特例贈与財産と一般贈与財産の違いとは?計算方法・申告手続き・注意点を徹底解説
「特例贈与財産」と「一般贈与財産」の違いをご存じでしょうか。贈与税の区分は一見わかりにくく、誤解したまま申告すると不要な負担やトラブルに繋がる恐れがあります。本記事では、特例贈与財産と一般贈与財産の違い、贈与税の計算方法、申告の流れや注意点についてわかりやすく解説します。贈与や相続税対策に不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
特例贈与財産と一般贈与財産の違いとは
贈与税には「特例贈与財産」と「一般贈与財産」があり、どちらに当てはまるかによって適用される税率や負担額が異なります。それぞれがどのような贈与を指すのか解説します。
特例贈与財産とは
「特例贈与財産」とは、直系尊属である父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して行われる贈与を指します。この制度は2015年(平成27年)の税制改正によって導入されたもので、一般の贈与よりも低い税率が適用されるのが特徴です。
世代間の財産移転を円滑に進めることを目的としており、相続税対策としても活用されるケースが多く見られます。
関連記事:[相続税と贈与税の基礎知識]それぞれの違いと税率・金額を知っておきましょう
一般贈与財産とは
「一般贈与財産」とは、特例贈与財産に該当しないすべての贈与を指します。例えば、兄弟姉妹や配偶者への贈与は一般贈与財産に分類されます。また直系尊属からの贈与であっても、受贈者が18歳未満の場合は一般贈与財産として扱われます。
特例贈与財産より高い税率区分が適用されるため、どちらに該当するかの判断は税額計算に影響を及ぼします。
贈与税の計算方法

贈与税は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」で計算方法が異なります。それぞれの場合の計算方法について解説します。
特例贈与財産のみを受けた場合
特例贈与財産は、基礎控除110万円を差し引いた残額に「特例贈与財産の税率表」を適用して計算します。
例)父から1,000万円を贈与された場合
- 課税価格=1,000万円 − 110万円 = 890万円
- 890万円は「600万円超〜1,000万円以下」に該当 → 税率30%、控除額90万円
- 贈与税額=890万円 × 30% − 90万円 = 177万円
【贈与税(特例贈与財産)の早見表】
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基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
|
200万円以下 |
10% |
‐ |
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400万円以下 |
15% |
10万円 |
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600万円以下 |
20% |
30万円 |
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1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
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1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
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3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
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4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
|
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
一般贈与財産のみを受けた場合
一般贈与財産も、まず基礎控除110万円を引き、その残額に「一般贈与財産の税率表」を適用します。
例)兄から1,000万円を贈与された場合
- 課税価格=1,000万円 − 110万円 = 890万円
- 890万円は「600万円超〜1,000万円以下」に該当 → 税率40%、控除額125万円
- 贈与税額=890万円 × 40% − 125万円 = 231万円
同じ1,000万円でも、父からの特例贈与では177万円、兄からの一般贈与では231万円となり、特例のほうが負担が軽くなることが分かります。
【贈与税(一般贈与財産)の早見表】
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基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
|
200万円以下 |
10% |
‐ |
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300万円以下 |
15% |
10万円 |
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400万円以下 |
20% |
25万円 |
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600万円以下 |
30% |
65万円 |
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1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
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1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
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3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
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3,000万円超 |
55% |
400万円 |
参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
特例贈与財産と一般贈与財産を併せて受けた場合
両方を受け取った場合は、単純に合算するのではなく、基礎控除110万円を差し引いた後に「一般分」と「特例分」に按分し、それぞれの税率表で計算したうえで合算します。
例)叔母から300万円(一般)+父から700万円(特例)=計1,000万円を贈与された場合
課税価格=1,000万円 − 110万円 = 890万円
- 全額を一般と仮定:890万円 × 40% − 125万円 = 231万円 → 30%按分=69万3,000円
- 全額を特例と仮定:890万円 × 30% − 90万円 = 177万円 → 70%按分=123万9,000円
合計=69万3,000円 + 123万9,000円 = 193万2,000円
同じ贈与でも「特例」と「一般」で大きく税額が変わることがあります。
ご自身のケースに当てはめるとどうなるのか、不安な方は専門家に直接ご相談ください。
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贈与税(一般贈与財産・特例贈与財産)の申告方法
贈与を受けた場合には、受贈者本人が所定の期限までに税務署へ申告する必要があります。申告期限と必要書類を「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に分けて解説します。
申告期限
贈与税の申告期限は、特例贈与財産と一般贈与財産のいずれの場合でも共通で、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告を行う必要があり、申告先は受贈者本人の住所地を管轄する税務署となります。
申告を忘れたり期限を過ぎてしまった場合には、加算税や延滞税の対象となる場合があるため、必ず期限内に手続きを済ませましょう。
必要書類
贈与税の申告に必要な書類は、特例贈与財産と一般贈与財産で少し異なります。
特例贈与財産の場合は「親や祖父母との関係を証明する書類」が重視され、一般贈与財産の場合は「財産の内容や本人確認に関する書類」が必要になります。
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区分 |
必要書類 |
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特例贈与財産 |
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一般贈与財産 |
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参考:贈与税の申告|国税庁
参考:土地贈与契約書|国税庁
関連記事:贈与税の基礎控除額はどのくらい?税額の算出方法や暦年贈与についても解説
直系尊属から贈与を受ける際の注意点

