不動産の遺産分割はどうする?5つの方法と手続きのポイントを解説

不動産の遺産分割はどうする?5つの方法と手続きのポイントを解説

不動産は現金のように均等に分けることが難しく、相続人同士の利害が衝突しやすい資産です。評価額の基準が複数あることや、利用方法をめぐる意見の違いから協議が長期化し、トラブルの原因となることも少なくありません。本記事では、不動産の遺産分割方法や手続きの流れ、税金の取り扱い、よくあるトラブルと円滑に進めるための対策を分かりやすく解説します不動産の相続で迷いや不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

不動産の相続は遺産分割しにくいため、早い段階で専門家に相談するのが安心です。

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不動産の遺産分割とは?

遺産分割は、相続人の間で財産をどのように分けるかを定める手続きです。なかでも不動産は、相続の場面で頻繁に対象となる資産の1つでしょう。

不動産は「均等に分ける」ことが難しい

現金であれば「100万円を2人で50万円ずつ」といった具合に簡単に分けられますが、土地や建物はそうはいきません。

不動産は物理的に複数人で分けることが難しく、相続人ごとに同じ価値を割り当てるのも困難なため、評価額に差が出やすく、不公平だと感じる人が多い傾向があります。

不動産が相続トラブルになりやすい理由

不動産は、「誰が住むのか」、「売るのか」、「貸すのか」といった利用方法をめぐり、相続人の利害が衝突しやすい資産です

さらに、不動産の評価額には相続税評価額(財産評価基本通達)、固定資産税評価額、実勢価格といった複数の基準があり、人によって見方が異なります。

その結果、意見がまとまらず話し合いが長引くケースも多く、特に遺言書がない場合は大きなトラブルに繋がりやすいのが特徴です。

不動産の遺産分割方法5つ

では不動産を相続する際、どのように分ければよいのでしょうか。

現金のように簡単に分割できない不動産には、法律上いくつかの方法が認められています。それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、特徴を理解しておきましょう。

不動産をそのまま分ける「現物分割」

「現物分割」は、不動産をそのまま相続人で分ける方法です。

土地であれば、相続人ごとに区画を分ける必要があり、その際に登記手続きとして「分筆(ぶんぴつ)」を行います。分筆とは、1つの土地を複数の土地として登記簿上に分ける手続きです。

売却せずに引継げる点はメリットですが、土地の形や広さによっては均等に分けられない場合もあります。建物は物理的に分けるのが難しいため、不公平感が生じやすい方法と言えるでしょう。

関連記事:不動産・土地を兄弟で相続する場合の分割方法とは?注意点も解説!

金銭で調整する「代償分割」

「代償分割」は、1人の相続人が不動産を取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払って調整する方法です。

不動産を動かさずに済むため、取得者がそのまま利用できる点はメリットですが、代償金を支払うための資金力が必要になるため、準備が整わないと実行が難しい点に注意しましょう。

関連記事:土地の相続者が複数いる!代償分割で解決する方法

売却して現金化する「換価分割」

「換価分割」は、不動産を売却して得た代金を相続人で分ける方法です。

現金に換えるため均等に分けやすく、公平感を保ちやすい点が特徴ですが、売却の手続きや時期によっては負担が大きくなったり、譲渡所得税が発生するケースもあり、思った以上に手取りが少なくなる場合もあります。

関連記事:換価分割で遺産を分けたい!譲渡所得は誰が払う?

共有名義にする「共有分割」

「共有分割」は、相続人全員が共同で不動産を所有する方法です。

相続の時点では話し合いがまとまりやすい反面、その後の売却や建替えなど重要な決定には共有者全員の同意が必要になります。

また、持分が次世代に相続されることで権利関係が複雑化し、管理や処分が難しくなる恐れがある点に注意しましょう。

権利を放棄する「相続放棄」

「相続放棄」は、家庭裁判所に申立てを行い「自分は相続人にならない」と宣言する方法です。

放棄が認められると、初めから相続人でなかったものと扱われ、不動産を含め一切の遺産を受け取る権利がなくなります。

他の相続人に全ての財産が移りますが、申立てには期限(相続開始を知ってから3ヵ月以内)があるため、早めの判断が求められます。

どの分割方法を選ぶべきかは、相続人の事情や不動産の状況によって変わります。

公平かつ円滑に進めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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参考:相続の放棄の申述 | 裁判所

