二親等の相続税とは?計算方法と注意点をわかりやすく解説
二親等の方が相続人となる場合、相続税の計算や申告には注意が必要です。基礎控除や計算方法は同じでも、配偶者や子に比べて優遇措置が少なく、結果として税負担が重くなることもあります。本記事では、二親等の方が相続人になる場合の相続税の仕組みや2割加算の有無、注意点や備え方についてわかりやすく解説します。二親等の相続税で不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
二親等とは誰を指すのか

「二親等」とは、本人から見て二世代離れた親族を指します。親や子は「一親等」ですが、そこから一世代離れると二親等になるため、具体的には祖父母・孫・兄弟姉妹が該当します。
なお、叔父や叔母は三親等にあたり、二親等には含まれません。相続人の範囲を正しく理解するためにも、親等の違いを押さえておきましょう。
関連記事:【税理士監修】親等のわかりやすい数え方。相続において必要な知識を解説
二親等にあたる親族が相続税の対象になるケース

二親等にあたる親族は、常に相続人となるわけではありません。相続人の範囲は、配偶者・子・直系尊属が優先されますが、それらがいない場合に二親等が相続人となります。
二親等にあたる親族が相続税の対象となる具体的なケースを解説します。
関連記事:【税理士監修】相続人は誰がなるのか。相続人となる人の範囲や順位について解説
子や直系尊属がいない場合に兄弟姉妹が相続人になる
子や親・祖父母といった直系尊属がいないときには、兄弟姉妹が相続人となります。例えば、独身で子も親もいない人が亡くなった場合に該当します。
子がいない場合に祖父母が相続人になる
子がいない場合には、直系尊属である祖父母が相続人になります。例えば、子がいない人が亡くなった場合、祖父母が相続権を持ちます。
子が先に亡くなっている場合に孫が相続人になる
子がすでに亡くなっているときは、その子である孫が代わりに相続人となり、これを「代襲相続」と呼びます。
例えば、父が祖父より先に亡くなった場合、孫が父の立場を引き継いで祖父の財産を相続します。相続割合や税額は子と同じ扱いとなり、孫が代わりに計算されます。
関連記事:代襲相続とは?代襲相続人の範囲と相続割合をパターン別に解説
二親等が相続する場合の相続税の扱い

