知っておきたい贈与の5種類!特徴と税金の関係を徹底解説
一口に贈与といっても、その性質によって「単純贈与」「定期贈与」「死因贈与」「負担付贈与」「条件付贈与」の主に5つの種類に分類されます。
そして贈与の種類によっては、課税される税金の種類や税額の計算方法までもが変わってくることがあるのです。そのため、自分が受ける贈与がどの種類の贈与に該当するかを正確に理解しておく必要があります。
今回はこの5種類の贈与についてそれぞれ詳しく解説します。
目次
贈与の種類ごとの違いまとめ
前述のように、贈与は大きく5種類に分けられます。それぞれの主な特徴と発生する税金は以下の通りです。
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贈与の種類 |
特徴 |
発生する税金 |
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単純贈与 |
いわゆる一般的な贈与。 |
贈与税 ただし相続時精算課税制度を選択した場合は相続税 |
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定期贈与 |
毎年同じ時期に同じ財産・同じ額の贈与をする |
贈与税 |
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死因贈与 |
贈与者の死亡によって効力が生じる贈与 |
相続税 |
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負担付贈与 |
受贈者が一定の債務を負うことを条件とした贈与 |
贈与税 |
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条件付贈与 |
一定の条件を満たした時に効力が発生する贈与 |
贈与税 |
次からは各贈与の特徴について詳しく解説します。
[贈与の種類①]単純贈与

単純贈与とは贈与者・受贈者の双方の合意によって成立する贈与です。特別な条件のない一般的な贈与は単純贈与に該当します。
単純贈与の特徴
単純贈与に特別な条件はありません。前述のように、贈与者・受贈者の双方の合意により贈与契約が成立します。
単純贈与に限らず、書面に残さなくても贈与契約の効力は発揮されます。ただし、税務調査による指摘やトラブルを防ぐため、贈与の事実を証明できるよう贈与契約書を作成するのが一般的です。
単純贈与で発生する税金
前提として、単純贈与の課税方式には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類が存在します。それぞれの特徴は以下の通りです。
| 贈与の種類 |
暦年課税 |
相続時精算課税制度 |
|---|---|---|
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特徴 |
1月1日から12月31日までに受けた贈与から基礎控除額110万円を差し引いた額が課税対象になる |
制度の選択をした贈与者から受贈者に対する贈与が累計2,500万円までは贈与税が課せられず、贈与者が亡くなった時に相続税の課税対象になる |
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条件 |
特になし |
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発生する税金 |
贈与税 |
【累計2,500万円まで】 死亡時に相続税 【2,500万円を超えた部分】 贈与税(一律20%) |
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基礎控除額 |
年間110万円 |
年間110万円 |
表のように暦年課税の場合は贈与税が、相続時精算課税の場合は相続税(累計2,500万円を超えた部分には贈与税)が課せられます。
関連記事:贈与税の基礎控除額はどのくらい?税額の算出方法や暦年贈与についても解説
関連記事:暦年課税制度と相続時精算課税制度の違いは?贈与はどちらを選ぶのが正解?
[贈与の種類②]定期贈与
定期贈与とは一定期間にわたり一定の財産の贈与を継続することです。例えば「5年間にわたり、毎年4月に200万円を贈与する」といった内容は定期贈与にあたります。
定期贈与の特徴
定期贈与の特徴は以下の2点です。
- 毎年の贈与財産の種類・贈与額・贈与の時期が同じである
- トータルで高額の財産を贈与することを前提としている
なお、当事者が定期贈与と認識していなくても、贈与の実態によっては定期贈与とみなされるケースがあります。例えば、毎年同じ時期に現金100万円の贈与を10年間続けた場合、定期贈与とみなされる可能性が高いです。単純贈与と定期贈与では税額の計算方法に違いがあるため注意する必要があります。
定期贈与で発生する税金
定期贈与で発生する税金も単純贈与と同じく贈与税です。ただし、単純贈与と定期贈与では税額の計算方法に違いがあります。
前述した単純贈与の場合、1年間に受けた贈与の額から基礎控除額である110万円を差し引いた額が課税対象になります。
一方、定期贈与はトータルの贈与額に対して最初の年に贈与税が課せられます。例えば、毎年100万円の贈与を10年間続ける場合、100万円×10年の1,000万円に対して贈与税が課せられます。すなわち、初年度に1,000万円の贈与をしたものとみなして課税されるのです。
