不動産を同居の子に生前贈与すべき?相続との違いや注意点を解説

不動産を同居の子に生前贈与すべき?相続との違いや注意点を解説

不動産は相続の際にトラブルの原因となりやすく、同居している子に生前贈与した方がよいのかどうか悩む方も多いのではないでしょうか。判断を誤ると税負担の増加や家族間の不公平感に繋がる可能性もあり、慎重な検討が必要です。本記事では、不動産を同居の子に生前贈与するメリット・デメリット、相続との違いや手続きの注意点を解説します。不動産の承継方法に迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

不動産の生前贈与はメリットとデメリットが複雑に絡みます。

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生前贈与とは

生前贈与とは、親や祖父母が生きている間に不動産や財産を子や孫へ移す方法です。

贈与には原則として贈与税がかかりますが、年間110万円まで非課税となる「暦年課税制度」や、将来の相続財産に合算される代わりに2,500万円まで非課税とできる「相続時精算課税制度」などが利用できます。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

関連記事:贈与税の基礎控除額はどのくらい?税額の算出方法や暦年贈与についても解説

不動産を同居の子に生前贈与するメリット

メリット

不動産を同居している子に生前贈与すると、どんなメリットがあるのでしょう。

希望する相手に確実に不動産を渡せる

生前贈与の最大のメリットは、本人の意思を確実に実現できる点です。相続の場合は遺産分割協議が必要となり、遺言書があっても相続人全員の合意で内容が変わる可能性があるため、希望した相手に必ず不動産を承継させられるとは限りません。

生前贈与で名義を移しておけば、誰に渡すかを自身が明確に示せるため、意思が確実に反映されます。

関連記事:【税理士監修】遺産分割協議書は必要か?必要な例・不要な例や、作成時のポイントなどを解説

相続トラブルを未然に防げる

不動産は現金のように分けやすい資産ではないため、相続の際に「誰が住むのか」、「どう利用するのか」を巡って争いになりやすいですが、生前贈与を行えば、承継者をあらかじめ決められるため、相続人同士の対立を防ぐ効果があります。

特に同居している子に贈与すれば、生活の継続性を保ちつつ、他の相続人にも意向を明確に伝えられるので、不要なトラブルを避けやすくなるでしょう。家族関係を良好に保てる点も大きなメリットです。

子の住宅資金計画に合わせやすい

生前贈与を行えば、子の住宅ローンやリフォーム計画を円滑に進められます。親の名義のままでは金融機関の融資が難航する場合がありますが、名義を早めに移しておけば審査や担保設定がスムーズになります。

さらにリフォーム資金の借入れも容易になり、子のライフプランに沿った柔軟な資金計画を立てやすくなります。

将来的に値上がりしそうな不動産を有利に承継できる

将来値上がりが見込まれる不動産は、早めに生前贈与しておけば有利に承継できます。評価額は贈与や相続の時点の時価で決まるため、値上がり前に贈与しておけば、低い評価額で税金を計算でき、結果的に税負担を抑えられる可能性があります。

特に都市部や人気の高い地域の土地など、将来的に資産価値が上がると考えられる不動産では効果が大きいでしょう。

収益不動産を承継して資産運用を引き継げる

収益不動産を生前贈与すれば、子が早期に家賃収入を得られるため、資産運用をスムーズに引き継ぐことができます

親が相続まで所有している場合、その間の家賃収入は親に帰属し、相続財産が増えて税負担が重くなる可能性があります。生前贈与しておけば、贈与時以降の収益は子のものとなり、相続財産の増加を抑制できます。

加えて子自身が早い段階から不動産管理を経験でき、将来の安定した収入基盤を築ける点も大きなメリットでしょう。

不動産を同居の子に生前贈与するデメリット

デメリット

不動産の生前贈与には多くのメリットがある一方で注意すべき点も少なくありません。不動産を同居の子に生前贈与する際に考慮すべきデメリットについて解説します。

贈与税の負担が大きい

不動産の贈与は評価額が高額になりやすく、基礎控除110万円を超える部分に累進税率(10%~55%)が課されるため、贈与税の負担が重くなります。特に都市部の不動産など評価額が高い物件では、税額が数百万円規模になる場合も珍しくありません。

【贈与税(一般税率)の早見表】

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

不動産取得税・登録免許税がかかる

不動産を贈与すると、不動産取得税と登録免許税が発生します。相続であれば不動産取得税は非課税、登録免許税も0.4%に軽減されますが、贈与では登録免許税が2%、不動産取得税が原則4%と高率で課税されます。

項目

不動産取得税

登録免許税

相続

非課税

0.4%

贈与

4%

2%

例えば、固定資産評価額が3,000万円の場合、登録免許税だけで60万円、不動産取得税で120万円かかる計算となり、想定以上のコストになる恐れがあるでしょう。

参考:地方税法 | e-Gov 法令検索

参考:登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)

参考:不動産取得税|不動産と税金|東京都主税局

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性がある

生前贈与をすると「小規模宅地等の特例」が使えなくなり、結果的に税負担が増える可能性があります。相続であれば、自宅の土地の評価額を最大80%減らせる可能性があるため大きな節税効果が期待できます。

特に同居していた子はこの特例を受けやすい立場ですが、贈与を選ぶと制度の対象外となり損をしてしまう場合があるため注意しましょう。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例とは?計算方法や適用要件をわかりやすく解説します

相続時精算課税制度を選んだ場合のリスクがある

「相続時精算課税制度」を利用すれば、最大2,500万円まで贈与税が非課税になりますが、一度選択すると暦年課税(年間110万円の基礎控除により贈与税を避ける方法)に戻せません

