贈与税申告の方法は?必要書類や進め方、3つの注意点を解説

贈与税申告の方法は?必要書類や進め方、3つの注意点を解説

1年間に受けた贈与の額が一定額を超える場合は贈与税の申告が必要です。贈与をした人ではなく、贈与を受けた人に贈与税の申告義務があります。贈与税申告は頻繁に発生するものではなく、所得税の確定申告に比べて馴染みが薄い人が多いでしょう。

贈与税申告を正しく行うためには、事前に手続きの進め方や注意点について十分に理解を深めるのが理想です。今回は贈与税申告について詳しく解説します。

贈与税申告とは

相続・贈与について考える夫婦

贈与税申告とは1年間に受けた贈与財産にかかる贈与税を計算し、税務署に申告する手続きです。1年間に受けた贈与財産の額が基礎控除額の110万円を超える場合に申告義務が生じます。

贈与税申告の義務者

贈与税申告の義務があるのは贈与を受けた側(受贈者)です。贈与をした人ではありませんのでご注意ください。

贈与税の申告および納付期限

贈与税の申告および納付期限は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。3月15日が土日祝にあたる場合、翌平日が期限となります。

確定申告との違い

確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までに生じた所得および所得に課せられる税金を計算し、税務署に申告する手続きです。

広義では申告納税制度を採用している税金の申告手続きが確定申告に該当します。ただし、単に確定申告と呼ぶ場合、個人の所得税の確定申告を指すことが一般的です。

したがって、贈与税申告と確定申告の最大の違いは申告する税金の種類といえるでしょう。以上を踏まえた上で、両者の主な違いを紹介します。

【確定申告と贈与税申告の主な違い】

申告の種類

確定申告

贈与税申告

対象とする税金

一般的には個人の所得税

贈与税

申告対象

その年の1月1日から12月31日までに生じた所得

その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与

申告期限

所得が生じた年の翌年の2月16日から3月15日まで
(還付の場合は2月15日以前も申告可能)

贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで

贈与税申告の手順

相続・贈与に関する書類手続き

贈与税申告の手順は大きく4つの工程に分けられます。次の章から各工程ごとに詳しく解説していきます。

なお、今回解説するのは暦年課税制度を採用した場合の贈与税申告についてです。相続時精算課税制度の手続きについては以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:相続時精算課税の申告方法は?初年度と2年目以降それぞれ詳しく解説

[ステップ1]必要書類を集める

はじめに贈与税申告に必要な書類を集めましょう。主な必要書類の例は以下の通りです。

【すべてのケースで必要な書類】

  • 贈与税申告書 第1表
  • 贈与の内容を証明する書類(贈与契約書など)
  • 納税者のマイナンバーがわかる書類

【住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合】

  • 贈与税申告書 第1表の2
  • 受贈者の戸籍謄本
  • 物件の登記事項証明書
  • 受贈者の所得を証明する書類
  • 新築や取得(購入)の契約書の写し

【不動産の贈与を受けた場合】

  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産税評価証明書

【配偶者控除の特例の適用を受ける場合】

  • 受贈者の戸籍謄本
  • 受贈者の戸籍の附表
  • 控除対象の居住用物件を取得した事実を証明する書類(登記事項証明書など)

必要書類は贈与を受けた財産の種類や適用を受ける特例等によって異なります。自身のケースにおける必要書類について入念な確認が必要です。

参考:令和6年分贈与税の申告のしかた|国税庁

[ステップ2]贈与財産および贈与税の額を計算する

必要書類がすべて揃ったら申告対象となる贈与財産および贈与税の額を計算します。

計算の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 1月1日から12月31日までに受けた贈与財産の合計額を計算する
  2. 1から基礎控除額110万円を差し引く
  3. 2の金額に贈与税の税率を乗じる
  4. 3で計算した税額から控除額を差し引く