定期贈与とみなされてしまうと、毎年の贈与額がたとえ基礎控除額の110万円以下でも贈与税の対象になるためご注意ください。定期贈与とみなされることを避けるための対策は以下の記事で解説しています。
関連記事:【税理士監修】生前贈与はいくらまで非課税?効果的な節税の方法や注意点を解説
[贈与の種類③]死因贈与

死因贈与とは贈与者の死亡によって効力が生じる贈与です。贈与契約自体は贈与者が存命のうちに行いますが、財産の移転は贈与者の死亡時に発生します。
死因贈与で発生する税金
死因贈与は贈与の一種ではあるものの、発生する税金は相続税です。国税庁による資料では「死因贈与は相続税法上、遺贈として取り扱う」と明記されています。基本的に、財産の移転が死後に成立する場合は相続税の課税対象になります。
参考:相続税のあらまし|国税庁
相続税の計算方法については以下の記事をご覧ください。
関連記事:【税理士監修】相続税を自分で計算する方法と、シミュレーションする際のポイントを解説
死因贈与と遺贈の違い
死因贈与と遺贈の違いとして、贈与前に必要な手続きが挙げられます。
死因贈与は贈与契約の一種であるため、贈与者・受贈者の双方の合意が必要です。一方で遺贈に必要なのは遺言書の作成、すなわち元の所有者による意思表示のみとなります。譲受人の合意は必要ありません。
関連記事:遺贈・相続・贈与の違いとは?必要な手続きや発生する税金など注意点を解説
[贈与の種類④]負担付贈与
負担付贈与とは受贈者が一定の債務を負うことを条件とした贈与です。よくある例として「不動産を贈与する代わりに住宅ローン残債も引き継いでもらう」が挙げられます。
負担付贈与で発生する税金
負担付贈与で発生する税金は贈与税です。
負担付贈与ならではの特徴として、贈与財産の額から負担額を控除した額に贈与税が課せられる点が挙げられます。例えば評価額5,000万円の不動産を贈与する代わりに住宅ローン残債1,000万円を引き継ぐ場合、課税対象額は以下の通りです。
| 評価額5,000万円-負担額1,000万円=課税対象額4,000万円 |
なお、負担付贈与の計算に用いる不動産評価額は通常の取引価額、すなわち時価です。通常の贈与税の計算に用いる評価額とは異なる点にご注意ください。
参考:No.4602 土地家屋の評価|国税庁、No.4426 負担付贈与に対する課税|国税庁
死因贈与と負担付贈与を組み合わせた「負担付死因贈与」も存在する
負担付死因贈与とは死亡によって効力が発生する負担付贈与です。負担付死因贈与も通常の死因贈与と同じく、贈与税ではなく相続税が課税されます。
[贈与の種類⑤]条件付贈与
条件付贈与とは、一定の条件を満たした場合に効力が発生する贈与です。例として、「Aが税理士試験に合格した場合に、Aに対して現金500万円を贈与する」のような内容が挙げられます。
[贈与の種類③]で挙げた死因贈与は贈与者の死亡を条件とするため、条件付贈与の一種ともいえるでしょう。ただし、死亡によって効力が生じる死因贈与は法務上・税務上どちらも特殊な扱いとなるため、一般的な条件付贈与とは区別されます。
条件付贈与の特徴
条件付贈与の特徴は、契約を締結しても贈与が実行されるとは限らない点です。
例えば前述の「Aが税理士試験に合格した場合に、Aに対して現金500万円を贈与する」は、Aが税理士試験に合格することが条件です。もしAが税理士試験に合格しなければ贈与契約は無効となり、贈与は行われません。
このように条件付贈与は条件を満たせなければ贈与契約の効力が発生しないため、贈与が行われない事態も起こり得ます。
条件付贈与と負担付贈与の違い
前述した負担付贈与は、「債務を引き継ぐという条件で贈与をする」とも表現できるため、条件付贈与と似た印象をもつかもしれません。
負担付贈与と条件付贈与の大きな違いは、贈与契約の効力が発生するタイミング(贈与による財産の移転が起こるタイミング)です。
負担付贈与は贈与契約の成立時点で効力も発揮されます。贈与契約の締結と同時に、財産の移転および受贈者が負う債務が発生するイメージです。
一方で、条件付贈与の効力は前述のように条件を満たしたタイミングで発生します。例えば、贈与契約を締結したのが2023年、条件を満たしたのが2025年の場合、効力発生および財産の移転が起きるのは2025年です。このように、贈与契約の締結と贈与の効力が発生する時期はズレるのが一般的です。
条件付贈与で発生する税金
条件付贈与で発生する税金は贈与税です。条件を満たして贈与契約の効力が生じた年に贈与税が課せられます。
贈与の種類によって扱いが大きく異なる!どの贈与に該当するか正しい判断が必要
今回は、5種類の贈与について解説をしました。それぞれの贈与の特徴や性質、注意点についてご理解いただけましたでしょうか。
基本的に、財産の移転が贈与者の存命中に行われる場合は贈与税、死後に行われる場合は相続税の課税対象です。ただし例外として、相続時精算課税制度を選択した場合は相続税が課税されます。
同じ贈与税の課税対象でも、贈与の種類によって課税対象額の計算方法や課税のタイミングが異なります。贈与に関する課税のルールは複雑で難しい部分が多いです。贈与税申告を正しく行うためには、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。