贈与税がかからない方法はある?課税の仕組みも解説

贈与税がかからない方法はある?課税の仕組みも解説

財産を無償で譲り受けることを贈与と呼び、受け取った財産には贈与税が課せられます。しかし、贈与税には税額を抑えられるポイントが複数あり、課税の仕組みを理解することで大幅な節税が可能です。

今回は、贈与税がかからない方法や基本的な課税の仕組みについて解説していきます。

贈与税の基本的な仕組みを理解しよう

財産を無償で譲ることを贈与と言います。贈与で譲り受けた財産には贈与税という税金が課せられる決まりで、財産を譲り受けた側(受贈者)が納税しなくてはなりません。

以下では、贈与税の課税方法および税額の計算方法、申告や納税について解説していきます。

贈与税の課税方法は2種類

贈与税の課税方法は2種類あります。1つ目が、1年間で贈与された金額に対して税金を課す暦年課税という方法です。基本的には、この方法により税金を課すことになっています。

もう1つは、相続時に相続財産とまとめて税金を課す相続時精算課税という方法です。この方法は贈与した年の1月1日時点で60歳以上の両親・祖父母から満18歳以上の子供・孫に対して行う贈与にのみ適用できます。

税額の計算方法

贈与税額の計算方法は、課税方法により異なります。以下では、それぞれの税額の計算方法は以下の通りです。

【暦年課税の大まかな計算方法】

  1. 1年間に受け取った財産の金額から基礎控除110万円を差し引く
  2. 基礎控除後の金額に所定の税率を掛け、控除額を引く

暦年贈与の税率には、特例税率と一般税率というものがあります。18歳以上の方が直系尊属から贈与を受けた場合に適用するのが特例税率、その他の贈与に適用するのが一般税率です。具体的な税率および控除額は国税庁のHPに記載の速算表を確認してください。

【相続時精算課税の大まかな計算方法】

  1. 1年間に受け取った財産の金額から基礎控除110万円を差し引く
  2. 相続時までに贈与で受け取った金額から特別控除2,500万円を差し引く
  3. 特別控除後の金額と他の相続財産を合算して相続税を課す

相続時精算課税では、2024年以降の贈与より基礎控除と特別控除の併用が可能となりました。それ以前の贈与については、110万円を差し引けないため注意しましょう。また、贈与により譲り受けた財産の総額が2,500万円を超えてしまうと、その時点で一旦贈与税を納めなければなりません。

この際の税率は一律20%で、相続発生時に納税した贈与税額を相続税額から差し引くことができます。2,500万円を超えたからと言って、贈与税と相続税が2重に課されるわけではないという事を覚えておきましょう。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

申告方法および納税方法

贈与税の申告期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間です。暦年課税の場合は、譲り受けた財産の総額が110万円以下であれば申告不要となっています。相続時精算課税を利用する場合は、この期間に相続時精算課税を適用する旨の申告書と添付書類を提出しなければなりません。

納付方法は、現金やe-Tax、クレジットカードなど様々な方法が利用できます。

贈与税がかからない方法と条件

住宅控除

原則として、贈与により財産を譲り受けた場合は贈与税が課されることになっています。しかし、一定の条件下では贈与税がかからないケースがあるのです。

以下では、贈与税がかからない方法と条件を解説していきます。

控除内での贈与をする

贈与税の課税方法は2種類ありますが、どちらも控除内の贈与であれば税金は課せられません。暦年課税の場合は1年につき110万円、相続時精算課税の場合は2,500万円までは税金がかからないのです。

贈与税を支払わずに財産を移したい場合は、上記の金額内に収まるように意識しましょう。

関連記事:贈与税の非課税はいくらまで?知らないと損する制度や注意点を解説

住宅取得等資金の特例を利用する

住宅取得等資金の特例は、両親または祖父母から居住用の住宅やその購入資金を一括で譲り受けた場合に利用できる特例です。

上限額は省エネ等住宅の場合が1,000万円、その他の住宅の場合が500万円となっています。本特例を利用したい場合は、申告の際に住宅取得の際の契約書を添付しなければなりません。

省エネ等住宅に該当するか否かは、その住宅の区分や性能によって判断されます。より詳しく知りたい場合は、国税庁のHPで確認しておきましょう。関連記事:【税理士監修】住宅取得等資金贈与のメリットは?非課税制度の適用条件と注意点

教育資金の一括贈与の特例を利用する

教育資金の一括贈与の特例は、30歳未満の直系卑属(子どもや孫など)が直系尊属(両親や祖父母など)から教育資金を譲り受けた場合に利用できます。

対象となる教育資金は入学費用や学費、学用品の購入費用など学校教育にかかる費用で、非課税上限額は1,500万円です。塾やピアノといった習い事にかかる費用も本制度の対象ですが、非課税上限額は500万円までとなっています。

この制度を利用して受け取った資金は、任意のタイミングで使用できる訳ではありません。教育資金が必要になったタイミングで必要分だけを引き出し、領収書などの支払いを証明する書類を金融機関に提出するというルールが設けられています。

