他人からお金や土地を貰った場合の贈与税はいくら?非課税のケースも
贈与税は、親や祖父母から財産を貰った場合と、それ以外の他人から貰った場合とで税率が変わります。また、土地・マンション・車などは「時価」をもとに贈与税を計算するため、正しい評価方法を知っておく必要があります。この記事では、他人から財産を貰った場合の贈与税額シミュレーションや、非課税となるケース、合法的に税負担を抑える方法などを解説します。
目次
「贈与税」と「他人」の定義は?基本をおさらい

贈与税は「誰から」「どのくらい」貰ったかによって、課税の有無や税率が変わります。例えば親からの贈与と、友人からの贈与では、同じ金額でも適用される税率が異なります。
まずは、贈与税の基本的な仕組みと、「他人から貰う」とはどういう状態を指すのかを確認しましょう。
人からお金や物や土地などを貰うと「貰った側」に贈与税がかかる
贈与税は、財産を貰った人に課される税金です。あげた側ではなく、受け取った側が納税します。なぜなら、贈与税は「財産を無償で得たこと」に対して課される税金だからです。貰った財産の価値に応じて税額が決まります。
財産とは、現金・預金・不動産・株式・貴金属などが挙げられます。
贈与税の課税方法は、暦年課税と相続時精算課税の2種類です。このうち一般的なのは、年間に貰った金額で税額を計算する「暦年課税」です。
一方「相続時精算課税」は、主に祖父母・父母から、子や孫への贈与に使える制度で、他人間の贈与では使えません。よってこの記事では「暦年課税」を前提に解説します。
相続時精算課税について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:相続時精算課税制度とは?特別控除と新設の基礎控除を解説
参考:財産をもらったとき|国税庁
参考:贈与税がかかる財産|国税庁
いくらから贈与税がかかる?非課税枠は年間110万円
贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。つまり、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の合計額が110万円以下なら、贈与税はかかりません。
例えば友人から100万円を貰った場合は非課税ですが、150万円を貰うと超過分の40万円は課税対象です。また、複数の人から贈与を受けた場合は合計して判断されます。例えば「友人から50万円+恋人から80万円=計130万円」なら、課税対象です。
関連記事:110万円以下なら贈与税は申告不要?複数人・夫婦間の贈与に注意
親族でも「他人と同じ税率」になる?贈与税の計算方法に注意
贈与税の税率は、贈与者(=あげる側)との関係によって「特例税率」と「一般税率」に分かれます。どちらも最大税率は55%ですが、特例税率の方が控除額が大きく税金面で有利です。
「特例税率」は、直系尊属(親・祖父母・曽祖父母・養父母など)から18歳以上の子や孫に贈与した場合に適用されます。一方、それ以外の贈与は「一般税率」です。つまり親族であっても、関係性によっては他人と同じ一般税率が適用されるため注意が必要です。
例えば下記の人から財産を受け取った場合、家族的な繋がりがあっても、他人と同じ「一般税率」です。
- 配偶者
- 兄弟姉妹
- 配偶者の直系尊属(例:義母→嫁)
- おじ・おば
- 婚約者
- 内縁の配偶者
- 直系尊属から未成年への贈与
以後、この記事では上記が贈与者に該当するケースを「他人から貰う」と表現します。
次に、他人から貰った際の「一般税率」のシミュレーションをします。「この額の財産を他人から貰ったら、このくらいの贈与税を納める」という参考にしてください。
|
他人から貰った額 |
課税価格 (貰った額ー110万円) |
税率 |
控除額 |
贈与税の額 |
|
10万円 |
0円 |
ー |
ー |
0円 |
|
100万円 |
0円 |
ー |
ー |
0円 |
|
110万円 |
0円 |
ー |
ー |
0円 |
|
500万円 |
390万円 |
20% |
25万円 |
53万円 |
|
1,000万円 |
890万円 |
40% |
125万円 |
231万円 |
|
1,500万円 |
1,390万円 |
45% |
175万円 |
450万5,000円 |
|
3,000万円 |
2,890万円 |
50% |
250万円 |
1,195万 |
|
3,500万円 |