また、贈与した財産は将来の相続財産に合算されるため、相続税の負担軽減には必ずしも繋がらない点にも注意しましょう。

関連記事:相続時精算課税制度とは?特別控除と新設の基礎控除を解説

贈与後の生活資金や介護への影響が生じる

不動産を贈与すると、親自身の資産が減少し、老後の生活資金や介護費用に不足が生じる可能性があります

特に不動産は資産価値が高いため、一度贈与してしまうと簡単には取り戻せず、将来的な選択肢を狭めてしまうリスクがあります。医療費や介護費用は想定以上にかかる場合が多いため、十分な生活資金を確保できるかどうかを慎重に確認したうえで判断しましょう。

他の相続人との不公平感・争いの原因になりやすい

同居している子にだけ不動産を贈与すると、他の相続人から不公平と見られる可能性があります

特別受益として持ち戻しの対象となるため、最終的に相続分の調整が必要になり、かえって遺産分割協議が複雑化する場合もあるでしょう。兄弟姉妹が複数いる家庭では、贈与が争いの火種になりやすいため、事前に他の相続人への配慮や説明が求められます。

生前贈与を選ぶか相続に任せるか、その判断ひとつで将来の税負担や家族関係に大きな影響が出ます。

迷ったときは専門家にご相談ください。

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関連記事:特別受益の「持ち戻し」「時効10年」について詳しく解説

不動産を同居の子に生前贈与する際の手続きと必要書類

不動産を生前贈与するには、相続とは異なる手続きや書類の準備が必要となります。

贈与契約書の作成と登記手続き

不動産を生前贈与するには、必ず贈与契約書を作成し登記手続きを行いましょう。口頭の約束だけでは法的に効力が不十分で、登記をしなければ第三者に対して所有権を主張できません。登記を経て初めて所有権が確定するため、贈与の手続き上必須です。

登記は専門知識が必要になるため、司法書士に依頼するケースが一般的で、その際は報酬や手数料などの費用が発生します。

参考:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~ | 法務省

関連記事:【2024年4月開始】相続登記が義務化!放置のリスクや罰則、よくある質問を紹介

固定資産評価額による税額計算

不動産の贈与にかかる税金は、「固定資産税評価額」を基準に計算されることがあります。実際の売買価格ではなく、自治体が定めた評価額が用いられるため注意しましょう。

この評価額は市区町村が発行する「固定資産評価証明書」で確認でき、贈与税や不動産取得税の算定に不可欠な書類となります。さらに、固定資産評価額は毎年見直されるため、同じ不動産でも贈与を行う年度によって税負担が変わる可能性があります。

贈与を検討する際には、必ず最新の評価額を確認して計画を立てましょう。

参考:【税理士監修】不動産評価額とは?調べ方や使用用途について解説

贈与税の申告と期限

贈与税の申告期限は贈与を受けた翌年の3月15日までと定められており、期限を過ぎると無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される恐れがあります。贈与額の多少にかかわらず、課税対象となる場合は必ず申告しなければなりません。

負担を避けるためにも、贈与契約書や評価証明書などの必要書類を早めに準備し、期限内に確実に申告を済ませましょう。

実際の贈与契約書の作成や登記申請、税務申告は専門知識が必要です。

この記事を読んで「自分で進めるのは不安」と感じた方は、ぜひご相談ください。

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参考:No.4429 贈与税の申告と納税|国税庁

参考:延滞税の割合|国税庁

関連記事:タンス預金の無申告は税務署にばれる!最適な相続・贈与税対策は?

不動産の生前贈与と相続の比較

不動産を同居の子へ承継する場合でも、「生前贈与」と「相続」では税金や費用、利用できる制度に違いがあります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて選択しましょう。

贈与にかかる税金と相続にかかる税金の違い

税金の負担は相続の方が軽くなるケースが多いです。生前贈与では贈与税に加えて不動産取得税や登録免許税も発生し、複数の税金を負担する必要があります。

一方、相続の場合は不動産取得税が非課税となり、登録免許税も0.4%に軽減されるため、結果的に同じ不動産を承継しても税額の差は大きくなります。

税金面だけを比較すれば、相続の方が有利と言えるでしょう。

名義変更にかかる費用の違い

名義変更にかかる費用は、相続よりも贈与の方が高額になるのが一般的です。贈与による名義変更は固定資産税評価額の2%が登録免許税としてかかり、さらに贈与契約書の作成費用や司法書士への依頼料が必要となる場合があります。

名義変更のコスト面でも相続の方が有利と言えます。

適用できる特例・控除の違い

適用できる特例や控除についても、相続の方が有利です。相続では小規模宅地等の特例を利用すれば最大80%の評価減が可能であり、さらに相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)も適用されるため、大幅な節税に繋がるケースがあります。

特に同居の子が相続人の場合は利用条件を満たしやすい点もメリットです。一方、生前贈与ではこれらの特例が原則適用されないため、結果として税負担が増える可能性があります。

参考:No.4152 相続税の計算|国税庁

不動産の生前贈与でお悩みの方は専門家に相談

不動産の生前贈与は、贈与税や不動産取得税などの税負担が重くなるだけでなく、小規模宅地等の特例が使えない、相続時精算課税の選択による不利益、さらには他の相続人との不公平感による争いなど、多くのリスクが伴います。

こうした複雑な税務や相続の問題は、自己判断で進めると将来のトラブルに繋がりかねません。安心して贈与を行うには、事前に専門家へ相談し、最適な方法を検討するのが賢明でしょう

小谷野税理士法人では、不動産贈与に関する税務相談から申告手続き、将来の相続対策まで幅広くサポートしています。不動産の生前贈与を検討中の方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。