利用の際には、教育資金口座の開設および教育資金非課税申告書の提出が必要です。

関連記事:【税理士監修】教育資金の一括贈与は非課税になる?注意点と手続き方法を解説

結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する

18歳以上50歳未満の子どもが両親・祖父母から結婚や子育て資金を一括で譲り受けた際に利用できる特例があります。この特例を利用すれば、1,000万円までが非課税になるのです。この特例は令和8年度までとなっています。

この制度を利用したい場合は、資金を受け取る側が結婚・子育て資金口座を開設したうえで非課税申告書を提出しなければなりません。ただし、50歳時点で譲り受けた財産が余っていた場合はその金額に対しての贈与税が課されてしまいます。また、期間中に贈与した方が亡くなってしまうと相続税が課せられます。

関連記事:【税理士監修】結婚・子育て資金贈与とは?概要や手続き方法、注意点を解説

おしどり贈与を利用する

おしどり贈与とは贈与税の配偶者控除のことで、一定の条件下で行われた夫婦間の贈与から最大で2,000万円を控除できる仕組みになっています。

この制度は基礎控除の110万円と併用可能で、以下の条件を満たす場合にのみ適用可能です。

  • 20年以上、婚姻関係が継続していること
  • 制度の利用が初めてであること(複数回の利用は不可能)
  • 贈与されたのが自宅またはそれを取得するための費用であること
  • 贈与があった年の翌年3月31日までに、贈与された住宅に住んでおり、その後も住み続ける予定であること

上記の条件を満たせば利用できます。しかし、住宅を取得した際に課せられる不動産取得税や登録免許税は支払いが必要となる点に注意しましょう。

関連記事:夫婦間の贈与に税金はかかる?使える特例「おしどり贈与」を紹介

関連記事:【税理士監修】贈与税の配偶者控除とは?要件や必要書類、注意点等を紹介

生活に必要なお金のやりとりは贈与ではない

原則として、日常生活を送るために必要なお金のやりとりは贈与にはなりません。具体的には、夫婦間で生活費を送る場合や子供の教育費を親が支払う場合などが挙げられます。

生活のために必要なタイミングで必要なだけ金銭を送ることは贈与にはあたらないため、税金が課される心配はありません。

ただし、生活費や教育費として受け取った金銭を貯蓄している場合や投資などに使った場合は贈与税が課せられることもあります。

贈与を行う際に注意すべき点は?

贈与契約書

せっかく贈与を行っても、制度内容を正確に把握していなければ思わぬところで税金が課されることがあります。

以下では、不本意な課税を受けないために、贈与時に注意すべき点を紹介していきます。

名義預金と見なされないように工夫する

元々のお金の持ち主と口座名義人が異なる預金を名義預金と呼びます。贈与が名義預金であると判断されると、相続の際に相続税を課される可能性があるのです。

名義預金と見なされないためには、口座名義人が自由にお金を引き出せる状況にしておかなければなりません。また、贈与契約書を作成しておくことも名義預金対策として有効です。思わぬところで税金を課されないように工夫しておきましょう。

贈与のたびに契約書を作る

名義預金を疑われた場合や、税務調査の際に贈与があったことを客観的に示せるように、贈与のたびに贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書に決まった形式はありませんが、一般的には以下の内容を記載します。

  • 贈与者の名前
  • 受贈者の名前
  • 贈与を行う日付
  • 財産の内容
  • 贈与の方法

契約書は贈与者と受贈者がそれぞれ保管するため、2通作成しなければなりません。また、不動産の贈与には収入印紙が必要です。

相続時の負担も考慮する

暦年贈与の場合、亡くなる前7年間に受けた生前贈与については相続発生時に相続財産として持ち戻すことになっています。この制度は生前贈与加算と呼ばれており、税金逃れを防ぐ目的で作られました。これまで、生前贈与加算の対象期間は3年でしたが、令和6年から対象期間が7年に拡大されています。

無計画に贈与を行っていると相続税が課せられるため、なるべく晩年での贈与は避けるようにして計画的に行うようにしましょう。

関連記事:税制改正で暦年贈与が7年に?相続税への影響や節税方法を徹底解説!

贈与税の控除や特例を活用することが節税への近道

贈与により財産を受け取ると、受け取った側に税金が課せられます。しかし、贈与税には各種控除や特例など、税額を抑えられる仕組みが整えられています。贈与がかからないようにしたい場合は、年間110万円以内にしたり贈与の目的に応じた特例を活用することを検討しましょう。

税金の話は取っ掛かりにくく難しいイメージがありますが、制度内容をよく理解して活用することが節税への近道になるのです。相続税についての疑問や節税について相談したい場合は、税理士などの専門家に依頼すると良いでしょう。本記事を参考に、贈与の方法やタイミングについて考えてみてください。

複雑な相続手続き、すべてお任せください

戸籍収集から財産評価、遺産分割協議書の作成、税務申告までワンストップで代行。あなたは故人を偲ぶ時間に集中してください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。