寄付や遺贈で相続税はどうなる?非課税の条件と注意点をわかりやすく解説

寄付や遺贈で相続税はどうなる?非課税の条件と注意点をわかりやすく解説

遺産を寄付した場合、相続税はかかるのか疑問に思う方も多いでしょう。寄付や遺贈は社会貢献に繋がる一方で、相続税の課税対象になるケースと、非課税として扱われるケースがあります。本記事では、寄付や遺贈を行った際の相続税の基本的な考え方や非課税となる条件、手続きの流れ、注意点をわかりやすく解説します。相続財産の寄付を検討している方や税金面の扱いを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

相続財産の寄付や遺贈でお悩みの方へ

税金の扱いや手続きの流れはケースによって異なります。

小谷野税理士法人では、相続税・贈与税に詳しい税理士が一人ひとりの状況に合わせて最適な方法をご提案します。

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生前に寄付を決めていた場合(遺贈寄付)の相続税の扱い

相続税の計算をする女性

遺言で財産を寄付した場合、相続税はどうなるのでしょうか。寄付先によって課税の有無が変わる「遺贈寄付」について、わかりやすく解説します。

遺言で寄付を指定した場合は、相続税の課税対象外になる

被相続人(亡くなった方)が遺言書で「財産を寄付する」と決めていた場合、その寄付は相続が始まった時点で成立します。

つまり、財産が相続人の手に渡る前に寄付として扱われるため、相続税の対象外になります。

ただし、寄付先が以下のような公益性のある団体であることが条件です。

寄付先

具体例

各省庁、国立大学、独立行政法人など

地方公共団体

都道府県、市区町村など

公益法人

公益社団法人、公益財団法人など(公益認定を受けている法人)

認定NPO法人

内閣府または都道府県の認定を受けたNPO法人

これらの団体に対する寄付は、社会的な公益性が高いと認められているため、相続税が課されません。

参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁

公益性のない団体や個人への寄付は課税対象になる

一方で、寄付先が一般社団法人、任意団体、または個人である場合には、相続税が課されます。

たとえ遺言書で「寄付する」と明記していても、非課税対象外の団体に寄付した場合は通常の遺贈と同じ扱いになります。

参考:No.4105 相続税がかかる財産|国税庁

「準確定申告」で所得税の控除が受けられる場合がある

被相続人(亡くなった方)が生前に寄付を行っていた場合、その寄付金は「準確定申告」で所得税の寄附金控除を受けられます。

準確定申告とは、亡くなった方の代わりに相続人が行う最後の確定申告で、亡くなった日までの所得や支出を対象とします。

寄附金控除を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があり、これらを満たしていれば、(寄付金額 − 2,000円)を所得から控除できます。

  • 寄付したのが被相続人本人の生前中であること(亡くなった後の寄付は対象外)
  • 寄付先が税法上の指定対象団体であること
  • 寄付金額が2,000円を超えていること
  • 寄付先から発行された寄附金受領証明書を申告書に添付すること

申告は相続人が代表して行い、提出期限は被相続人が亡くなった日の翌日から4ヵ月以内です。期限を過ぎると控除が受けられないため、早めの準備が大切です。

参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁

参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁

相続後に相続人が寄付した場合の相続税の扱い

被相続人が亡くなる前に遺言で寄付を指定していた場合は非課税となることは説明しましたが、相続人が遺産を受け取った後に寄付を行った場合はどうなるのでしょうか。

寄付の時期や手続きによって、課税・非課税の扱いが大きく異なります。相続後に寄付を行った場合の税務上の取り扱いについて解説します。

相続後に寄付しても原則として相続税の課税対象になる

相続人が遺産をいったん受け取った後に、自身の判断で寄付を行った場合、その財産は原則として相続税の課税対象となります。

相続税は「相続開始時点の財産評価額」を基準に計算されるため、相続後に寄付しても自動的に非課税とはなりません。

一度課税が確定した後に寄付しても、既に納付した税金が還付されることはない点に注意しましょう。

相続税申告期限までに寄付すれば非課税になる特例がある

ただし、相続開始から10ヵ月以内の相続税申告期限までに、国・地方公共団体・公益法人・認定NPO法人などの公益性のある団体へ寄付した場合は、その寄付部分について相続税が非課税になります

この特例は、「相続後でも公共のために財産を使うなら税負担を軽くする」という趣旨で設けられています。

期限を過ぎて寄付した場合は特例が使えないため、寄付を検討する場合は10ヵ月以内に手続きを完了させましょう。

参考:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁

寄付金控除を使えば所得税・住民税も軽減できる

相続人が相続後に寄付を行った場合、上記の相続税特例とは別に、所得税や住民税の寄附金控除を受けられる可能性があります。

この控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があり、これらを満たしていれば、(寄付金額 − 2,000円)を所得から控除できます。

  • 寄付先が国・地方公共団体・公益法人・認定NPO法人などの控除対象法人であること
  • 寄付金額が2,000円を超えていること
  • 寄付先から発行された寄附金受領証明書を確定申告書に添付すること

