【税理士監修】贈与税はいくらから?家族間の贈与での贈与税や特例について解説

贈与税は、個人から財産を贈与された際にかかる税金です。原則として、父母や祖父母からの贈与の場合、年間110万円までであれば贈与税はかかりません。また、一定の条件を満たすことで、2,500万円までは贈与税が非課税となる相続時精算課税制度という課税方法も選択できます。

贈与税の課税方法はいくつかあり、適用できる控除や特例制度なども複数存在するため、「どのように贈与すればよいのか」「いくらから贈与税がかかるのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は贈与税が発生する財産の計算方法について紹介します。

また、非課税制度の適用条件や贈与時の注意点についても解説するため、贈与を検討中の方に必見の内容です。贈与税の制度について十分に確認しておくことで、安心して生前贈与を行うことができるようになります。ぜひ参考にしてみてください。

贈与税はいくらから払うの?

贈与税は、個人間での財産の受け渡しがあった場合に発生する税金です。ただし、全てのケースにおいて贈与税が課されるわけではありません。

まずは、贈与税発生の基準となる金額や贈与税の仕組みといった基本情報について解説します。

贈与税がかかるのは年間110万円を超える贈与から

贈与税は、個人から財産をもらった際にかかる税金です。贈与税が課されるのは、贈与した人ではなく贈与を受けた人となります。

贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば課税されません。一方、110万円の基礎控除を超える金額を受け取った際は、基礎控除を超える金額に対して贈与税が発生します。

なお、基礎控除以下の財産を受け取る際は、贈与税の申告も不要です。

贈与者と受贈者の関係性で税率は変わる

贈与には譲り渡す「受贈者」と受け取る「贈与者」が存在しますが、その財産は互いの関係性や年齢によって「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に分けられます。この2つのいずれに該当するかによって贈与税の金額(税率)は変わるのです。

特例贈与財産として扱われるのは、受贈者と贈与者の関係が直系卑属(直系尊属)である場合です。例えば、祖父から25歳の孫に500万円の贈与があった場合、その財産は特例贈与財産と見なされます。

一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない財産のことです。例えば、兄弟姉妹や伯父・叔母、第三者、配偶者といった関係性の方との間で発生した贈与財産は一般贈与財産に該当します。

特例贈与財産と一般贈与財産それぞれの税率については、後述する表と合わせて詳しく解説をします。

生活費には贈与税がかからない

中には、贈与財産とみなされない費用もあります。例を挙げると以下の通りです。

  • 法人からの贈与により取得した財産
  • 扶養義務者からの贈与で、通常必要な生活費や教育費と認められるもの
  • 個人から受け取る香典や花輪代、見舞金などで社会通念上相当と認められるもの など

生活費に充てるために取得した財産は、原則贈与税の対象となりません。ただし、生活費は通常の日常生活に必要な費用のことで、必要以上に高額な場合や、将来のための準備金は贈与税の対象となる可能性があります。また、生活費や教育費を使用せずに貯蓄や投資に回した場合も贈与税が課されます。

贈与税の計算方法

基礎控除である110万円を超える金額を贈与された際は、贈与税が発生します。贈与税の計算方法は以下の通りです。

  1. 贈与財産-基礎控除=課税財産の価格
  2. 課税財産の価格×税率-控除額=贈与税額

贈与税は比較的簡単に計算できます。ここでは、税率や詳しい計算方法を解説します。自身の税額を算出する際の参考にしてみてください。

特例贈与財産と一般贈与財産の税率

先ほども解説しましたが、贈与税の税率は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」の2種類によって大別されます。それぞれの税率は以下の通りです。

【一般贈与財産の税率】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

【特例贈与財産の税率】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

受贈者が18歳以上かつ直系尊属からの贈与の場合は特例贈与財産となります。直系尊属からの贈与財産に課せられる税率の方が、一般贈与財産に課せられる税率よりも低くなるのが特徴です。

例えば、20歳の息子が父親から800万円の財産を贈与されたと仮定します。この場合の贈与税額は、特例贈与財産の税率を適用し、800万円×30%-90万円=150万円です。

一方、夫婦間や兄弟間、他人からの贈与などから贈与があった際は、一般贈与財産の税率を適用させて税額を求める必要があります。一般贈与財産に該当する場合、特例贈与財産のケースよりも税額が高くなるため注意しましょう。

また、姉から妹に800万円の贈与があったとします。この場合は、一般贈与財産の税率を適用し、800万円×40%-125万円=195万円が課せられます。

相続時精算課税制度による控除

年間110万円以下の贈与を行うことを暦年贈与と言いますが、この暦年贈与以外の課税方法に相続時精算課税制度というものがあります。相続時精算課税制度は、贈与時の税額を抑えて、相続時にまとめて税金の支払いをするための制度です。

以下のような要件に該当する場合は、相続時精算課税税度を適用することが可能です。

  • 原則として60歳以上の父母または祖父母から、直系卑属(子や孫など)への贈与であること
  • 受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること

相続時精算課税制度では、贈与を受けた財産から累計2,500万円を控除できます。2,500万円以下の贈与財産には贈与税がかかりません。また、2,500万円を超える財産は控除を超えた分の金額が贈与税の対象となり、一律20%の税率が課されます。

相続時精算課税の対象となる財産は、相続税申告時の相続財産に含めて計算することになるため、節税効果は期待できません。ただし、贈与時に累計2,500万円という大きな金額を控除できるため、贈与税の負担軽減として役立ちます。

