再転相続とは?手続きの流れ・注意点をわかりやすく解説
相続の手続きで「再転相続」という言葉を耳にしたものの、具体的にどのような仕組みなのか分からない方も多いのではないでしょうか。相続人が亡くなった場合にどのように権利や義務が引き継がれるのか、判断を誤ると大きなリスクを抱える可能性があります。本記事では、再転相続の基本から手続きの流れ、注意点まで分かりやすく解説します。制度の理解を深めたい方はぜひ最後までご覧ください。
再転相続は複雑な判断や手続きが伴うため、少しの遅れや誤りが大きなトラブルに発展する場合があります。
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再転相続とは?
相続の場面では、想定していなかった出来事が重なり、手続きがより複雑になる場合があります。その1つが「再転相続」です。
では、どのような場合に再転相続が発生し、法律上どのように扱われるのでしょうか。再転相続の基本的な仕組みについて解説します。
再転相続の定義
「再転相続」とは、相続人が相続の承認や放棄を決める前に死亡してしまい、その権利や義務が次の相続人に承継される事象を指します。
例えば、親が亡くなって子どもが相続人となったものの、その子どもが承認や放棄を判断する前に死亡した場合、親の相続に関する権利や義務はさらに次の世代である孫へと引き継がれるケースです。
熟慮期間とその起算日
相続人は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に承認や放棄を選択しなければならないと定められており、この期間を「熟慮期間」と呼びます。再転相続の場合、この熟慮期間は「前の相続が始まった事実を自分が知ったとき」から数え始めることになります。
ただし、「いつ相続の開始を知ったのか」が争点となる場合もあり、判例でも起算日の判断が問題とされている点に注意してください。
参考:平成30年(受)第1626号 執行文付与に対する異議事件 | 裁判所
再転相続と似ている用語との違い

再転相続は、相続が複数回にわたって発生する場面で登場するため、以下の用語と混同されやすいです。それぞれの違いを整理して解説します。
- 数次相続
- 代襲相続
- 同時死亡
- 相次相続
「数次相続」との違い
「数次相続(すうじそうぞく)」との違いは、相続が重なる原因です。
数次相続とは、一次相続が終わらないうちに次の相続が発生する場合を指し、例えば親の相続手続き中に子が亡くなるケースです。再転相続は、相続人が承認や放棄を決める前に死亡した場合に起こります。
どちらも相続が重なる点では似ていますが、「手続き途中の死亡」か「判断前の死亡」かが両者を分けるポイントです。
関連記事:【税理士監修】数次相続とは?手続きの進め方と相続税申告をする際のポイント
「代襲相続」との違い
「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」との違いは、発生のタイミングです。
代襲相続は、相続開始時点で本来の相続人がすでに死亡している場合に、その子や孫が代わりに相続する事象を指します。再転相続は一度相続人となった人が承認や放棄をしないまま死亡したときに生じます。
つまり「最初から相続人が不在かどうか」がポイントであり、両者は相続人の存否によって明確に区別されます。
関連記事:代襲相続とは?代襲相続人の範囲と相続割合をパターン別に解説
「同時死亡」との違い
「同時死亡(どうじしぼう)」との違いは、相続が発生するかどうかです。
同時死亡は、親子や夫婦が同時に亡くなり、死亡の前後が判別できない場合を指し、このとき相続関係は発生しません。再転相続は、死亡の順序が明確であることを前提に、相続権が次の世代に引き継がれる制度です。
したがって、一方は相続自体が生じず、もう一方は連続して相続が生じるという根本的な違いがあります。
「相次相続」との違い
「相次相続(そうじそうぞく)」との違いは、相続が続く原因です。相次相続は、短期間に相続が連続して発生する事象で、例えば親が亡くなった直後に子も亡くなるケースです。この場合、税務上の「相次相続控除」が利用できる可能性があります。
これに対して再転相続は、相続人が承認や放棄を決める前に死亡したことが原因で生じます。つまり、「短期間に死亡が続いたため起こるのか」、「判断前に死亡したため起こるのか」という点で両者は異なります。
関連記事:【税理士監修】遺産への相続税はいくらまで無税になるのか。控除や減税のポイントを解説
再転相続における相続人の選択肢
再転相続人にも、通常の相続と同じく「単純承認」・「限定承認」・「相続放棄」の3つの選択肢があります。それぞれの仕組みと注意点を理解しておきましょう。
単純承認を選ぶ場合
単純承認を選ぶと、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎます。一度承認すると取り消せず、多額の負債が含まれていても責任を負います。
また再転相続では、前の相続人がすでに単純承認していれば、その効果がそのまま引き継がれるため、自分の意思に関係なく債務を負うケースがある点に注意しましょう。
限定承認を選ぶ場合
限定承認を選ぶと、相続によって得た財産の範囲内でのみ負債を返済するため、受け取った財産以上の借金を背負うことはありません。
ただし、この手続きは相続人全員が共同で家庭裁判所に申述しなければならず、再転相続人が単独で行えないため、実務上は利用例が少なく、他の相続人との合意形成が大きなハードルになっています。
相続放棄を選ぶ場合
相続放棄を選ぶと、初めから相続人でなかったものとみなされます。財産も負債も一切引き継がないため、被相続人に多額の借金がある場合に有効な選択肢と言えるでしょう。
ただし、一度放棄すると原則として取り消しができないため、「やはり相続したい」と考え直しても撤回できません。良し悪しをすべてゼロにする制度であると理解したうえで判断しましょう。
再転相続における手続き上の注意点

