1億円の遺産を相続したら相続税はいくら?家族構成別の税額目安と計算方法を解説

1億円の遺産を相続したら相続税はいくら?家族構成別の税額目安と計算方法を解説

1億円の遺産を相続したとき、相続税は「0円〜1,680万円」となります。家族構成や控除の有無によって税額が大きく変わるため、目安を知っておくと良いでしょう。本記事では、1億円の遺産を相続した場合の相続税額を家族構成別に比較し、計算の手順や節税に活用できる特例、申告までの流れをわかりやすく解説します。相続税の金額や手続きの流れを具体的に知りたい方は、最後までご覧ください。

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1億円の遺産で相続税はいくらになる?

1億円の遺産を相続した場合、相続税は「0円〜1,680万円」です。この差は、相続人の人数や家族構成、適用できる控除や加算の違いによって生じます。

以下の早見表では、家族構成ごとの相続税額の目安をまとめています。自分の家族構成に近いケースを参考に、おおよその税負担を確認してみましょう。

相続人の構成

基礎控除額

課税対象額

相続税額目安

法定相続人なし

(遺贈)

3,000万円

7,000万円

1,680万円

(2割加算対象)

兄弟姉妹1人

3,600万円

6,400万円

1,464万円

(2割加算対象)

甥または姪1人

(代襲相続)

3,600万円

6,400万円

1,464万円

(2割加算対象)

子1人

3,600万円

6,400万円

1,220万円

配偶者+子1人

4,200万円

5,800万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)

子:385万円

子2人

4,200万円

5,800万円

各385万円

配偶者+母親のみ

4,200万円

5,800万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)

母:240万円

子3人

4,800万円

5,200万円

各210万円

配偶者+父母

4,800万円

5,200万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)父母:各86万円

配偶者+兄弟姉妹1人

4,200万円

5,800万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)兄弟姉妹:201万円(2割加算対象)

配偶者+子2人

4,800万円

5,200万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)

子:各145万円

配偶者+子3人

5,400万円

4,600万円

配偶者:0円

(配偶者控除適用)

子:各77万円

配偶者のみ

3,600万円

6,400万円

0円

(配偶者控除適用)

配偶者がいる場合は「配偶者控除」により最大1億6,000万円まで非課税となるため、配偶者に相続税はかかりません。

また、配偶者が相続人に含まれる場合は相続分が大きく控除も適用されるため、他の相続人の取り分が少なくなり、全体の税負担は軽くなります。おおむね100万〜200万円台にとどまるケースが多いでしょう。

一方、配偶者がいない場合は控除が減り、子どものみの相続で300万〜500万円前後、兄弟姉妹や甥・姪の場合は「2割加算」で1,400万円超になる場合もあります。

ご自身の家族構成では相続税がどのくらいになるのか、不安な方も多いでしょう。

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参考:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

参考:No.4157 相続税額の2割加算|国税庁

関連記事:【税理士監修】相続税の配偶者控除とは?計算方法や申告方法をわかりやすく解説

関連記事:相続税の2割加算の対象者は孫だけじゃない!ケース別の対象者について解説

1億円の相続税を計算する手順

相続税の計算をする女性

そもそも1億円の遺産を相続するとき、相続税はどのように計算するのでしょうか。相続税を求めるための基本的な流れについて解説します。

「課税遺産総額」を算出する

まず、相続税の対象となる金額(課税遺産総額)を求めます。遺産総額から以下の基礎控除額を差し引いた残りが課税対象です。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

参考:No.4152 相続税の計算|国税庁

関連記事:【税理士監修】相続税の基礎控除と法定相続人の解説。相続税の申告が不要になるケースは?

