数次相続で相続税はかかる?基礎控除の考え方や手続きの流れまとめ
数次相続とは一次相続の遺産分割が終わる前に相続人が亡くなり、二次相続が発生するケースを指します。相続が連続して起きるため、相続人の数が増え手続きや相続税申告が複雑化しやすい点が特徴です。数次相続が発生しても一次相続の基礎控除は増えませんが、一定の条件を満たす場合には「相次相続控除」が適用され、負担を軽減できる場合もあります。本記事では数次相続における相続税の考え方実際の手続きの流れを解説します。
目次
数次相続についておさらい

数次相続とは、被相続人の死亡後に遺産分割協議が終わる前に相続人が亡くなり、次の相続が発生することを指します。つまり、相続が一次・二次と連続して起こる状態のことです。
例えば、父が亡くなって一次相続が発生した後、遺産分割協議をしないうちに長男が死亡したとします。この場合、父の遺産分割には母・長女に加え、長男の相続人(妻や子ども)が参加する必要があります。このように、一次相続における相続人の地位が次の世代に引き継がれるため、関与する人が増える点が数次相続の大きな特徴です。
数次相続は相続手続きが複雑になりやすく、相続人同士の調整も難航するケースもあります。そのため、早いうちから専門知識を持つ税理士に相談しておくのが望ましいです。
数次相続についてまずは気軽に相談したい方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」の無料相談をご利用ください。経験豊富な税理士があなたのお悩みを解消し、幅広いサポートを実現いたします。
関連記事:【税理士監修】数次相続とは?手続きの進め方と相続税申告をする際のポイント
数次相続でも相続税はかかる
結論として数次相続でも相続税は発生し、一次相続の申告・納付義務は二次相続の相続人に引き継がれます。これは、国税通則法および相続税法により、納税義務者が死亡した場合にはその相続人が義務を引き継ぐと定められているためです。
相続税の申告・納付期限は、原則として「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」です。しかし、一次相続の納税義務者が申告前に死亡した場合、その義務を引き継いだ二次相続の相続人については期限が延長されます。具体的には、二次相続の開始を知った翌日から10ヵ月以内が、新たな申告・納付期限となります。
一方で、一次相続の納税義務者が「二次相続の被相続人以外」の相続人である場合もあります。その場合の申告期限は、通常どおり「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」となります。
数次相続における相続税控除について

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。しかし、数次相続が発生したからといって控除額が増えるわけではありません。あくまで「被相続人の死亡時点の法定相続人の数」で計算されることを理解しておきましょう。
一方で、数次相続では相次相続控除が適用される場合があります。これは、被相続人が相続開始前10年以内に相続などで財産を取得していた場合に適用される制度です。すでにその際に相続税を納めているため、同じ財産に二重課税されることを避ける目的があります。結果として、二次相続人の相続税から一定額が差し引かれ、過重な負担が軽減されます。
相次相続控除を利用できるのは、次の3つの条件を満たす人です。
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相続人であること |
相続放棄をした人や相続権を失った人は対象外です。遺贈で財産を受け取っても控除は使えません。 |
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亡くなった人(被相続人)が、過去10年以内に相続で財産を取得していること |
今回亡くなった人が以前の相続で財産を受け取っていた必要があります。 |
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過去の相続で実際に相続税がかかっていたこと |
過去の相続で税金が課されていた場合のみ、控除の対象となります。 |
控除額は、前回の相続で支払った相続税額を基準にして計算されます。前回の相続からの経過年数ごとに控除額は毎年10%ずつ減っていき、10年以上経過すると控除は受けられません。
また控除額は、今回の各相続人が受け取る財産の割合に応じて分けられます。つまり相次相続控除は相続が短期間に続けば続くほど、相続税の控除が大きくなる仕組みです。
数次相続時も相続放棄はできる
結論から言うと、数次相続においても相続放棄は可能です。相続は現金・不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナス財産も引き継ぎます。負債が多い場合には家庭裁判所で手続きを行うことで相続権を放棄できるのです。相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」と扱われます。
数次相続では、2回目の相続人は一次相続と二次相続の両方の相続権を持つことになります。そのため、一次相続を放棄して二次相続だけを承認するといった選択も可能です。例えば、多額の借金を抱えた祖父が亡くなり、その相続人である父が相続放棄をしないまま亡くなったとします。この場合、子どもは祖父の相続を放棄し、父の遺産だけを受け継ぐことが可能です。
ただし注意点として、二次相続を放棄した場合は一次相続も承認できません。二次相続を放棄すると、最初から相続人ではなかったとみなされるため、祖父の遺産を含め一切相続できなくなります。
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一次相続 |
二次相続 |
相続放棄の可否 |
結果 |
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放棄する |
放棄する |
可能 |
祖父・父双方の遺産を一切相続しない |
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放棄する |
承認する |
可能 |
祖父の遺産は放棄し、父の遺産のみ相続できる |
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承認する |
放棄する |
不可 |
二次相続を放棄すると、最初から相続人ではなかったとみなされるため、祖父・父双方の遺産を相続できない |
相続放棄の手続きは自己のために相続が開始されたことを知った日から3ヵ月以内(熟慮期間)に家庭裁判所へ申述しなければなりません。この熟慮期間の起算日は「被相続人の死亡を知り、かつ自分が法律上の相続人となったことを知った時点」です。
数次相続における相続手続きの流れ