4の計算結果が最終的な納付額となります。

なお、3で使用する税率は誰からの贈与であるかによって以下のように異なります。

【特例贈与財産用以外の場合(一般税率)】

基礎控除後の財産価額

税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

【特例贈与財産用の場合(特例税率)】

18歳以上の者が、父母や祖父母など直系尊属から受けた贈与に適用される税率は以下の通りです。

基礎控除後の財産価額

税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

関連記事:贈与税の基礎控除額はどのくらい?税額の算出方法や暦年贈与についても解説

[ステップ3]贈与税の申告書を作成する

申告書の作成に必要な書類や情報がすべて揃い次第、贈与税の申告書の作成を進めます。

[ステップ2]で解説したように、どの書類が必要かはケースによって異なるため一概にはいえません。

国税庁の公式サイトでは、申告書の作成例や必要書類のチェックシートが公開されています。そちらを確認しながら申告書の作成をすると良いでしょう。

参考:令和6年分贈与税の申告のしかた|国税庁資産税(相続税、贈与税、財産評価及び譲渡所得)関係チェックシート|東京国税局

[ステップ4]期日までに申告書の提出および納付をする

贈与税の申告および納付期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間です。期日に間に合うよう余裕を持って申告書の作成を進めましょう。

贈与税申告3つの注意点

最後に、贈与税申告に関する注意点を3つ紹介します。

[注意点1]納税額がゼロになる場合も申告が必要

特例の適用により贈与税の納付額がゼロになる場合でも、贈与税申告を行う必要があります。特例の適用要件として、以下の2つが定められているためです。

  • 贈与税申告書に特例の適用を受ける旨を記載する
  • 特例ごとに定められた添付書類を提出する

すなわち「贈与税申告をしない=特例の適用を受けるための手続きをしない」になります。特例の適用を受けていないものとみなされるため控除も受けられません。

特例の適用を受ける場合は、結果的に納税額がゼロになる場合でも必ず贈与税申告をしましょう。

ただし、例外として以下2つの特例の適用においては贈与税申告は不要です。

  • 結婚・子育て資金贈与の非課税制度
  • 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度

どちらの制度も贈与税申告は不要ですが、金融機関等で所定の手続きを行う必要はあります。

関連記事:【税理士監修】結婚・子育て資金贈与とは?概要や手続き方法、注意点を解説

関連記事:【税理士監修】教育資金の一括贈与は非課税になる?注意点と手続き方法を解説

以下の関連記事で、贈与税の主な特例制度を紹介しているのでぜひこちらもご覧ください。

関連記事:【税理士監修】贈与税の税率は高いのか?計算方法と贈与税を抑えられる非課税制度も併せて解説

[注意点2]不動産評価額は「相続税評価額」を用いる

贈与税の計算に用いる不動産評価額は相続税評価額です。誤った評価額を用いてしまうと税額の計算にズレが生じてしまうためご注意ください。

相続税評価額は以下のように計算します。

【土地】

路線価の定めがある場合は路線価方式で計算します。路線価とは道路に面する宅地等の1平方メートルあたりの価額です。

路線価が定められていない地域の場合は倍率方式で計算します。

路線価、倍率ともに国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認可能です。

【建物】

固定資産税評価額をそのまま用います。

参考:No.4602 土地家屋の評価|国税庁

関連記事:【税理士監修】相続した不動産の評価額はいくら?調べ方と評価額を軽減する方法を解説

[注意点]法人から受けた贈与は贈与税の対象外

法人から受けた贈与は贈与税の対象ではありません。法人から個人に対する贈与は一時所得に該当し、所得税の課税対象となります。

贈与税の計算に含めてしまうと、贈与税と所得税の両方の税額が誤りとなってしまうためご注意ください。

関連記事:法人・個人間における贈与の扱いの違いは?4つのパターン別に解説

贈与を受けた額が年間110万円超の場合は贈与税申告が必須!事前に手続きの進め方を確認しよう

1年間に受けた贈与額が基礎控除額の110万円を超える場合は贈与税申告の義務があります。

贈与税の申告および納付期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。贈与税申告は必要書類が多く収集に時間がかかる可能性もあるため、早めに作業を進めましょう。

なお、贈与税申告の難易度は贈与財産の種類や特例の適用有無によって大きく変わります。

例えば、不動産の評価額計算方法や特例の適用要件については、ルールが複雑でわかりにくい部分も存在します。このようなケースでは、贈与税に関する専門知識がなければ正確な贈与税申告ができない可能性が高いでしょう。

贈与税申告が複雑になりそうな場合や、少しでも疑問や不安がある場合は、専門家である税理士に相談するのが安心です。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。