親や祖父母など直系尊属から贈与を受ける場合は、税制上の優遇がある一方で、相続や遺産分割に関わるルールにも注意が必要です。特に誤解や見落としが起こりやすいポイントを解説します。
相続開始前3〜7年以内の贈与は相続税の対象になる
相続開始前の一定期間に受けた贈与は、「生前贈与加算」としていったん遺産に戻して相続税を計算する仕組みがあるため注意しましょう。
これは、亡くなる直前に財産を贈与して相続税を回避することを防ぐためのルールです。対象となる期間は、2023年までの贈与は死亡前3年以内、2024年以降の贈与は死亡前7年以内です。
特例贈与財産であっても例外ではなく、対象期間に入っていれば相続財産に加算されます。贈与の時期次第で相続税額が変わる可能性があるため、計画時は「いつ贈与するか」もあわせて検討しましょう。
参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
関連記事:暦年課税が改定|生前贈与加算の期間が7年になるとどんな影響がある?
相続人への贈与は特別受益とされる可能性がある
相続人への贈与は「特別受益」と判断される可能性があるため注意しましょう。特別受益とは、ある相続人が被相続人から生前に特別にもらっていた利益(贈与など)を指します。
特別受益に該当すると、その分をいったん相続財産に持ち戻して各相続人の取り分を計算し直します。その結果、他の相続人の相続分に影響を与えるため、遺産分割において不公平感やトラブルが生じやすくなります。
生前贈与を行う際には、将来の相続全体を見据え、他の相続人への影響も考慮して慎重に判断しましょう。
関連記事:生前贈与と特別受益ってどう違う?制概要や相続遺産の算出方法を解説
関連記事:特別受益の「持ち戻し」「時効10年」について詳しく解説
多額の贈与は相続時精算課税制度の利用を検討する
多額の贈与を行う際は「相続時精算課税制度」の利用に注意しましょう。相続時精算課税制度を利用すると、直系尊属から18歳以上の子や孫へ贈与した場合、2,500万円まで贈与税がかからないというメリットがあります。
ただし、その財産は将来の相続時に必ず相続財産に合算されて課税対象となるため、今は贈与税がかからなくても、後に相続税の計算で課税額が増えるケースが起こり得ます。
特に、将来的に相続財産が高額になる見込みがある場合には、相続税の負担が重くなるリスクがあるため慎重に検討しましょう。
生前贈与の扱いは相続税や遺産分割にも影響します。この記事で紹介した内容は一例に過ぎません。
具体的な状況を踏まえたアドバイスをご希望の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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関連記事:相続時精算課税制度とは?特別控除と新設の基礎控除を解説
特例贈与財産に関してよくある質問

特例贈与財産の取り扱いは誤解しやすい部分が多くあります。よくある疑問を整理しましたので、特例贈与財産を活用するうえでの検討材料としてください。
特例贈与財産は途中で取り消すことができますか?
特例贈与財産の贈与契約は一度成立すると、原則として取り消せませんが、例外として、書面を伴わない口頭のみの贈与については、実際に財産が渡る前であれば撤回が認められています。
書面を交わして正式に契約した場合は取り消しができないと理解しておきましょう。
特例贈与財産に該当するかどうかの判定はいつ時点の年齢で行いますか?
判定は贈与を受けた年の1月1日時点の年齢で行われます。
例えば、贈与を受けた日にはすでに18歳になっていても、その年の1月1日時点で17歳であれば一般贈与財産として扱われます。税制上の区分は年齢要件を統一的に判定する仕組みであるためです。
特例贈与財産の対象になる孫は、必ず相続人である必要がありますか?
孫が相続人かどうかは要件に含まれません。直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与であれば、孫が相続人でなくても特例贈与財産として認められます。
ただし、将来の相続においては「生前贈与加算」や「特別受益」として別の取り扱いを受ける場合があるため、その点は注意しておきましょう。
特例贈与財産の取り扱いに不安がある方は専門家に相談
特例贈与財産は税率が優遇される一方で、年齢判定の基準日や必要書類の不備、さらには相続開始時の生前贈与加算や特別受益の扱いなど、見落としや誤解が大きなリスクに繋がります。
計算方法を誤れば不要な税負担が生じ、後日の相続でもトラブルを招きかねません。こうした複雑な制度を正しく活用するためには、税務の専門家に相談することをおすすめします。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。