数次相続における手続きの流れを簡単にまとめました。
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手続き内容 |
通常相続での期限目安 |
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①遺言書の有無を確認・検認申立て |
できるだけ早く(※以降の手続きに必要) |
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②財産調査 |
できるだけ早く(※相続放棄を検討するために必要) |
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③相続人調査 |
できるだけ早く(※遺産分割協議を進めるために必要) |
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④相続放棄 |
相続開始を知った日から3ヵ月以内 |
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⑤準確定申告 |
相続開始日から4ヵ月以内 |
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⑥遺産分割協議 |
できるだけ早く(※資産の凍結を解除するために必要) |
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⑦遺産分割協議書の作成 |
できるだけ早く(※資産の凍結を解除するために必要) |
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⑧相続税の申告 |
相続開始を知った翌日から10ヵ月以内 |
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⑨遺留分侵害額請求 |
相続開始と侵害を知った日から1年以内 |
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⑩不動産の名義変更 |
原則として相続開始を知った日から3年以内 |
数次相続では一次相続と二次相続の手続きを同時に進める必要があるため、通常の相続よりも期限や手続きの管理が複雑になります。各手続きをスムーズに進めるためには、早めの準備と整理をしておきましょう。
特に相続税の申告や不動産名義変更など期限が法律で定められている手続きもあります。遅延による不利益を避けるためにも、数次相続に精通した税理士や専門家への相談をおすすめします。
数次相続の手続きの流れが分からない方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」の無料相談をご利用ください。経験豊富な税理士による手厚いサポートで相続税の計算や申告、遺産分割の進め方などを丁寧にアドバイスいたします。
関連記事:遺産分割中に発生するかもしれない数次相続とは?相次相続との違いは?
数次相続に関する相談先
数次相続は手続きや関与する人が多くなるため、法律や税務の専門知識が必要となります。自分で対応しようとすると大きな負担やトラブルの原因となるため、必ず専門家に相談することをおすすめします。
ただし数次相続といっても「相続人調査」「相続税申告」「不動産登記」など、相談内容によって最適な専門家は異なります。以下の表を参考にして、ご自身の状況に合った専門家を選びましょう。
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お悩み・依頼内容 |
適した専門家 |
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相続人の調査をしたい/相続人同士の争いがある |
弁護士 |
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相続税の申告が必要になりそう |
税理士 |
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不動産の名義変更(相続登記)も依頼したい |
司法書士 |
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相続人調査のみを依頼したい |
行政書士 |
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相続放棄をしたい |
弁護士(※書類作成だけなら司法書士も可) |
|
遺産分割協議や遺産分割協議書を作成したい |
弁護士(争いがある場合)、税理士(相続税が発生する場合) |
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相続登記を行いたい |
司法書士 |
数次相続は相続人が増える分だけ、調整すべき事項も複雑化します。特に相続税の申告や節税対策は専門知識がないと適切に行えず、余計な税負担につながる可能性もあります。
そのため数次相続に直面した際には、まずは税理士に相談するのがおすすめです。税理士であれば、相続税の試算から手続きの流れまで一貫してサポートでき、弁護士や司法書士との連携もスムーズに進められます。
関連記事:遺産相続の相談先は?専門家ごとの依頼できる内容を詳しく紹介
まとめ
数次相続では、一次相続と二次相続の手続きを同時に進める必要があります。また相続人が増える分だけ遺産分割や相続税申告、相続放棄などの手続きも複雑化します。
相続税の基礎控除は増えませんが、過去10年以内に相続税を支払った財産があれば相次相続控除が適用され、二重課税を防げます。さらに、負債がある場合には家庭裁判所で相続放棄も可能です。
このように数次相続は法律や税務の専門知識が欠かせないため、手続きや節税を確実に行うには、まず税理士に相談することが重要です。税理士は相続税の計算や申告、必要に応じて弁護士や司法書士との連携までサポートできるため、複雑な数次相続も安心して進められます。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。