死亡し、相続人がその事実を同日に知った場合、申告期限は7月1日となります。死亡日の翌日から起算して4ヵ月後までと定められています。

準確定申告が必要となるのは、被相続人が個人事業主だった場合や、不動産所得・年金収入などが一定額を超えていた場合です。対象となる収入があるにもかかわらず申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などの罰則が科される可能性があるため注意しましょう。

複数の相続人がいる場合は、誰が申告・納税を行うかを明確にしておくことが大切です。申告書は、相続人全員の連署によって提出する必要があります。手続きの準備には時間がかかるため、早めに税理士などの専門家に相談しましょう。

参考:納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁

関連記事:【税理士監修】準確定申告書とは?申告が必要なケース、必要書類や期限などを解説

相続発生から1年以内に行う手続き

相続税の申告書

相続が始まってから1年以内には、以下の手続きを行わなければいけません。

  • 相続税の申告および納税
  • 生命保険の保険金の請求

また、相続財産の全容を把握し、相続人同士で遺産分割協議を完了させる必要がある期間でもあります。相続税の手続きを怠ると、延滞税・加算税などの税務上のペナルティが発生する恐れがあるため、確実に行わなければいけません。

遺産分割や納税に関する計画を早い段階から立てて、着実に対応していく必要があります。

10ヵ月以内|相続税の申告および納税

相続税の申告および納税は、被相続人の死亡を知った翌日から10ヵ月以内に完了させる必要があります。具体的に必要となる作業は以下の通りです。

  • 被相続人の財産・債務を調査し、正確な遺産内容を確定する
  • 相続人全員で遺産分割協議を行い、各人の取得財産を決定する
  • 相続税額を算出し、税務署に申告書を提出
  • 所定の納税方法で納付を完了させる

もし遺産分割協議が申告期限までに間に合わなかったとしても、相続税の納税義務がなくなるわけではありません。その場合は、法定相続分に基づく仮の分割を前提として「未分割申告」を行うことで、期限内申告が可能となります。

しかし、未分割申告を選択すると、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減といった有利な相続税の控除制度が適用されないため、最終的な納税額が増える可能性があります。

申告後に分割が確定した場合には、修正申告や更正の請求によって一部の控除を適用できることもありますが、最初から協議を済ませて正規の申告を行う方がスムーズに手続きを進められるでしょう。

遺産分割協議書の作成方法については、以下の関連記事をご確認ください。

参考:相続財産が分割されていないときの申告|国税庁

参考:相続税の申告と納税|国税庁

関連記事:【税理士監修】遺産分割協議書の作成方法と必要性について解説

1年以内|保険金の請求

被相続人が加入していた生命保険に関しては、基本的に死亡日から3年以内に保険金の請求を行う必要があります。この時効を過ぎると、受取人が保険金を受け取る権利を失う可能性があるため、できるだけ早期に保険会社への連絡と請求書類の提出を行うようにしましょう。

生命保険金は、民法上の遺産には該当せず、受取人の固有財産として扱われます。そのため、他の相続人との協議や分割の対象にはなりません。しかし、保険金の金額や契約の内容によっては、相続税の課税対象になる場合があるため、税務上の確認も必要です。

生命保険金を請求する際には、以下の書類が必要です。

  • 保険証券
  • 死亡診断書
  • 受取人の本人確認書類
  • 住民票

各保険会社によって手続きの流れが異なる場合もあるため、契約内容を確認し、担当窓口に問い合わせた上で進めましょう。生命保険を利用した相続税対策については、以下の関連記事をご確認ください。

参考:死亡保険金はどのようにして受け取る?|公益財団法人 生命保険文化センター

関連記事:生命保険を活用して賢く相続税対策!非課税枠や注意点を解説

相続発生から1年以降に行う手続き

登記申請書

相続が発生してから1年が経過した後も、対応が必要な手続きは数多くあります。

  • 健康保険に基づく給付金の申請
  • 不動産の相続登記
  • 更正の請求

特に不動産の相続登記や税金の修正申告・還付請求といった項目は、期限にゆとりがある一方で、怠ると過料の対象となったり、還付の権利を失ったりする可能性があります。

これらの手続きは忘れやすく、数年単位でのスケジュール管理が必要になるため、相続直後にリストアップしておくことが重要です。特に相続登記については、多くの相続人に関わる内容であるため、注意深く確認しましょう。

2年以内|給付金の申請

相続開始後2年以内には、健康保険に基づく給付金の申請を行わなければなりません。具体的には、故人が加入していた国民健康保険や健康保険組合からの「葬祭費」や「埋葬料」の給付申請が該当します。

これらの手続きは、葬儀を行った日の翌日から2年以内が申請期限となっています。期限を過ぎると給付を受け取れなくなるため、葬儀後のタイミングで早めに確認しておきましょう。