関連記事:【税理士監修】相続で知っておくべき相続放棄の基本とデメリット。手続き方法もあわせて解説

不動産遺産分割の手続きの流れ

遺産分割協議書

不動産の遺産分割は、どのような手順で進めればよいのでしょうか。

相続に関する手続きは民法や不動産登記法といった法律に基づいて行う必要があり、基本的な流れが定められています。手続きの流れを確認しておきましょう。

遺言書の有無を確認する

最初に確認すべきは遺言書の存在です。民法では「遺言は相続において優先される」と定められており、有効な遺言があれば原則その内容に従って不動産を分けることになります。

関連記事:【税理士監修】遺言書の持つ効力とは?無効になるケースと確実性を高めるポイント

相続人と財産を確定する

相続を進めるためには、誰が相続人となるのかを明確にする必要があります。戸籍を調査して法定相続人を確定し、不動産を含めた財産目録を作成しましょう。

相続人と財産の全体像を正しく把握しておけば、その後の遺産分割協議を円滑に進められます。

参考:「財産目録」の書き方 | 国税庁

不動産の評価を行う

次に不動産の評価を行います

相続税の計算では、国税庁が定める「財産評価基本通達」に従い、路線価方式や倍率方式で評価額を算定します。評価額は遺産分割の際の基準となり、代償金の算定にも直結するため、正確に評価を行いましょう。

参考:財産評価|国税庁

遺産分割協議を行う

相続人全員で話し合い、不動産をどのように分けるかを決めます

民法第907条では、遺産分割協議は全員の合意が必要と定められています。協議で決定した内容は「遺産分割協議書」にまとめて署名押印し、後の証拠として残しましょう。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

参考:法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~

関連記事:【税理士監修】遺産分割協議書の作成方法と必要性について解説

相続登記を行い名義を変更する

不動産を承継した場合は、名義を変更する相続登記を行います

不動産登記法の改正により、2024年4月から相続登記は義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。期限を過ぎると過料の対象となるため、速やかに登記手続きを行いましょう。

参考:相続登記の申請義務化に関するQ&A | 法務省

関連記事:【税理士監修】相続登記の必要書類は?登記の必要性や法務局での申請手順も解説

不動産の評価と税金の取り扱い

不動産を相続する際には、評価額の算定方法や税金の扱いが重要になります。評価基準にはいくつかの種類があり、それぞれの役割を理解しておくのが大切です。基本的な仕組みを確認しておきましょう。

相続税評価額と実勢価格は異なる

不動産の相続税評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づき、路線価方式や倍率方式で算定されますが、この評価額は市場で実際に取引される価格(実勢価格)とは異なる場合が多く、相続人の感覚とずれが生じるケースがあります

協議の際に不公平感が出やすい点に注意しましょう。

固定資産税評価額は税負担の基準となる

市区町村は、固定資産税の金額を決める際に「固定資産税評価額」を基準としています

これは相続税評価額とは別の基準であり、遺産分割に直接影響するものではありませんが、不動産を引き継いだ後は毎年固定資産税を負担するため、将来の支出を見通す指標として確認しておきましょう。

売却して利益を得ると譲渡所得税がかかる

相続した不動産を売却して現金に換えると、得られた利益に譲渡所得税がかかります。相続税を払った後に再び税負担が生じるため、思わぬ出費になる場合もあるでしょう。

ただし、一定の条件を満たせば「取得費加算の特例」を使える場合があり、支払った相続税の一部を取得費に加えることで課税額を抑えられます。特例が使えるかどうかを早めに確認し、余計な負担がかからないよう注意しましょう。

不動産の評価や税金の扱いを誤ると、余計な税負担が生じることもあります。

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参考:未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等|国税庁