「法定相続分」で分けて取り分を決める

次に、課税遺産総額を法定相続分(法律で定められた割合)で分けます。法定相続分は、相続人の関係性によって以下のように決まっています。

【法定相続分の速見表】

相続人の組み合わせ

配偶者の相続分

子の相続分

父母の相続分

兄弟姉妹の相続分

配偶者と子

1/2

1/2

(均等)

配偶者と父母

2/3

1/3

(均等)

配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4

(均等)

配偶者のみ

全額

子のみ

全額

(均等)

参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

「速算表の税率」をかけて相続税を計算する

法定相続分で分けた金額に、国税庁が定める速算表の税率をかけて相続税を算出します。金額が大きいほど税率が上がる「累進課税方式」が採用されています。

【相続税の速算表】

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超から3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超から5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超から1億円以下

30%

700万円

1億円超から2億円以下

40%

1,700万円

2億円超から3億円以下

45%

2,700万円

3億円超から6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

参考:No.4155 相続税の税率|国税

計算後に出た各相続人の税額を合計し、全体の相続税額を求めます。そのうえで「配偶者控除」や「障害者控除」などを適用し、最終的な納税額が確定します。

関連記事:【税理士監修】早見表付き:相続税の計算方法や大まかな税額を把握しておこう

相続税がかかる財産とかからない財産

相続の対象となる財産には、どのようなものが含まれるのでしょうか。課税の対象になる財産・非課税となる財産・控除できる費用について解説します。

課税対象となる財産

相続税の課税対象には、被相続人が保有していたすべての財産が含まれます。

預貯金・不動産・有価証券・美術品などのほか、死亡によって取得する「みなし相続財産」も課税対象です。代表的な「みなし相続財産」には、以下のようなものがあります。

  • 生命保険金
  • 死亡退職金
  • 個人年金の受給権

これらは名義上は「相続」ではなくとも、実質的に死亡に伴って取得する財産として扱われます。

参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

参考:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

関連記事:遺産相続で確定申告が必要になるのはいくらから?

非課税扱いになる財産

ただし、すべての財産に相続税が課されるわけではありません。

一定の条件を満たす財産は、非課税として扱われます。代表的なものは以下の通りです。

  • 墓地・墓石・仏壇・仏具などの祭祀に関わる財産
  • 生命保険金・死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額

これらは、生活や信仰に密接した性質を持つため、相続税法上で特別に保護されています。

参考:No.4108 相続税がかからない財産|国税庁

関連記事:【税理士監修】遺産への相続税はいくらまで無税になるのか。控除や減税のポイントを解説

控除できる費用・債務

相続税の計算では、非課税財産とは別に、一定の費用や債務を遺産総額から差し引く(控除する)ことができます。対象となるのは次のような項目です。

  • 被相続人の借入金・未払金・未払医療費などの債務
  • 通夜・葬儀・火葬・埋葬にかかる実費(葬式費用)

ただし、香典返しなど葬儀に直接関係しない支出は控除対象外となるため注意しましょう。

参考:No.4126 相続財産から控除できる債務|国税庁

参考:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|国税庁

1億円の遺産にかかる相続税を抑えるための方法

相続税の負担を少しでも軽くするには、どのような制度を利用すればよいのでしょうか。相続税を抑えるために活用できる主な制度について解説します。

小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた自宅の土地や、事業・賃貸に使っていた土地については、「小規模宅地等の特例」を利用すれば、最大80%まで評価額を減額できます。

これにより、土地の評価額が大幅に下がるため、相続税の負担を大きく抑えられます。適用を受けるには、相続人がその土地を一定期間利用・保有するなどの要件を満たす必要があります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例とは?計算方法や適用要件をわかりやすく解説します

生前贈与

相続の前に少しずつ財産を贈与しておけば、将来の相続税を抑えられます。毎年110万円までの「暦年贈与」は非課税で行えるほか、「相続時精算課税制度」を利用すれば、最大2,500万円まで贈与税をかけずに贈与できます

ただし、相続時精算課税制度は贈与時の課税を先送りする仕組みであり、相続発生時にそれまでの贈与分を相続財産に合算して精算するため、実質的に「相続税の前倒し」と考えた方が良いでしょう。

また、死亡前7年以内に行った贈与は原則として相続財産に加算されます。令和6年以降は加算期間が「3年」から「7年」に順次延長され、4〜7年前の贈与については合計100万円までが加算対象外となっています。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

関連記事:【税理士監修】生前贈与とは?メリットや注意点について徹底解説

関連記事:相続時精算課税制度とは?特別控除と新設の基礎控除を解説

関連記事:税制改正で暦年贈与が7年に?相続税への影響や節税方法を徹底解説!