3,390万円 |
55% |
400万円 |
1,464万5,000円 |
参考:No.4408|国税庁
なお、親などから贈与を受けた場合の「特例税率」は下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】贈与税の税率は高いのか?計算方法と贈与税を抑えられる非課税制度も併せて解説
「やさしい相続相談センター」では、相続だけでなく贈与のご相談も受けています。自分のケースではいくら贈与税が発生するのか、贈与税を抑える手段があるのかなどお悩みの方は、初回無料相談をご利用ください。
他人から土地・マンション・車などを貰った場合の評価方法

土地や建物、車などの財産を貰った場合は、「時価」をもとに贈与税を計算します。ここでいう時価とは、不動産会社や中古車販売会社が出す査定額ではなく、国税庁が定めた評価基準に基づく金額です。
したがって、査定業者に依頼して調べる必要はありません。以下、土地・家屋・マンション・車の評価方法を解説します。
土地の場合
土地の評価額は、国税庁が定める「路線価方式」または「倍率方式」で求めます。
市街地などの土地は路線価方式で、郊外など路線価が設定されていない地域では倍率方式で計算します。路線価や評価倍率は国税庁のサイトで無料公開されています。
土地の形がいびつだったり、傾斜などがあったりする場合は、評価額が下がるケースもあるため確認しましょう。
土地の評価の計算方法について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】相続税の土地評価額の計算方法とは?土地評価額を抑える方法も解説!
関連記事:【税理士監修】不動産評価額とは?調べ方や使用用途について解説
参考:No.4602|国税庁
参考:No.4617|国税庁
参考:不整形地の評価|国税庁
家屋の場合
家屋(建物)の評価額は、基本的に固定資産税評価額をそのまま使います。「固定資産税納税通知書」に記載されている金額がその評価額です。
例えば中古住宅を贈与で受け取った場合でも、不動産会社の査定額や購入時の価格ではなく「固定資産税評価額」が基準です。新築・中古にかかわらず、評価基準は共通しています。
ただし、第三者に貸している場合や建設中の場合などは、計算方法が異なります。家屋の評価方法について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】建物の相続税評価額を計算する方法とは?注意点や節税方法について解説
参考:アパート等の貸家の評価|国税庁
参考:No.4629|国税庁
マンションの場合
マンションの評価は、他の不動産と比べて複雑です。基本的には、土地部分(敷地利用権)と建物部分(区分所有権)の合計額に、さらに区分所有補正率を掛けて評価額を算出します。
区分所有補正率はマンションの築年数や階数などによって変動するため、自分で正確に計算するのは困難です。誤った評価で申告すると追徴課税のリスクもあるため、税理士への相談をおすすめします。
参考:No.4667|国税庁
「やさしい相続相談センター」では、マンションの評価も正確に算出いたします。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
車の場合
車の評価額は、中古車市場の相場で判断します。中古車販売会社の下取り相場サイトで調べた金額をもとにすれば良く、ディーラーによる査定書などは基本的に不要です。
車の贈与について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:車の名義変更で贈与税はかかる?手続きの流れと税務上の注意点を徹底解説
参考:第5章 第1節|国税庁
他人から受け取ったお金が非課税となるケース
他人から受け取った金品でも、一定の条件を満たす場合には贈与税はかかりません。ここでは主なケースを紹介します。
常識の範囲内の慶弔・お祝い・お見舞い
結婚祝いや出産祝いといったお祝いやお見舞いの金品は、常識の範囲内であれば贈与税はかかりません。社会的な慣習として行われる贈答は、贈与税の対象外とされているからです。
例えば、結婚式で50人の招待客から30,000円ずつご祝儀を受け取ったら合計は150万円ですが、贈与税は非課税です。しかし数百万円の高級車など、常識を超える高額な金品を貰うと「社会的な慣習」を超えると判断され、課税対象になる場合があります。
