相続税と贈与税のどっちが得?違いや計算例を解説!

「相続税と贈与税のどっちが得?」と感じる方は多いかもしれませんが、財産や特例の適用などによって異なるため、一概には言うことはできません。具体的な計算方法や適用できる特例・控除などを知っておくと、より節税につながる方法を選択しやすくなります。今回は、相続税と贈与税のうち、適用すると得するケース、計算方法や特例の種類、注意点などを解説します。
関連記事:2025年度税制改正による相続税・贈与税の変更点は?近年の大きな変更も解説
目次
相続税と贈与税のどっちが得かはケースバイケースである
税率のみで比較すると相続税の方が低いものの、実際に相続税と生前贈与どちらが得するのかは、財産や特例・控除の適用の有無などによって異なります。以下では、一般的な傾向として、どちらが得しやすいかのケースを分けて紹介します。
相続が得するケース
相続税が得しやすいケースは以下の表の通りです。
高齢で暦年贈与をするのが難しい場合 |
基礎控除内の贈与による節税効果を得にくい |
配偶者や子ども・孫がいない場合 |
節税につながる特例や控除を適用できない |
相続財産が基礎控除内である場合 |
(3,000万円+600万円✕法定相続人の数)内の相続には相続税が発生しない |
小規模宅地等の特例を適用する場合 |
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相続財産として不動産が多い場合 |
|
配偶者が相続する場合 |
配偶者控除の特例によって、1億6,000万円までor法定相続分相当額まで課税されない |
生前贈与が得するケース
贈与の目的の1つは、相続税の課税回避の防止であるため、税額が高く設定されています。
一方で、贈与の方が得しやすいケースもあり、具体的には以下の表の通りです。
相続財産が高額である場合 |
|
まとまった金額を早めに贈与する場合 |
|
相続税用の資金を用意する場合 |
|
生前贈与の場合、贈与する方を自由に選択できるため、相続人同士のトラブルを回避しやすくなるのもメリットの1つです。
納税額の計算例
後述する税率表や計算式を使うと、相続税や贈与税の納税額を算出できます。数字に弱い方は難しく感じられるかもしれませんが、計算方法はシンプルです。以下で、実例を参考にしながら解説するため、参考にするとよいでしょう。
関連記事:【税理士監修】早見表付き:相続税の計算方法や大まかな税額を把握しておこう
相続税
遺産総額から基礎控除を差し引き、相続税がかかるのか判断します。以下の通り、控除できるものの適用などにより金額がかわります。
相続税がかかる財産 |
被相続人が遺した資産・債務整理した正味の資産
|
相続税がかからない財産 |
|
控除できるもの |
|
- 課税遺産相続の簡易計算:相続税がかかる財産−控除できるもの−基礎控除(3,000万円+〈600万円✕法定相続人の数〉)
- 相続税の総額の計算:課税遺産相続を法定相続分で按分したあと、速算表をもとに計算し合算する
- 実際の相続分で按分し、各種控除適用する
遺産の全額に税率が係るのではなく、基礎控除や法定相続分での仮計算を経て求められます。想像よりも税負担が軽減されたり、逆に予期せぬ税金がかかるケースもあったりする点について、押さえておくとよいでしょう。例として、以下のケースを紹介します。
- 被相続人:Aさん
- 配偶者:Bさん
- 子ども:長男Cさん、次男Dさん
- 相続財産:8,000万円
- 遺産分割協議の結果、配偶者は遺産の5分の3、子どもたちは5分の1ずつ相続した
- 基礎控除:3,000万円+(600万円✕3)=4,800万円
- 課税遺産総額:8,000万円−4,800万円=3,200万円
- 課税遺産総額の法定相続分の按分は下記の通り
- Bさん(2分の1)3,200万円✕2分の1=1,600万円
- Cさん・Dさん(それぞれ4分の1)3,200万円✕4分の1=800万円ずつ
【相続税総額】
- Bさん・1,600万円✕15%−50万円=190万円
- Cさん:(800万円✕10%)=80万円
- Dさん:(800万円✕10%)=80万円
- 合計:190万円+80万円+80万円=350万円
【最終的な税額】
- Bさん:5分の3、210万円→配偶者控除により0円
- Cさん・Dさん:5分の1、70万円ずつ
遺言書や相続人同士の協議などにより、法定相続額の割合が変わるケースもあります。
今回の事例では、相続割合が変更になったと過程し、金額を算出しています。一家で合計350万円の納税が必要ですが、配偶者控除によって税金が変わります。
贈与税
暦年贈与で現金にて贈与を受けたケースで紹介します。例えば、40歳の子どもが父親から800万円の贈与を受けた場合、税額は以下の通りです。
- 基礎控除後の課税価格の算出:800万円−110万円=690万円
- 特例贈与に該当する場合の税額の算出:690万円✕30%−90万円=117万円
なお、暦年贈与には特例税率と一般税率があります。
混在するケースでは、贈与税の計算が複雑になるのでご注意ください。
相続税・贈与税の税率表(速算表)
国税庁の公式サイトには、税率表(速算表)が記載されています。税率表をもとに自分で納税額を算出できるため、有効に活用するとよいでしょう。
関連記事:【相続税の税率がすぐわかる】相続税の速算表と計算例のまとめ
相続税
税率表は以下の通りです。
取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
なし |
1,000万超〜3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
3,000万超〜5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
5,000万超〜1億円以下 |
30% |
700万円 |
1億円超〜2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
2億円超〜3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
3億円超〜6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
贈与税
贈与税の場合は、相続者と贈与者の関係により税率が決まります。以下で詳しく紹介します。
【一般税率:兄弟間、夫婦間など】
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円超 |
55% |
400万円 |
【特例税率:18歳以上の子・孫が父母・祖父母から贈与】
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
400万円以下 |
15% |
10万円 |
600万円以下 |
20% |
30万円 |
1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
相続税を節税できる特例・控除
少しでも多く節税するには、特例や控除を適用すると効果的です。以下の表で詳細に解説します。
【特例】
小規模宅地等の特例 |
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納税猶予の特例(農地等の納税猶予制度) |
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【主な控除】
基礎控除 |
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配偶者の税額軽減 |
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未成年者の税額控除 |
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障害者の税額控除 |
|
相次相続控除 |
|
贈与税額控除 |
相続税から贈与税を差し引ける |
贈与税を節税できる特例・控除
贈与税の節税につながる特例・控除もあり、具体的には以下の表にまとめました。
【控除】
年間110万円の非課税枠 |
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配偶者控除 |
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特定障害者等に対する贈与税の非課税制度 |
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【特例】
教育資金の一括贈与の特例 |
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結婚・子育て資金の一括贈与の特例 |
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住宅資金贈与の特例 |
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生前贈与の注意点
生前贈与をするときにトラブルを回避するためにも、注意点を押さえておく必要があります。以下で詳しく見ていきましょう。
相続財産に加算される可能性がある |
贈与を受けた後、贈与者が3〜7年以内に亡くなった場合、加算される※甥や姪などの被相続人は対象外になる可能性がある |
無効になるケースがある |
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定期贈与と見なされる可能性がある |
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相続・贈与で困ったときの相談は税理士へ
相続税と贈与税の計算例や税率表、節税につながる特例・控除、生前贈与の注意点などを解説しました。どちらが得するのかは一概には言えないため、正確にシミュレーションするのがポイントです。
特例・控除の適用などによって納税額が変わりますが、一方で計算方法や制度について難しく感じる方もいるでしょう。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。