二次相続とは?揉めない・後悔しない相続のための知識と税金対策

二次相続とは?揉めない・後悔しない相続のための知識と税金対策

二次相続とは、配偶者に先立たれた方が亡くなった際の相続を指します。二次相続では配偶者控除などの優遇が受けられず、予想以上に税額が増えるケースもあります。本記事では、二次相続の基礎知識から一次相続との違い、実践的な対策までわかりやすく解説します。

二次相続とは?一次相続よりも税負担が大きい?

親御さんに万が一のことがあったときの相続対策は万全ですか?片方の親が亡くなり、一度相続を経験している方こそ二次相続への備えが重要です。

二次相続とは?配偶者の死後に発生する相続

二次相続とは、配偶者に先立たれた方が亡くなったときに発生する、家族にとって2回目の相続を指します。例えば、夫が先に亡くなった場合に妻と子どもが相続するのが一次相続、その後に妻が亡くなり、子どもたちに財産が引き継がれるのが二次相続です。

二次相続と一次相続の違い

一次相続と二次相続では、発生するタイミングだけでなく、相続人の構成や税制上の優遇措置にも大きな違いがあります。主な相違点を以下にまとめました。

一次相続

二次相続

発生するタイミング

夫婦のどちらか一方が最初に亡くなった時

配偶者に先立たれた方が亡くなった時

相続人

配偶者と子ども

子ども(故人の直系卑属)

相続人の構成

配偶者が含まれるため、人数が多い傾向

配偶者が含まれず、人数が少ない傾向

相続税の計算

配偶者控除が適用され、税負担が軽減されやすい

配偶者控除が適用されず、税負担が大きくなる可能性が高い

相続人の構成や人数が異なり、一次相続と同じ感覚で準備していると、二次相続で思わぬ税負担が発生することもあります。

関連記事:【税理士監修】遺産相続の順位とは?法定相続人の意味や相続割合、具体的な例などを解説

二次相続には相続税がかかる?

一次相続の相続税はかからなかった、または少額で済んだにもかかわらず、二次相続で想定外の税負担に驚くケースがあります。二次相続では配偶者が相続人に含まれず、相続の人数も少なくなる場合が多いのが主な原因です。

相続税には、配偶者の税額軽減(配偶者控除)があります。配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円と法定相続分のどちらか多い金額までは、相続税がかからない仕組みです。しかし、二次相続では配偶者控除の適用はありません。

さらに、相続人の数も相続税の計算に直接影響します。一次相続よりも少ない人数で財産を分けるため、一人あたりの取り分が多くなることもありますが、それだけではありません。

相続税の基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」や、生命保険金の非課税枠「法定相続人の数×500万円」などは、相続人の人数に比例して大きくなります。相続人の数が少なければ控除額も少なくなり、結果として課税対象の財産の金額が大きくなる傾向があるのです。

一次相続で配偶者が財産のほとんどを相続した場合は要注意です。子どもたちが二次相続で両親の財産を一度に取得します。一次相続と比べて相続人は少なく、財産は多くなるため相続税の負担は大きくなるでしょう。

関連記事:【税理士監修】相続税の配偶者控除とは?計算方法や申告方法をわかりやすく解説

関連記事:【税理士監修】生命保険の死亡保険金には相続税がかからない?非課税枠や注意点も解説

二次相続で損しないための効果的な節税対策

家族構成や財産内容に合った対策を講じることで、納税額を抑えられる可能性があります。ここでは、知っておきたい代表的な節税制度と実践的な対策を紹介します。

自宅の評価額を大幅減|小規模宅地等の特例

亡くなった方が住んでいた自宅の土地の評価額を最大80%減額できる制度が「小規模宅地等の特例」です。例えば、母親が生前住んでいた実家を、同居の息子が引き継いで住み続ける場合に適用される可能性があります。