3年以内|相続登記

2024年4月から、不動産の相続登記が義務化されました。土地や建物を相続した場合、その取得を知った日から3年以内に登記申請を行うことが法律で義務付けられています。違反した場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるため、放置せずに対応しましょう。

さらに、相続登記義務化の制度は過去の相続にも適用されており、2024年4月1日以前に発生した未登記の相続案件についても、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。相続登記に関するルールの詳細は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:【2024年4月開始】相続登記が義務化!放置のリスクや罰則、よくある質問を紹介

参考:相続登記の申請義務化について|法務局

5年以内|更生の請求

相続税を申告・納税した後でも、申告内容に誤りや変更の事情が判明した場合には「更正の請求」という手続きによって、納めすぎた相続税の還付を受けられる可能性があります。更正の請求は、相続税を申告してから5年以内に行う必要があります。

例えば、遺産評価の見直しや新たな債務の発見、小規模宅地等の特例の適用漏れが後から判明した場合などに更正の請求が可能です。請求が認められれば、過払い分の税金が還付されますが、期限を過ぎると還付の権利が消滅するため、気づいた時点ですぐに税理士などの専門家へ相談することが大切です。

参考:相続税及び贈与税の更正の請求手続|国税庁

期間を過ぎてしまった場合の注意点

相続手続きには、法律で定められた各種期限が存在します。期限を過ぎると、税務上のペナルティや登記義務違反による罰則などのさまざまな不利益が生じます。

期限切れとなった後でも、一定の対処方法が残されている場合もありますが、対応のハードルが高くなり、結果的に金銭的・手続き的な負担が大きくなるケースが少なくありません。相続をスムーズに進めるためには、各期限の重要性を正しく理解し、早めの対応を心がけることが重要です。

軽減措置が適用されない可能性がある

相続税の申告期限である10ヵ月以内に手続きを行わなかった場合は「期限後申告」となります。この場合は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、大幅な相続税の節税につながる優遇措置が適用されない恐れがあります。

軽減措置を受けられなかった結果、本来よりも高額な相続税を納めることになるケースが多く、相続人の金銭的負担が増加する可能性が高いです。しかし、相続税の申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後日遺産分割協議が成立した際に、修正申告または更正の請求を通じて軽減措置を適用できる場合もあります。

相続税の節税方法については以下の記事をご確認ください。

関連記事:【税理士監修】相続税は節税できる?利用したい控除と効果的な対策方法

延滞税・無申告加算税・過料の発生

相続税の申告・納付を10ヵ月以内に完了しなかった場合、延滞税が発生するかもしれません。延滞税は、納税の遅延期間に応じて加算され、時間が経過するほど税額が増加します。さらに、正当な理由なく申告を怠った場合は、無申告加算税も併せて課されることがあり、納税額全体が大きく跳ね上がる可能性があるので注意しましょう。

また、2024年4月1日から義務化された相続登記(不動産の所有権移転登記)についても、期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。特に相続人が複数いる場合や放置されがちな空き家物件では、後々トラブルにつながりやすいため注意が必要です。

関連記事:【2024年4月開始】相続登記が義務化!放置のリスクや罰則、よくある質問を紹介

相続放棄の期限超過による権利喪失

相続放棄または限定承認の選択には、相続の開始を知った日から3ヵ月以内の熟慮期間が設けられています。期限を過ぎてしまうと、単純承認(すべての財産と負債を相続する意思)があったとみなされ、被相続人の借金や債務も引き継ぐことになります。

また、法定相続人が受け取るべき最低限の遺産を主張できる遺留分侵害額請求権も、行使期限(知った時から1年以内・相続開始から10年以内)を過ぎると完全に消滅し、請求権を行使することができなくなるので注意しましょう。

相続放棄や遺留分侵害額請求権の詳細については、以下の記事をご確認ください。

関連記事:【税理士監修】相続放棄の受理期間は3カ月。経過後の放棄は認められる?

関連記事:遺留分侵害額請求の時効は1年と10年!期間内にやるべきことと時効を止める方法

相続手続きは期限を順守して計画的に進めよう!

相続に関する各種手続きは、被相続人の死亡を知った日を起点として始まります。進めなければならない作業は多く、死亡届の提出、相続放棄や相続税の申告・納付、不動産の相続登記など、内容は多岐にわたります。

申告や登記などが期限を過ぎてしまっても、救済措置が講じられることもありますが、基本的にはスケジュールを順守するようにしましょう。

相続手続きを円滑に進めるためには、各期限を正確に把握し、段階的に計画を立てて行動することが重要です。相続に不慣れな方や、複数の相続人・財産が絡むような複雑なケースでは、早い段階で税理士や司法書士、場合によっては弁護士といった専門家に相談してください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
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