低額譲渡は贈与税の対象に?課税ルールとリスクをわかりやすく解説

低額譲渡は贈与税の対象に?課税ルールとリスクをわかりやすく解説

不動産などを時価より安く親族や法人へ譲渡する「低額譲渡」は、形式上の売買であっても贈与税や譲渡所得税及び法人税の課税対象となる場合があります。正しい知識を持たずに進めると想定外の課税につながる可能性があるため注意しましょう。本記事では、低額譲渡が税務上どのように扱われるのか、リスクや特例制度、注意点をわかりやすく解説します。低額譲渡の税務処理に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

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低額譲渡とは?

低額譲渡とは一体どういう意味を持つ取引なのでしょうか。低額譲渡の仕組みや税務上の取り扱いについて解説します。

税法上の位置づけ

低額譲渡とは、財産を本来の価値(時価)よりも大幅に安い価格で譲る取引を指します形式は売買であっても、税法上は「みなし譲渡」や「みなし贈与」として扱われ、売る側・買う側の双方に課税が及ぶ可能性があります。

つまり、安く売ったり買ったりした分の差額が、税金の対象になり得るのが低額譲渡です。

参考:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁

参考:No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁

どこからが「低額譲渡」と判断されるのか

「どこまで安ければ低額譲渡になるのか」という点は、法律で基準が定められています。

所得税法施行令第169条では、譲渡価格が時価の2分の1未満の場合は「著しく低い価額」とされ、税務上は実際の売値ではなく時価で売却したものとみなされます。

参考:所得税法施行令 | e-Gov 法令検索

関連記事:低額譲渡とみなされる目安は?譲渡の価格を高めるためのコツも紹介

低額譲渡を受けた場合に贈与税はかかる?

財産を安く譲り受けたとき、その差額に税金がかかるのか気になる方も多いでしょう。国税庁の考え方や課税の仕組みについて解説します。

国税庁の考え方

国税庁は「通常の取引価格より著しく安く財産を受け取った場合、その安くなった分は贈与とみなして課税される」と示しています。つまり、形式上は売買契約であっても、実際に支払った金額と時価との差額が贈与財産とされ、贈与税の対象になる仕組みです。

これは通常の贈与と同じルールが適用されるため、取引の形態にかかわらず課税が生じる点に注意しましょう。

参考:No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁

贈与税が課される差額の考え方

贈与税の対象となるのは、時価と実際に支払った金額との差額です。例えば、時価1億円の土地を5,000万円で購入した場合、残りの5,000万円分は無償で受け取ったとみなされ、贈与税の課税対象になります。

このように、形式的には売買であっても、差額部分が「贈与」と判断されると課税されるため、実際の負担が大きくなる可能性があります。

課税対象外となるケース

ただし、すべての低額譲渡が課税対象となるわけではありません。財産を受け取る人が多額の借金を抱えていて返済できないなど、やむを得ない事情がある場合には課税されない場合があります。

形式的に安く譲り受けただけで自動的に課税されるわけではなく、事情をふまえて判断される点を覚えておいてください。

参考:No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁

低額譲渡は所得税や法人税ではどう扱われる?

税金

低額譲渡は、贈与税だけでなく所得税や法人税の面でも特別な扱いを受ける場合があります。それぞれの税目でどのように課税されるのかを解説します。

所得税における扱い

譲渡価額が時価の2分の1未満である場合、実際の売却額ではなく時価で売却したものとみなして課税すると定められており、これを「みなし譲渡所得」と呼びます例えば、時価1億円の土地を4,000万円で売った場合、1億円で譲渡したとみなされて譲渡所得税が計算されます。

そのため、売却損が認められなかったり、本来より重い課税になる可能性があります。

法人税における取り扱い

法人が関与する低額譲渡では、法人税法に基づく課税が生じます。個人が法人に時価より安く財産を売却した場合、その差額は法人にとって「受贈益」とされ、益金として法人税の課税対象になります。

また、法人間の取引で不当に低い価格を設定すると、利益操作の疑いから益金認定される可能性があるため注意しましょう。

参考:法人税法 | e-Gov 法令検索

具体的にどんなケースで贈与税が発生する?