評価額5,000万円の土地であれば、相続税の計算上はわずか1,000万円と評価され、大幅な節税につながります。ただし、亡くなった方が住んでいた敷地であることや、同居親族が相続税の申告期限までに所有していることなどの条件があります。

特例を有効活用するには、事前に税理士に相談し、ご自身のケースで適用可能か、どの程度の節税効果が見込めるか確認することが重要です。

関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例対象となる同居とは?条件や定義について解説

生命保険金の非課税枠を活用

生命保険の保険金は、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。預貯金が多い場合、現金として相続させるよりも、一部を生命保険の掛金に充てて保険金として受け取る形にすると節税が可能です。

また、生命保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象とならないため、特定の相続人に確実に財産を渡したい場合に有効な手段となります。さらに、申請から数日で現金を受け取れるのが一般的で、急な納税資金の準備としても役立ちます。

関連記事:【税理士監修】生命保険の死亡保険金には相続税がかからない?非課税枠や注意点も解説

生前贈与で早めの対策

将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽くするためには、少額ずつ生前贈与を行う方法があります。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。

しかし、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される(持ち戻される)ため注意が必要です。2024年1月1日以降の贈与から段階的に持ち戻し期間が延長され、2031年には7年に固定されます。早めに始めるほど持ち戻しを回避しやすくなります。

相続時精算課税制度で計画的な贈与を

相続時精算課税制度を選択すると、生前贈与を受けた際に贈与税を納める必要がありません。代わりに、贈与者が亡くなった際に贈与を受けた金額と相続財産を合算して相続税を計算します。

この制度には累計2,500万円までの特別控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。さらに、2024年1月1日以降の贈与からは、毎年110万円までの贈与であれば、贈与税も相続税もかからずに贈与できるようになりました。

この制度を利用すると、贈与を受けた財産は贈与時点の価額で評価されます。将来値上がりが予想される財産を、評価額の低いうちに贈与しておくといった計画的な対策が可能です。この制度は贈与者ごとに選択できますが、一度選択すると取りやめることはできないため、慎重な検討が必要です。

関連記事:【改正版】相続時精算課税制度とは?2,500万円まで贈与税がかからない特別控除を解説

二次相続で揉めないための生前対策

遺言書の内容

二次相続では相続トラブルがより発生しやすいと言われています。子どもたちが相続人となるケースが多く、兄弟姉妹間で感情や利害の対立が表面化しやすくなるためです。ここでは、トラブルを回避するために生前に行っておきたい対策を確認しましょう。

遺産分割の明確化に|遺言書の作成

二次相続でのトラブルを避けるために、まずおすすめしたいのが遺言書の作成です。遺言書があれば、基本的にその内容に従って遺産分割が行われます。誰にどの財産を遺したいかが明確に示されていれば、相続人同士で争いになるリスクを大幅に減らせるでしょう。

特に相続人となるお子さんが複数いる場合や、相続人以外にも財産を渡したい人がいる場合に、遺言書は有効な手段となります。

関連記事:【税理士監修】遺言書の持つ効力とは?無効になるケースと確実性を高めるポイント

情報共有と合意形成に|家族会議の開催

相続が発生する前に家族会議を設けることも重要です。網羅的な財産目録を作成し、家族全員でその内容を確認しておきましょう。相続開始後に「こんな財産があるとは知らなかった」「分け方に納得できない」といったトラブルが起こりにくくなります。

家族全員に公平に財産を開示し、遺産分割について話し合うことで、相続の際も疑心暗鬼にならずに済みます。また、財産を特定の方に残したい背景なども共有しておくとよいでしょう。

柔軟な財産管理・承継に|家族信託の活用

家族信託は、財産を信頼できる家族に託して財産を管理・運用してもらう制度です。自らの判断能力が低下した後も、配偶者の生活費、子の教育資金などのために財産を運用してもらえます。当事者同士の契約のため、内容は柔軟に設定でき、二次相続まで見据えた財産管理や特定の相続人への円滑な承継に役立ちます。