参考:No.4405|国税庁
直接またはすぐに支払う生活費・学費
夫婦・兄弟姉妹など扶養義務者から受け取った生活費や教育費は、日常生活に必要な範囲で都度使う場合に限り非課税です。よって、数年分の生活費をまとめて渡したり、受け取ったお金を預金や投資に回したりすると、課税対象となります。
なお、扶養義務者ではない他人から貰った生活費については国税庁HPで言及していないため、課税対象となる可能性が高いでしょう。不安な場合は事前に税務署に相談するのがおすすめです。
関連記事:【税理士監修】夫婦間でも贈与税は発生する。贈与税が発生しないパターンや疑問について解説
贈与ではなく、返済の意思が明確な貸付
お金を受け取る際に返済の意思が明確であれば、贈与ではなく「貸付」として扱われるため贈与税はかかりません。ただし、名目だけの貸し借りは税務署に否認されるため、契約書や返済記録などの証拠を残す必要があります。
贈与とは、「無償で財産を与える契約」です(民法第549条)。一方で、貸付(消費貸借)は「同種・同等の物を返す約束で金銭を受け取る契約」を指します(民法第587条)。
つまり返済の約束があり、実際に返済が行われていれば、贈与ではなく貸付として認められます。
例えば知人に150万円を借り、借用書を作成して毎月一定額を返している場合は、明確な貸付です。贈与税はかかりません。
しかし、書面がなく「出世払い」「ある時に返して」といった曖昧なやり取りで150万円を受け取った場合は要注意です。実際に返済が行われていない限り、税務署から実質的な贈与と判断される可能性があります。
贈与認定を防ぐために、返済契約の書面・振込履歴・返済実績などを整理しておきましょう。
結婚歴20年以上の夫婦間での住宅or住宅購入用資金の贈与
結婚して20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産またはその購入資金を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税になる特例があります。基礎控除110万円と合わせれば、最大2,110万円まで贈与税がかかりません。
この特例は「配偶者控除」「おしどり贈与」などとも呼ばれます。詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】贈与税の配偶者控除とは?要件や必要書類、注意点等を紹介
関連記事:夫婦間の贈与に税金はかかる?使える特例「おしどり贈与」を紹介
参考:No.4452|国税庁
他人への贈与で合法的に税負担を抑える方法

子・孫以外の他人に土地や不動産を渡したい場合、契約の形や手続きを工夫すれば、税負担を軽くできる場合があります。ただし扱いを誤ると「みなし贈与」とされるリスクがあるため注意しましょう。
贈与税は税率が最大55%と高く、特例も子・孫向けが中心です。そのため、贈与ではなく売買として処理すれば、譲渡所得税(概ね20〜39%)になる場合があります。
ただし売買契約書や実際の金銭授受などが必要で、形式だけの売買は認められません。また、著しく安い価格で売ると、差額部分が「みなし贈与」と判断される可能性があるため注意が必要です。
また、土地を共有名義にして段階的に持分を移す方法もあります。年間110万円の基礎控除を活用し数年に分けて贈与すれば、一度に贈与を行うよりも税負担を抑えられます。ただし毎回の登記手続きが必要であり、司法書士や税理士など専門家の関与が欠かせません。
こういった節税策は、手続きを誤ると追徴課税のリスクもあります。実行前に税理士に相談して設計や契約を進めると良いでしょう。
贈与税を抑える方法を確認したい方は早めにご相談ください
この記事では、他人から財産を貰った場合の贈与税について解説しました。
他人からの贈与は、親からの贈与よりも税率が高く、使える特例も限られています。過剰な税負担を抑えるためにも、基礎控除の活用や財産の正しい評価が必要です。一方で、契約の形や贈与の時期を工夫すれば、税負担を軽くできるケースもあります。
ただし、贈与税の計算や申告は複雑です。自力で行うのが不安な方や、税額を抑えたい方は、税理士にご相談ください。税理士は、評価額の算定・契約内容の整備・貸付や共有化の設計など、税負担を抑えつつリスクを防ぐサポートができます。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。