配偶者は代襲相続人になれない!よくあるトラブルと解消法を解説

配偶者は代襲相続人になれない!よくあるトラブルと解消法を解説

代襲相続は、本来の相続人が亡くなっている場合にその直系卑属である子や孫などが代わりに相続する仕組みです。しかし配偶者やその兄弟姉妹、連れ子などは代襲相続の対象になりません。そのため介護や同居といった実際の貢献があったとしても、法律上は相続権が認められないケースもあります。本記事では、配偶者が代襲相続人になれない理由とよくあるトラブル事例、さらにそれを防ぐための対策法を分かりやすく解説します。

配偶者は代襲相続できない

代襲相続の家系図

代襲相続は、被相続人の直系卑属(子や孫など)が、本来の相続人である親や兄弟姉妹に代わって相続する制度です。しかし、被代襲者の配偶者は直系卑属ではないため、代襲相続人にはなれません。

例えば被相続人の子どもが先に亡くなった場合、その子どもの配偶者は代襲相続できません。たとえ同居して介護などを行っていたとしても、法律上は相続権は認められないのです。

つまり、配偶者は代襲相続の対象外であり、実際の貢献や生活状況にかかわらず、権利を取得できません。代襲相続が発生するのは、あくまで子や孫、甥・姪などの直系卑属に限られます。

相続のルールは複雑で個々の事情によって判断が変わることも多いため、不安がある場合は早めに税理士へ相談するのをおすすめします。代襲相続に関する実績や経験豊富な税理士をお探しの方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」の無料相談をご利用ください。

関連記事:代襲相続とは?代襲相続人の範囲と相続割合をパターン別に解説

配偶者の兄弟姉妹も代襲相続できない

亡くなった人(夫・妻)の兄弟姉妹が亡くなっていても、その配偶者は代襲相続できません。特に、亡くなった配偶者の兄弟姉妹が独身であれば、相続人がいないケースになりやすいです。

また、葬儀費用の支払いについても注意が必要です。亡くなった人の預貯金からすぐに引き出すのは難しく、死後の手続きで困ることもあります。そのため、あらかじめ遺言書(財産対策)、任意後見契約(認知症対策)、死後事務委任契約(死後事務対策)などを検討しておくと安心です。

配偶者の連れ子も代襲相続できない

配偶者の連れ子は、被相続人と血縁関係がないため代襲相続できません。たとえ配偶者が亡くなっていて同居していたとしても、相続権は発生せず、不動産に住めなくなる可能性もあります。

相続させたい場合は、養子縁組を結んでおく必要があります。これにより実子と同じ第1順位の相続人として直接相続できます。養子縁組の有無は戸籍謄本で必ず確認しましょう。

関連記事:【税理士監修】養子縁組制度の解説。普通養子・特別養子の違いや条件、相続税への影響は?

遺産分割前に知っておきたい!代襲相続のポイント

遺産分割に備えて特に押さえておきたい3つのポイントを解説します。

代襲相続人が現れても既存の相続人の相続分はそのまま

代襲相続人が加わっても、既存の相続人の取り分が減ることはありません。代襲相続人は「本来の相続人の相続分」をそのまま引き継ぎ、人数に応じて均等に分け合う仕組みです。

例えば、相続分が1/2の子がすでに亡くなっており、その代襲相続人が2人いる場合、それぞれが1/4ずつ相続します。このように相続人の人数が増えても、他の相続人の取り分は変わりません。

代襲相続人の続柄によって遺留分が認められる場合と認められない場合がある

遺留分とは、配偶者・子ども・直系尊属(親など)に保障される「最低限受け取れる遺産の取り分」のことです。遺言で全財産を他人に遺すと書かれていても、遺留分がある相続人は取り戻すことができます。

代襲相続の場合、遺留分は本来の相続人の権利を引き継ぎます。ただし注意が必要なのは、遺留分は「兄弟姉妹以外の相続人」にしか認められていないという点です。

  • 孫や曾孫など直系卑属が代襲相続人 → 遺留分あり(相続分の1/2)
  • 甥や姪が代襲相続人 → 遺留分なし

このように、代襲相続人の続柄によって権利に差があるため、事前に理解しておくことが重要です。

遺言の内容には代襲相続が適用されない

代襲相続は「法定相続」に適用される制度であり、遺言による「遺贈」には適用されません。民法第994条では、遺贈の受遺者が遺言者の死亡以前に亡くなっていた場合、その遺贈は効力を失うと定めています。つまり、代襲相続が発生することはなく、遺言の効力はそこで途絶えます。

そのため、被相続人が遺言書を残していた場合は、その内容に従って相続が行われ、代襲相続は適用されない点に注意が必要です。

関連記事:代襲相続の相続税で気をつけたい基礎控除や2割加算とは?

代襲相続でよくあるトラブル

代襲相続でよくあるトラブルを以下の表にまとめました。

トラブルの内容

詳細・注意点

代襲相続人に無断で遺産分割協議が進められる

  • 遺産分割協議は相続人全員の参加が必須
  • 代襲相続人を外して進めた協議は無効となり、再協議が必要

代襲相続人に署名や押印を強要される

  • 知識の乏しさにつけ込まれ、都合の良い内容で署名を迫られるケースがある
  • 本人の意思で判断することが重要

相続財産の情報が開示されない

  • 預貯金や不動産の情報を知らされず、取り分が不当に少なくなる可能性がある
  • 財産目録の確認が必須

相続放棄を一方的に迫られる

  • 他の相続人が代襲相続人に財産を渡したくないと考え、放棄を強制するケースがある
  • 相続放棄は本人の自由意思で決めるもの

遺産の承継方法や割合で揉める

  • 遺産の種類や分割割合をめぐって意見が対立
  • 被相続人への貢献や生前贈与の有無で争いになりやすい

代襲相続人となかなか連絡が取れない

  • 遠方在住や疎遠な場合、連絡が滞り遺産分割が進まない
  • 名義変更の遅れにもつながるので要注意

遺産分割協議に協力的でない

関心が薄い代襲相続人がいると、協議が進まずトラブルの火種になる

被相続人の借金を意図せず相続してしまう

  • マイナス財産も相続対象
  • 代襲相続人が借金の存在を知らず、期限内に相続放棄しないと借金を負うことになる

代襲相続では、相続人の範囲が広がる分、意思疎通の不足や知識の差からトラブルが発生しやすいのが実情です。代襲相続人を外して遺産分割協議を進めたり、署名や相続放棄を強要されたりといったケースは大きな問題に発展しかねません。