遺産分割協議書の作成に注意する
相続手続きでは、複数の相続人がいる場合に「誰がどの財産を受け取るのか」を明確にするため、遺産分割協議書の作成が欠かせません。再転相続の場合、一次相続人がそのまま二次相続の被相続人になる場合があるため、遺産分割協議書の記載方法に注意しましょう。
例えば、一次相続に関する協議書では、該当者の氏名欄に「相続人兼被相続人」と明記する必要があり、署名や押印の不備があると書類が受理されないケースもあります。
また、協議書の枚数にも注意してください。
一次と二次の相続人が同じ場合は1枚にまとめられますが、相続人が異なる場合は「一次用」、「二次用」と2枚に分けるのが一般的です。実務では混乱を避けるため、多くのケースで2枚作成されています。
参考:No.4202 相続税の申告のために必要な準備|国税庁
関連記事:【税理士監修】遺産分割協議書の作成方法と必要性について解説
特別受益の取扱いに注意する
特別受益とは、ある相続人が生前に被相続人から特別な援助(住宅資金や結婚資金、生前贈与など)を受けていた場合に、その分をあらかじめ相続財産の一部として扱う仕組みです。
この仕組みによって、過去に援助を受けた相続人は「すでに取り分を先にもらった」と考えられるため、相続で受け取れる金額は少なくなります。再転相続では、祖父から孫へ贈与された資金が一次相続の特別受益となる場合もあり、祖父から父への贈与も事情によっては対象になります。
「過去の援助があったかどうか」で相続割合が変わる可能性があるため、十分に確認しましょう。
関連記事:【税理士監修】相続財産を巡る兄弟間の生前贈与トラブルの事例と解決方法
不動産登記の順番に注意する
再転相続が発生した場合、不動産の名義変更(相続登記)は必ず一段階ずつ行わなければなりません。例えば「親 → 子 → 孫」という流れなら、親から直接孫へ移すことはできず、一旦「親 → 子」の登記を済ませてから「子 → 孫」へと進める必要があります。
中間の相続人を飛ばす「中間省略登記」は原則認められていないため、手続きを省略できず、通常の相続よりも手順が増えるのが再転相続の特徴です。登記を誤ると修正や追加費用がかかる場合もあるため、専門家と相談しながら進めるのが安心でしょう。
関連記事:【税理士監修】相続登記の必要書類は?登記の必要性や法務局での申請手順も解説
相続放棄の期限と制約に注意する
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、単なる口頭の意思表示では効力がありません。また、相続の開始を知った日から3ヵ月以内に手続きをしなければ、放棄できずに自動的に単純承認したものとみなされます。
さらに、一次相続の相続人がすでに単純承認をしていた場合、その判断は取り消せないため、再転相続人も放棄できないケースがあるので注意しましょう。負債も含めて相続せざるを得ない事態になりかねないため、期限内に早めに判断するのが重要です。
戸籍の収集や遺産分割協議書、不動産登記まで、再転相続では通常以上に書類や手続きが複雑になります。
紹介した課題が「自分のケースに当てはまるかもしれない」と感じた方は、ぜひお気軽に小谷野税理士法人へご相談ください。
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関連記事:【税理士監修】相続で知っておくべき相続放棄の基本とデメリット。手続き方法もあわせて解説
関連記事:【税理士監修】相続放棄が認められない事例とは?確実な手続きのために押さえたいポイントを紹介
再転相続に関してよくある質問

再転相続は発生する場面が限られており、制度や手続きも複雑なため、理解しづらい部分が多いとされています。実務で特に問題となりやすい疑問点を取り上げますので、参考にしてください。
再転相続が発生した場合でも相続税の申告期限は延長されますか?
延長はされません。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内と定められており、再転相続が発生しても同じ扱いになります。
一次相続人が亡くなったからといって、自動的に期間が延長されないため、期限までに必要書類を整え、申告や納税を行いましょう。
再転相続が発生した場合、誰が相続人になるかはどうやって判断しますか?
相続人の範囲は民法で定められ、配偶者は常に相続人となり、残りは子→直系尊属→兄弟姉妹の順で決まります。再転相続でもこのルールは変わらず、一次相続人が承認や放棄をする前に死亡した場合、その次の順位の人が相続人となります。
例えば、親の相続人である子が判断前に亡くなったときは、孫が再転相続人となります。
関連記事:【税理士監修】相続人は誰がなるのか。相続人となる人の範囲や順位について解説
再転相続で遺産分割協議をやり直す必要はありますか?
必要となる場合があります。
例えば、二次相続で新たな相続人が加わるケースでは、既存の協議内容がそのまま使えない場合もあるため、遺産分割協議を再度行う必要があります。また、一次用と二次用に分けて協議書を作成し直すケースもあり、その場合、相続人の範囲や署名・押印の有無の再確認が求められます。
協議をやり直さずに進めてしまうと、後に効力を争われるリスクがあるため、慎重に対応しましょう。
これら以外にも、再転相続にはケースごとに異なる悩みが数多くあります。
「自分の場合はどうなるのか?」と疑問を持たれた方は、ぜひ小谷野税理士法人をご活用ください。
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再転相続でお悩みの方は専門家に相談
再転相続は、承認・放棄の判断や熟慮期間の起算点を誤ると、思いがけず借金まで引き継いでしまう危険があります。さらに、遺産分割協議書の作成や不動産登記、相続税申告なども複雑に絡み合うため、少しの手続きミスが大きなトラブルに繋がりかねません。
こうしたリスクを避けるためには、早い段階で専門家のサポートを受けるのが有効でしょう。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
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