贈与税を抑えられる特例制度

贈与時は、基礎控除や相続時精算課税制度以外にも適用できる特例制度がいくつかあります。大きな金額を控除できる制度も多いため、節税効果を期待する場合は特例制度の適用を検討しましょう。

ここでは、直系尊属からの贈与に適用できる特例制度の種類と、適用要件や控除額について解説します。

教育資金の一括贈与の特例

教育資金の一括贈与の特例は、祖父母や父母などから一定の条件を満たす子どもに教育資金を一括で贈与する際に適用できる特例制度です。贈与財産のうち最大1,500万円までが非課税となります(学校以外への教育資金は500万円まで)。この特例の適用要件は以下の通りです。

  • 受贈者が30歳未満であること
  • 受贈者の前年度所得が1,000万円を超えていないこと

贈与の際は、教育資金口座の開設や、教育資金非課税申告書の提出が必要となります。また、30歳までに教育資金を使いきれなかった場合、残高に対して贈与税が課せられます。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

直系尊属から結婚や子育てに充てるための資金提供を受けた場合に適用できる制度です。最大 1,000万円まで(結婚費用は300万円まで)非課税となります。適用要件は以下の通りです。

  • 受贈者が18歳以上50歳未満であること
  • 受贈者の前年度所得が1,000万円を超えていないこと

結婚・子育て資金の受贈を受ける際も、専用口座の開設や結婚・子育て資金非課税申告書の提出が必要となります。

住宅取得等資金の非課税の特例

直系尊属から、住宅の購入や増改築にかかる費用の贈与を受けた際に適用できる制度です。最大1,000万円までが非課税となります。適用要件は以下の通りです。

  • 受贈者の年齢が18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金を使用していること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに対象の家屋に居住すること
  • 受贈者の贈与を受けた年の所得が2,000万円以下であること
    ※場合によっては1,000万円のケースもある

適用できる控除額は、住宅の条件により異なります。詳細は、国税庁のホームページにてご確認ください。

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

生前贈与を行う際の注意点

生前贈与を行う際は、注意したいポイントがいくつかあります。

生前贈与を滞りなく終えるためには、事前に注意点を確認し対策を練っておくことが大切です。特に気を付けたいポイントを3つ紹介します。

定期贈与になりそうな場合は贈与契約書を作成しておく

年間110万円の基礎控除以下の金額で暦年贈与を行う場合、税務調査により定期贈与と見なされることがあります。定期贈与とは、毎年一定額を計画的に贈与する方法です。定期贈与では贈与を受けた総額に対し、贈与税が課されます。定期贈与でないことを証明できない限り、贈与税の課税を免れることはできません。

贈与契約書を作成しておくと、贈与の事実を証明しやすくなります。また、以下のような場合にも贈与契約書のメリットを享受できるでしょう。

  • 口頭契約により、トラブルが発生したとき
  • 贈与金額や時期を確認したいとき
  • 不動産の登記手続きをするとき

相続開始前7年以内の贈与は相続税の対象になる

2023年度(令和5年度)の税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から、加算対象期間が段階的に7年に延長されることになりました。贈与から7年以内に贈与者が亡くなると、贈与された財産は相続財産として扱われ、その期間に贈与がなかったものと見なされます。そうなると、110万円以下であるかどうかは関係なく、例えば90万円の贈与であっても全額が相続財産の対象となります。

ただし、すべての財産が相続税に加算されるわけではなく、特例制度(非課税制度)を適用した財産は対象から外れます。また、相続税の課税対象となる贈与財産において、贈与時に支払った税金があれば相続税の算出時に控除可能です。

現金による生前贈与はペナルティの恐れがある

現金を直接手渡しする形で生前贈与を行う場合、「現金であれば申告しなくてもばれないだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、本来贈与税申告が必要な金額を贈与していながら無申告である場合は、追徴課税のペナルティが課されることがあるため注意が必要です。

<主なペナルティ>

税金の種類

内容 税率

無申告加算税

申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される税金

申告のタイミングに応じて5%、10%、15%、20%、30%が上乗せ

過少申告加算税

申告期限までに申告書は提出したものの、申告額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に課される税金 申告のタイミングに応じて0%、5%、10%(条件によっては15%)が上乗せ
何度も繰り返しているケースではさらに10%が上乗せ

重加算税

意図的に贈与税の申告を怠ったり、過少に申告したりした場合に課される最も重い加算税 過少申告の場合:35%、無申告の場合:40%が上乗せ

延滞税

納税が遅れた場合に、その日数に応じて課される税金 年2.4%~8.7%

また、現金では贈与金額が明確にできないため、税務署に報告した金額を否認される恐れもあります。現金手渡しはリスクが伴うため避けるのが無難です。

受贈者が普段使用している銀行口座へ振り込みをする、贈与の都度贈与契約書を作成するなど、記録に残るような贈与方法を選択しましょう。

関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説

まとめ

財産を受贈する際は、年間110万円までは非課税となります。110万円以下であれば贈与税の申告も必要ありません。また、直系尊属からの贈与財産の一定額が非課税になる特例制度や、贈与時の税負担を軽減し相続時にまとめて税金を支払う相続時精算課税といった制度もあります。
ただし、適切な形で贈与が行われていなかったり贈与税申告ができていなかったりする場合には、税務調査によりペナルティーが発生する恐れがあります。相続税を軽減するための対策として生前贈与を考えている場合は、専門家である税理士に相談するのも方法のひとつです。正しく贈与を行うことができるうえに、余分な税金を支払うリスクも回避できます。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。