申告は翌年の確定申告期間内(通常2月16日〜3月15日)に行いましょう。

相続税の非課税特例や寄附金控除の要件は、寄付先や期限によって大きく変わります。

手続きや税務判断に迷われる方は、専門家に確認することで確実に進められます。

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参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁

寄付や遺贈を行うための手続きと流れ

相続税の計算をする夫婦

相続財産を寄付したい場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。

寄付の時期や方法によって必要な書類や申告内容が異なります。遺贈寄付や相続後の寄付を行う際の具体的な流れについて解説します。

遺言書で寄付先を明記し遺言執行者を指定する

遺贈寄付を行う場合は、遺言書に寄付先の正式名称と寄付内容を明確に記載し、遺言執行者を指定しておきましょう

これにより、相続発生後の手続きが円滑に進み、寄付者の意向どおりに資産を移転できます。

内容が曖昧だと、相続人と寄付先の間でトラブルが生じるおそれがあるため、できるだけ具体的に記載しましょう。

参考:遺言執行者の選任 | 裁判所

相続発生後に寄付先へ資産を引き渡し受領証を取得する

相続人が相続財産の一部を寄付する場合は、寄付先と手続きを行い、財産を引き渡した証明として受領証を受け取る必要があります

この受領証は、後に非課税や寄附金控除を申告する際の必須書類となるため、必ず原本を大切に保管しておきましょう。

相続税申告書に寄付の内容と証明書類を添付する

寄付を行った場合は、寄付金額・寄付先の名称・寄付日などを相続税申告書に正確に記載し、受領証などの証明書類を添付します

証明書類が不足していると、非課税や控除が認められない場合もあるため、提出書類に漏れがないか入念に確認してください。

参考:相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)|国税庁

寄付後に税務署へ非課税や控除の適用を申告する

寄付を行っただけでは、自動的に非課税や控除は適用されません。

相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに、寄付の事実を税務署へ報告し、受領証や証明書などの必要書類を添付して申告する必要があります

期限を過ぎると特例が受けられないため、早めの準備を心がけましょう。

遺言書の作成や寄付手続きは、一度間違えると修正が難しくなる場合があります。

早い段階で税理士に相談すれば、税金・手続き・家族間のトラブルを防げます。

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寄付や遺贈を行う際に注意すべきポイント

寄付や遺贈を行えば必ず非課税になるわけではありません。

寄付先の要件や寄付の方法を誤ると、想定外の税負担や相続トラブルに繋がる場合もあるため、寄付や遺贈を行う前に確認しておくべき注意点について解説します。

寄付先が要件を満たさないと非課税扱いを受けられない

寄付が非課税扱いになるのは、国・自治体・公益法人・認定NPO法人など、法令で定められた「公益性のある団体」に限られます。

たとえ社会貢献目的であっても、一般社団法人や任意団体などは対象外です。

寄付を行う前に、国税庁のサイトなどで寄付先が認定団体に該当するかを必ず確認しましょう。

寄付が遺留分を侵害すると相続人とのトラブルに繋がる

寄付や遺贈の内容が、相続人に保障された遺留分(最低限の取り分)を侵害している場合、

他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります

たとえ善意の寄付でも、争いの原因になりかねないため、遺言書を作成する前に家族と十分に話し合い、合意を得ておくのが大切です。

財産を現金化してから寄付すると非課税特例の対象外になる

不動産や株式などの財産を一度売却して現金化してから寄付すると、相続税の非課税特例は適用されません。非課税になるのは、現金ではなく相続財産そのものを寄付した場合に限られます

また、売却益が出た場合には譲渡所得税が課される可能性もあるため、寄付の前に税理士などの専門家に相談して、最も有利な方法を検討しましょう。

寄付を受けた法人に法人税が課される場合がある

寄付を受ける側の法人が公益法人や認定NPO法人でない場合、受け取った財産が「受贈益」として法人税の課税対象になる場合があります

寄付を行う際は、自分の税負担だけでなく、寄付先の税務上の影響も考慮する必要があります。お互いに不利益が生じないよう、事前に寄付先と確認し、双方にとって適切な寄付方法を選びましょう。

寄付や遺贈に関して不安がある方は専門家に相談を

寄付や遺贈は社会貢献につながる一方で、相続税・贈与税・譲渡所得税など複数の税金が関わるため、思わぬ課税やトラブルが生じるリスクがあります。また、寄付先の要件や手続きの時期を誤ると、非課税の特例が受けられない場合もあります。

こうしたリスクを防ぐには、税務と相続の両面に精通した専門家のサポートが有効でしょう

小谷野税理士法人では、遺贈寄付や相続税控除の実務に詳しい税理士が、最適な寄付方法や手続きの進め方を丁寧にサポートします。寄付や遺贈を安心して進めたい方は、ぜひ一度小谷野税理士法人へご相談ください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。