こうしたトラブルを防ぐためには、財産目録の作成や情報の共有を徹底し、必要に応じて専門家に相談しましょう。公平で円滑な相続を実現するためにも、早めに体制を整えておくことが安心につながります。

トラブルを避けて円滑に代襲相続の手続きを行いたい方は、実績豊富な税理士に相談するのが安心です。代襲相続に関する実績・経験が豊富な税理士をお探しの方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」の無料相談をご利用ください。

代襲相続のトラブルを回避する方法

養子縁組をする二世帯・夫婦

ここからは、代襲相続のトラブルを回避するために知っておきたい3つの方法を解説します。

財産目録を作成しておく

遺産分割協議を始める前に、相続財産を正しく把握することが重要です。そのために役立つのが「財産目録」です。財産目録を用意しておけば、以下のメリットがあります。

  • 財産調査の負担を減らせる
  • 分割割合の不公平を防げる
  • 相続人間のトラブルを軽減できる

財産目録にはプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナス財産も含めて一覧化します。例えば、預貯金であれば銀行名や口座番号、不動産であれば所在地や評価額、自動車や有価証券も対象です。作成は義務ではありませんが、専門家に依頼すれば正確性と網羅性を確保しやすいです。

遺言書を作成するよう促す

遺言書があれば、代襲相続人を含めた相続人間のトラブルを大幅に回避できます。遺言書の内容に従って相続が行われるため、相続人同士の主張の余地が少なくなるからです。

ただし、遺言書を作成する際には「遺留分」に注意が必要です。遺留分とは、遺言の内容にかかわらず一定の相続人が最低限受け取れる財産の割合のことです。遺留分を無視した遺言は争いの火種になりかねないため、事前に考慮して作成する必要があります。

生前から円滑なコミュニケーションをとる

相続の話題は避けがちですが、生前に家族や代襲相続人と十分に話し合っておくことも大切です。あらかじめ被相続人の考えや財産の状況を共有しておけば、以下の効果が期待できます。

  • 感情的な争いを防げる
  • 自分勝手な要求を抑制できる
  • 相続トラブルが発生した際のリスクを減らせる

被相続人が存命のうちに意思を明確にしておけば、遺産分割協議をスムーズに進められるでしょう。

代襲相続でトラブルが起きてしまった場合の解決策

以下では、万が一代襲相続でトラブルが起きてしまった場合にやるべき解決策をご紹介します。

相手の立場を尊重しながら協議する

相続分は法律で定められていますが、介護や看護を担った相続人が「取り分を増やしてほしい」と考えるのは自然なことです。代襲相続人である孫や甥・姪が積極的に関わっていたケースもあります。自分の権利だけを主張するのではなく、相手の事情にも耳を傾けることで協議がまとまりやすくなります。

相続人と遺産内容を正確に把握する

話し合いを円滑に進めるためには、まず相続人の範囲や相続割合を正しく理解することが大前提です。誤った認識のままでは無用な争いを招くことにもなります。相続人が多い場合や複雑なケースでは、専門家に依頼して正確な状況を確認しましょう。

安易に遺産分割協議に同意しない

相手からの提案に十分な説明や検討がないまま同意すると、後から覆すことは極めて困難です。円満な解決が見込める内容であれば問題ありませんが、不明点がある場合は慎重に対応し、署名や押印はすべて納得した上で行うようにしましょう。

感情に流されず、長期的な視点で妥協点を探す

相続協議は長引くと1年以上かかることも珍しくなく、その間ストレスや家族関係の悪化を招きます。解決が先延ばしになれば次世代に火種を残す可能性もあります。どの選択肢が家族全体にとって最も良いのかを考え、妥協点を探る姿勢が大切です。

相続放棄を検討する

相続に関わりたくない場合は、家庭裁判所に申述して相続放棄をする方法もあります。これにより、初めから相続人でなかったことになり、代襲相続も発生しません。ただし、一部の財産や借金だけを選んで放棄することはできず、期間制限もあるため注意が必要です。相続放棄を考える際は、必ず専門家に相談して判断しましょう。

まとめ

配偶者や連れ子は代襲相続の対象にならず、直系卑属である子や孫、甥や姪に限定される点は相続で特に誤解されやすい部分です。仕組みを理解していないと同居や介護を担っていた配偶者や家族が相続権を得られず、住まいを失うなど深刻な問題に発展しかねません。

さらに、代襲相続は相続人の範囲が広がる分、財産目録の不備や意思疎通不足からトラブルが起きやすいのも実情です。こうしたリスクを防ぐには、遺言書や養子縁組といった法的手段の活用、また生前の家族間コミュニケーションが欠かせません。

複雑な代襲相続を円滑に進めるためには、専門家のサポートを受けながら事前に備えることが安心につながります。代襲相続に関する実績や経験豊富な税理士をお探しの方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」の無料相談をご利用ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。