参考:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

関連記事:遺産の換価分割による譲渡所得税はいくらになる?計算方法を解説

不動産遺産分割で起こりやすいトラブル

不動産の分割・相続で悩む兄弟

不動産の遺産分割では、どのようなトラブルが生じやすいのでしょうか。典型的な問題点を理解しておけば、事前の備えや冷静な対応に繋がるでしょう。

遺言書がないと協議がまとまりにくい

遺言書がない場合、遺産分割は法定相続分を基準に相続人全員で話し合う必要がありますが、不動産は利用方法や評価をめぐって意見が食い違いやすく、協議が長期化するケースが少なくありません。

遺言の優先ルールが適用されないため、合意形成が難航しやすい点に注意しましょう。

現金不足で代償分割が困難になる

不動産を1人が相続し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う代償分割は、公平性を保つ有効な手段です。ただし、十分な現金がなければ支払いが難しく、協議が行き詰まってしまう場合があります。

資金不足は代償分割の大きな障害となるため注意しましょう。

共有名義を放置すると将来の管理が難しくなる

共有名義をそのままにしておくと、将来の管理や処分で大きな負担に繋がる可能性があるでしょう

例えば、不動産を売却したり建替えたりする際には、共有者全員の同意が必要になります。さらに時間が経つと世代交代で持分が細かく分かれ、関わる人数が増えて意思をそろえるのが一層難しくなります。

このように共有状態を放置しておくと思わぬトラブルを招きやすいため、早めの対応を心がけましょう。

寄与分や特別受益を巡って争いが起きる

民法は「特別受益」と「寄与分」という仕組みを設けています。特別受益は生前贈与や住宅資金援助を前渡しとして取り分を調整する制度であり、寄与分は介護や事業への従事による貢献を考慮して取り分を増やす制度です。

しかし、どこまでを特別受益とするか、どの程度の貢献を寄与分とみなすかは判断が難しく、相続人間で認識の差が生じやすいため、協議の長期化や感情的な対立に発展する可能性がある点に注意しましょう

関連記事:特別受益の「持ち戻し」「時効10年」について詳しく解説

関連記事:介護による遺産相続の寄与分はどうしたら認められる?介護中にやっておくべきこと

不動産遺産分割を円滑に進めるための対策

不動産の相続を円滑に進めるには、どのような備えが有効なのでしょうか。代表的な対策を確認しておきましょう。

遺言書を準備すれば協議がスムーズになる

民法では「遺言は相続において優先される」と定めており、有効な遺言書があれば、一般的には相続人全員がその内容に従う必要があり、遺産分割協議を行う必要がありません

ただし、相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割協議も可能です。

あらかじめ意思を明確にしておけば、協議の長期化や意見の対立を防ぎ、手続きを円滑に進められるでしょう。

生前に不動産を売却・現金化しておく

不動産を生前に売却し、現金化しておけば、相続時の分割が容易になります

現金であれば人数に応じて均等に分けやすく、公平感を保ちやすいのが利点ですが、売却に伴って譲渡所得税が課税されるため、税負担を考慮しながら計画的に進める必要があるでしょう。

納税資金を確保しておく

不動産が多く現金が少ない相続では、相続税やその他の税金の支払いに必要な資金が不足するリスクがあります

資金計画を立てずにいると、納税のために不動産を売却せざるを得ない状況になる場合もあるため、早めに納税資金を準備しておくのが賢明でしょう。

家族間で早めに話し合っておくことが大切

遺産分割は、相続人全員の合意によって成立しますが、相続開始後に初めて話し合うと、意見の食い違いから協議が長引く可能性があります

生前から家族で意思疎通を図っておけば、スムーズに合意形成ができ、感情的な対立を避けられるでしょう。

不動産の遺産分割にお悩みの方は専門家に相談

不動産の相続は、現金のように単純に分けられないため、相続人同士で意見が対立しやすく、協議が長引いたり感情的なトラブルに発展するリスクがあります。

さらに、評価額や税金の取り扱いを誤ると、余計な税負担や法的な不利益を招きかねないため、不動産相続に精通した専門家へ早めに相談するのが重要です

小谷野税理士法人では、不動産の評価や相続税申告、分割方法に関する助言など幅広くサポートを行っています。公正で円滑な遺産分割を実現するためにも、ぜひ小谷野税理士法人へお気軽にご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。