各種税額控除

相続税の計算後には、配偶者控除をはじめとする複数の税額控除を活用できます。これらを適切に利用すれば、最終的な納税額を大幅に抑えられるでしょう。

控除の種類

説明

配偶者控除

1億6,000万円または法定相続分までの金額が非課税となる

未成年者控除

18歳になるまでの年数×10万円を相続税から控除できる

障害者控除

85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)を控除できる

相次相続控除

前回の相続から10年以内に再び相続がある場合、前回の税額の一部を控除できる

節税対策は、適用条件や時期を誤ると効果が得られない場合があります。

小谷野税理士法人では、特例適用や贈与計画を含めた相続税対策をトータルでサポートしています。

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参考:No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

参考:No.4167 障害者の税額控除|国税庁

参考:No.4168 相次相続控除|国税庁

関連記事:【税理士監修】相続税の障害者控除を解説。適用要件や計算方法、申告不要となるケースまで

相続税の申告・納税の流れ

生活資金

相続税は、どのような手続きで申告や納付を行うのでしょうか。申告から納税までの基本的な流れについて解説します。

申告の対象を確認する

相続税の申告が必要かどうか、遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるか否かで判断しましょう。基礎控除額を超える場合、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納付しなければなりません。

また、たとえ相続税が発生しない場合でも、小規模宅地等の特例などを適用する場合は、

特例の適用を受けるために申告書の提出が必要となるので注意しましょう。

財産を評価し、申告書を作成する

相続税を正確に計算するためには、相続財産の内容を把握し、評価額を算出しましょう。その際に必要となる主な書類は以下の通りです。

書類

内容

戸籍謄本

相続人の確定に使用する

遺産分割協議書

各相続人が取得する財産の内容を明記する

登記事項証明書・固定資産評価証明書

不動産の所有状況と評価額を確認する

預貯金残高証明書

相続開始時点の預貯金額を証明する

これらの情報をもとに、財産ごとの評価額を整理し、基礎控除や特例を反映した「課税遺産総額」を計算して相続税申告書を作成します。

税務署へ申告し、相続税を納付する

書類をそろえたら、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に、税務署へ申告書を提出しましょう。相続税は原則として現金による一括納付が必要ですが、資金が不足する場合には、一定の条件を満たせば以下のような方法が認められます。

  • 延納:利子税を支払いながら分割して納付する方法
  • 物納:不動産や有価証券など、現金以外で納付する方法

延納の場合は利子税が発生するため、早めに資金計画を立てる必要があります。また、納期限を過ぎると加算税や延滞税が課される可能性があるため、余裕をもって手続きを行いましょう。

参考:No.4211 相続税の延納|国税庁

参考:No.4214 相続税の物納|国税庁

1億円の相続税に不安がある方は専門家に相談

1億円規模の相続では、控除や特例の使い方次第で数百万円単位の差が生じるケースがあります。配偶者控除や小規模宅地等の特例を正しく適用できない場合、必要以上の相続税を負担してしまう可能性もあるでしょう。

相続税の計算や申告は複雑で、家族構成や財産の内容によって最適な方法が変わるため、自己判断だけでは限界があります。こうした不安を感じたら、相続税の専門家に相談するのが最善です

小谷野税理士法人では、1億円規模の相続にも対応した豊富な実績をもとに、申告から節税対策までをトータルでサポートしています。相続税の不安を解消したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。