家の相続税、贈与税

低額譲渡とされる取引は、形式上は売買であっても実質的には贈与と判断され、課税される場合があります。典型的なケースを見ていきましょう。

不動産を時価より低く売却した場合

典型的なのは、不動産を時価より大幅に安い価格で親族へ譲渡するケースです。例えば、市場価格1億円の土地を5,000万円で売却すれば、差額の5,000万円が贈与と認定される可能性があります。

形式上は売買契約であっても、実質的には贈与と判断され、贈与税の対象となる可能性があるので注意しましょう。

親族間で不動産を売買した場合

親族間で不動産を売買する場合は、通常の取引とは異なる税務上の扱いになります。著しく低い価額で売買した場合、贈与税が課税され、また、その不動産を取得した親族が将来売却する際には、売主が買い入れた時の購入代金や購入手数料などを基に取得費が計算されます。

形式上は売買契約を結んでいても、贈与と判断される可能性があるため注意しましょう

法人が関わる場合

法人との低額譲渡では、個人側にも課税が及ぶ点に注意しましょう。法人が個人に対して低い価格で財産を譲渡すれば、差額分は個人に経済的利益が発生したとみなされ、所得税が課される場合があります。

さらに、法人同士の取引で時価を大きく下回る価格を用いると、利益移転を疑われ税務調査の対象となりやすいため、実態に即した価格設定が求められます。

低額譲渡を行う際に注意すべきリスク

注意点、気を付けるポイント

低額譲渡は一見すると有利な取引に思えても、税務上は厳しく扱われる場合があります。特に注意すべき代表的なリスクについて解説します。

税務調査・追徴課税のリスク

低額譲渡は、税務調査や追徴課税のリスクがあります

税務署は「相場より不当に安い」と判断すると調査を行い、時価との差額を贈与と認定する可能性があります。その場合、贈与税に加えて追徴課税を負担することとなり、当初の想定より大きな税負担を背負うでしょう。

結果として資金繰りを圧迫する恐れもあるため、安易に低額譲渡を行うのは危険であると理解しておいてください。

関連記事:相続税の税務調査割合とは?最新データと調査対象になりやすいケースを解説

双方に課税のリスク

低額譲渡は、譲渡者と受贈者双方に課税されるリスクもあります。親族に財産を安く譲渡した場合、譲渡者には「みなし譲渡所得」として所得税が課され、受贈者には差額分に贈与税が課される可能性があります

つまり、同じ取引で双方に課税が生じるため、結果的に大きな税負担を抱える事態になりかねません。表面的には有利に見えても、安易に進めれば双方に不利益をもたらす点を理解しておきましょう。

上記で紹介したリスクは、実際に税務調査や課税トラブルに繋がる可能性があります。

小谷野税理士法人では、豊富な経験をもとに最適な解決策をご提案しています。

ぜひ一度ご相談ください。

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低額譲渡の課税リスクを避けるための対策

低額譲渡は思わぬ課税を招く恐れがあるため、事前の準備と制度理解が欠かせません。税務リスクを回避するために押さえておきたい対策について解説します。

価格の根拠を示す証拠資料の準備

低額譲渡の価格設定を正当化するには、客観的な証拠を残しましょう。不動産鑑定士による鑑定評価書や、近隣の取引事例・固定資産税評価額などを資料として用意すれば、価格の妥当性を示す根拠になります。

こうした記録があれば、税務署から相場との差を疑われても、合理的かつ説得力ある説明が可能となり、課税リスクを軽減できるでしょう。

適用できる特例制度の確認

低額譲渡がすべて課税対象となるわけではなく、一定の特例制度を活用できる場合があります

例えば、婚姻期間20年以上の夫婦間で利用できる「配偶者への居住用財産の贈与特例」や、自宅を売却した際に活用できる「居住用財産の3,000万円特別控除」などがあり、これらを適切に使えば、通常なら課税される部分を大幅に抑えられます。

ただし、いずれも適用要件を誤解したまま申告すると否認され、課税される恐れがあるため、条件を正しく理解したうえで利用しましょう。

特例制度は条件を誤解すると適用できず、思わぬ課税に繋がります。

小谷野税理士法人では、要件の確認から申告手続きまでサポート可能です。

正しい活用に向けて、まずはお気軽にご相談ください。

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参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

関連記事:【税理士監修】贈与税の配偶者控除とは?要件や必要書類、注意点等を紹介

低額譲渡と贈与税で不安がある方は専門家に相談

低額譲渡は時価との差額が贈与と認定される可能性があり、追徴課税や双方に課税などのリスクを伴います。条件を誤解して特例制度を使えない場合も少なくありません。

こうした税務判断は専門的な知識が求められるため、自己判断せずに、専門家に相談して適切な対応を取るのが安心でしょう

小谷野税理士法人では、不動産取引や相続・贈与に精通した税理士が在籍し、最新の法令に基づいて最適な対応を提案します。低額譲渡や贈与税の扱いに不安がある方は、ぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
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