二親等が相続人となった場合でも、相続税の計算方法は一親等の場合と変わりません。
まず「正味の遺産額(財産から借金や葬式費用を差し引いた額)」を求め、そこから基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた残額が「課税遺産総額」となります。
次に、この課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定し、それぞれの取得額に税率をかけて相続税の総額を算出し、最後に実際の取得割合に応じて各相続人へ税額を割り振ります。
【相続税の速算表(課税価格に応じて税率が変動)】
|
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
|
1,000万円以下 |
10% |
- |
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1,000万円超から3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
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3,000万円超から5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
|
5,000万円超から1億円以下 |
30% |
700万円 |
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1億円超から2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
|
2億円超から3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
|
3億円超から6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
|
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
例)遺産総額が6,000万円、相続人が兄弟姉妹2人の場合
- 基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
- 課税遺産総額:6,000万円-4,200万円=1,800万円
- 各人の取得額:1,800万円÷2人=900万円
各人の課税価格は900万円で、税率10%・控除0円に該当するため、1人あたりの相続税額は 900万円×10%=90万円となります。
基礎控除や税率の計算は共通ですが、二親等の場合は優遇措置が限られるため、思ったより税額が増える場合があります。
当事務所では具体的な税額シミュレーションや節税のご提案も可能です。
関連記事:【税理士監修】早見表付き:相続税の計算方法や大まかな税額を把握しておこう
二親等は相続税の2割加算対象になるのか?
二親等が相続人となる場合は、原則として「相続税額の2割加算」の対象となります。この制度は、配偶者や一親等と比べて生活上の結びつきが弱い相続人に対して、税負担の公平性を保つために設けられています。
2割加算の仕組み
2割加算とは、算出した相続税額に20%を上乗せする仕組みです。対象となるのは「配偶者」と「一親等の血族(子・親・代襲相続の孫など)」以外の相続人や受遺者で、計算式は以下の通りです。
加算後の相続税額 = 算出相続税額 × 120%
例えば、兄弟姉妹が相続して算出税額が100万円なら、加算後は120万円になります。相続人ごとに判定し、取得者ごとに計算する点に注意しましょう。
関連記事:孫や孫養子に課される2割加算で相続税はいくらになる?計算方法を解説
兄弟姉妹が相続する場合の扱い
兄弟姉妹は二親等にあたり、一親等の血族(子や親など)には含まれないため、2割加算の対象です。
加算は兄弟姉妹それぞれに個別で適用され、複数人が相続する場合でも、一人ひとりの税額に対して加算が行われます。例えば、兄弟3人が相続するなら、それぞれが2割加算の対象となります。
孫が相続する場合の扱い
孫は二親等にあたるため本来は2割加算の対象ですが、相続の形によって扱いが異なります。
子が先に亡くなって孫が代襲相続する場合には、子の立場をそのまま引き継ぐため一親等扱いとなり、2割加算の対象外となります。
一方で、孫を養子にして相続させる場合は、原則として2割加算の対象となります。養子縁組によって相続人を増やすと相続税額に影響するため、この仕組みを理解したうえで判断しましょう。
2割加算が適用されるかどうかは、立場や相続の形によって大きく変わります。
ご自身のケースがどうなるのか、不安な方はぜひご相談ください。
小谷野税理士法人が丁寧にサポートします。
二親等の相続税で注意すべきポイント
二親等が相続人となった場合、どんな点に注意すべきでしょう。思わぬトラブルや課税リスクを避けるために、特に押さえておきたいポイントを解説します。
相続割合は複雑になりやすい
二親等が相続人となる場合、取り分の計算が複雑になる点に注意しましょう。
配偶者や親と一緒に相続するケースが多く、法律で細かい割合が決められています。例えば、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りの4分の1です。
こうした仕組みを理解していないと不公平と感じる人が出やすく、遺産分割協議で揉める原因になるでしょう。
優遇措置が少なく税金が高くなりやすい
二親等が相続人になる場合は、税金の優遇措置が受けられず、負担が大きくなりやすい点に注意しましょう。
配偶者は「配偶者控除」により、1億6,000万円まで非課税となります。また、子や代襲相続の孫は「小規模宅地の特例」を使えば、自宅や事業に使っていた土地の評価額を最大80%減らすことができます。
しかし、祖父母や兄弟姉妹といった二親等には、これらの制度が基本的に認められていません。
そのため、同じ財産を相続しても税額が高くなる可能性があり、思わぬ負担に繋がるでしょう。こうした特徴を理解し、早めに贈与や遺言で備えておくのが大切です。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
関連記事:【税理士監修】相続税の配偶者控除とは?計算方法や申告方法をわかりやすく解説
関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例とは?計算方法や適用要件をわかりやすく解説します
生前贈与や遺言で備えることが重要
二親等が相続人になる可能性があるときは、早めに生前贈与や遺言を準備しておきましょう。亡くなる直前の贈与は、相続開始前7年以内の贈与財産として相続財産に加算されるため、節税効果がほとんどなくなってしまいます。
例えば、亡くなる直前に孫へ贈与しても、その金額は相続財産に戻されて相続税の計算に含まれます。一方で、早めに贈与しておけば課税対象から外れる可能性が高まり、税負担を軽減できます。
さらに、遺言を残しておけば、誰がどの財産を受け取るのかを明確にでき、兄弟姉妹などの間での争いを未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。
参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
二親等の相続税に関してよくある質問
二親等の相続税については、制度が複雑なため疑問が多く寄せられます。以下で、よくある質問を取り上げるので、不安解消の一助としてご覧ください。
二親等でも相続税の申告は必ず必要ですか?
二親等だからといって必ず相続税の申告が必要になるわけではありません。申告が必要かどうかは「遺産総額-基礎控除額」で判断され、差し引き後の課税遺産額がゼロであれば申告自体不要です。
ただし、二親等が相続人になるケースでは相続人の数が少なくなり、基礎控除額も小さくなるため課税対象になりやすい傾向にあります。
二親等が相続人になるとき、未成年者や高齢者が含まれる場合はどうなりますか?
未成年の孫が相続人となる場合、自ら手続きを行えないため通常は親権者が代理します。しかし、親権者も相続人で利害が対立する場合は、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
一方、高齢の祖父母が相続人となり判断能力が不十分な場合は「成年後見制度」を利用し、家庭裁判所で選任された後見人が代わって手続きを行います。
参考:特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合) | 裁判所
参考:成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ | 裁判所
関連記事:遺産分割後に遺言書が見つかった場合のケース別対処法
二親等で起こりやすい典型的なトラブルは何ですか?
二親等の兄弟姉妹が相続人となる場合、遺産分割協議がまとまりにくくトラブルに発展する場合が少なくありません。
例えば、生前贈与の有無をめぐって「不公平だ」と感じる人が出たり、特定の財産の使い込みを疑って争いが起こるケースがあります。また遺留分侵害請求が持ち出され、長期化する場合もあるため、遺言の準備や専門家の関与で事前に備えるのが有効でしょう。
関連記事:遺留分侵害額請求の時効は1年と10年!期間内にやるべきことと時効を止める方法
二親等の相続税で不安がある方は専門家に相談
二親等の方が相続人になるときは、相続税の計算や手続きが思った以上に複雑になる場合があります。
基礎控除で申告が不要に思えても、実際には評価の仕方や申告の要否を誤ると、後から税務署に指摘されるリスクもあります。また、兄弟姉妹や祖父母が関わる相続では、分け方をめぐって意見が食い違いやすいのも実情です。
こうした不安を解消するには、早めに専門家へ相談するのが安心でしょう。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
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