いずれの方法にしても、大切なのは後回しにせず、今できることから始めることです。

関連記事:【税理士監修】家族信託とは?メリットとデメリット、手続きの方法をわかりやすく解説

家族の状況に応じた二次相続対策

代襲相続の家系図

夫婦と実子の家庭では、一次相続は配偶者と子どもが、二次相続は子どもが相続人となるのが一般的です。一方、子どもがいない夫婦や、再婚した夫婦の場合、相続人の関係が複雑になりがちです。家庭の状況に応じて、適切な対策を講じましょう。

子どもがいる家庭

子どもがいる家庭では、一次相続で配偶者と子が相続人となりますが、財産の多くを配偶者が相続する傾向があります。しかし、一次相続で子どもにもある程度財産を取得させた方が得策の場合もあります。一次相続では配偶者の生活を考慮しつつ、将来の子どもの相続税を軽減させる計画的な財産配分が大切です。

家業を営んでいる場合は、事業用資産の承継と、事業を継がない子どもとの公平な財産分与をどう実現するかが課題です。

遺言書で誰にどの財産を相続させるかを明確にし、生命保険金や生前贈与を組み合わせて計画的に財産を移転するのが有効です。柔軟な財産管理や承継を可能にする家族信託も、選択肢の一つとして検討する価値があります。

子どもがいない夫婦のケース

子どもがいない夫婦の場合、遺産分割協議が複雑化し、トラブルに発展するリスクが高いのが特徴です。例えば夫が亡くなった場合、妻と夫の親族(両親や兄弟姉妹)が相続人となります。その後、妻が亡くなった際は、妻の両親や兄弟姉妹が相続人となります。両親も兄弟姉妹も亡くなっている場合は、甥や姪が代襲相続人です。

疎遠な親族同士が共同相続人になると、遺産分割協議に問題が生じがちです。相続人が誰も財産状況を把握していない、お互いに連絡がつかないなど、話し合い以前につまづく場合もあります。

トラブルを避けるためには、遺言書で誰にどの財産を相続させるかを明確にしましょう。確実に財産を渡したい相手がいる場合は、死因贈与契約や生前贈与も有効な手段です。

関連記事:【税理士監修】子供なしの相続で注意したいポイントとは?具体的な例を用いながら解説

再婚家庭のケース

再婚家庭では、血縁関係や養子縁組の有無によって相続権が異なるため、実子と連れ子の間で相続トラブルが生じやすいのが特徴です。

例えば、夫の連れ子A、妻の連れ子B、夫婦の実子Cがいる場合で考えてみましょう。夫が亡くなると、妻・夫の実子A・夫婦の実子Cが相続人となります。妻の連れ子Bは、夫と養子縁組をしていない限り相続権はありません。同様に、妻が亡くなると妻の実子Bと夫婦の実子Cが相続人となり、夫の連れ子Aは妻と養子縁組をしていない限り相続権がありません。

同じ家庭で育った兄弟でも相続権に差が生じるため、不公平感からトラブルに発展するケースがあります。争いを防ぐためには、夫婦それぞれが遺言書を作成するとともに、子どもたちと財産の分け方を話し合っておくことが大切です。

連れ子との養子縁組や、家族信託を活用した柔軟な財産承継の仕組みの構築も有効な対策です。

関連記事:前妻の子の相続割合は?遺留分についても解説

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まとめ

親が亡くなった後、残されたもう一方の親が亡くなった際に発生するのが二次相続です。一次相続で一区切りついて安心しがちですが、準備不足のまま二次相続を迎えると、相続人間でトラブルになりかねません。一次相続で相続税がかからなかった家庭でも、二次相続では相続税が発生する可能性があります。

二次相続の準備は「いつかやろう」ではなく、今から始めることが大切です。財産の状況を明確にし、家族でしっかりと情報を共有しましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。